その日の放課後、私は渡邉さんのクラスに向かった。

志:来たよー!

窓の前に立つ渡邉さんに手を振ると、
渡邉さんは振り返って、荷物を取りに自分の席に歩いていった。

理:愛佳?

荷物を肩にかけて、渡邉さんは私を手招きした。

志:どうしたの?

理:あのさ、私タバコやめた...!

渡邉さんはスッキリしたような表情をしている

志:えっ?ほんと!?

理:うん、、もう私にはタバコじゃない逃げ道があるから...

志:それって、

理:そう。愛佳...!

ちょっとだけ恥ずかしそうに私の名前を呼ぶものだから、何だか私も恥ずかしくなった。

そしてお互いに、その状況が面白くなって笑い出した

理:ふふ!愛佳なに恥ずかしがってんの!

志:アハハ、渡邉さんこそ恥ずかしがってるじゃん!

理:うるさい!それに渡邉さんじゃなくて、理佐って呼んでよ...!

渡邉さんはそう言いながら、また恥ずかしそうに頬を赤くしていた。

志:理佐...?

理:うん、理佐だよ...。

志:分かった、、

この流れのまま、告白出来るんじゃないかって考えたけど、
今はまだ、このままがいいんじゃないかって躊躇した。

その間に理佐は先に教室を出てしまっていて、私も慌てて教室を出た。


志:ちょっと、何で先に行くのよ...!

私が廊下でそう叫ぶと、
何か企んでいるような笑顔を浮かべた後、突然

タッタッタッ

約十五メートルほど先に居る理佐が、走り出した。

志:えっ!ちょっと、理佐ぁ!?

理:早く来ないと置いてくよー?

走ってるはずなのに安定した声が聞こえた

志:今から行くし!

曲がり角を曲がって見えなくなった理佐に私はそう叫んでから、理佐を追って廊下を走った。

タッタッタッ


結局追いつけなくて、校門で理佐が楽しそうに笑って待っていた。

志:はぁはぁ、疲れたー...

私は教室から門までダッシュしたから、すごく疲れた。
だけど理佐は私とは真逆で、いつもと同じ表情。
全く疲れてなさそうだった。

理:愛佳おっそい!

理佐は私の事を笑いながら見ていた。

志:いやいや...理佐が、先に走り出したから、私が遅くて、当たり前だよ...。

息を整えながらそう言うと

理:ほら、もう帰るよー!

そう言いながら私の事は無視して、今度はゆっくりと歩き出した。

よく分からないけど、
ゆっくり歩いてくれてるのは、きっと私への優しさだろう。

まあ私の事を疲れさせたのは、理佐なんだけどね...。

そんな事を考えながら理佐の元に駆け寄って、一緒に並んで歩いた。



これだけでも幸せだった。


だけどちゃんと気持ちを伝えたくて、この次の日から何度か言おうと考えたけど
タイミングを逃し続け、いつの間にかどんどんと時は過ぎていった。


そしてついに十二月を迎えてしまった。



私と理佐はあれから特に大きな進展はなくて、



あと一週間で、冬休みだ...。