おはようございます!
今回のリクエストは、もなりささんから頂きました!渡邉理佐×志田愛佳のペアです!
リクエストありがとうございました!
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私の名前は志田愛佳。私は高校が休みの日、近くの公園を散歩することが好きだ、
初めは歩くのが好きだからという理由でここに来ていた、
けれどいつしか私はある人に会うために来るようになった。
今だって私の視線の先には一人の女性が映っている。
髪は一つに結び眼鏡をかけ片手に缶コーヒーもう片方の手には本を持ちベンチに座る女性。
歳は高校三年生の私よりも幾つか上だろう。
目を合わせたことも、話したことも、名前も声も知らない貴女に私はいつの間にか惹かれていったんだ...
彼女の横を少し通り過ぎた時、チラリと後ろを振り返ると難しそうな名前の本を読む彼女の眼差しが私の頭の中にジュワッと焼き付く。
本を読む彼女の邪魔をしたくはないから、話しかけたい気持ちをグッと抑え再び歩き出す。
家に帰れば彼女を思い出し胸がギュッと締め付けられる、
この苦しい想いが彼女への気持ちだ。
けれど貴女にとって見知らぬ私がこんな気持ちを持ってしまっていいのか毎日考える。
そしてまた休みがやってきた、待ちに待った休日。
会いたい気持ちが先走り、いつもよりも早く公園に来てしまった、毎回彼女が座るベンチに貴女の姿はなくて悲しくなる...
近くの自販機に駆け寄り彼女がいつも飲んでいる缶コーヒーを買おうとした。
ポケットから小銭を取り出しボタンを押す
ガタンッと音が聞こえ取り出し口に手を入れ缶コーヒーを取り出す。
缶コーヒーを片手に後ろを振り返ると、私が会いたかった彼女が後ろに立っていた。
志:えっ...!?
思わず声が出た、そんな私を不思議そうに彼女が見るものだから恥ずかしくなって小走りでベンチに座る。
志:びっくりした...
そう呟いて缶コーヒーを口に運ぶ、普段コーヒーを飲まない私には少し苦くて顔にしわが寄ったのが自分でもわかった。
そんな私の隣に、誰かが座る
志:ん?
横を見ると、彼女がいて心臓がバクバクと動いた。
どうやら焦っていた私はいつも彼女が座っているベンチに座っていたようだ。
志:あっ...すみません。いつも座っているところに...
軽く頭を下げてそう言うと、彼女はこちらを向いてニコッと笑いながら
?:気にしないでください...!
そう一言だけ言って本を開いた。
邪魔しちゃいけないって心では思っているけど、ここで声をかけなきゃ前に進めないんじゃないかと思い勇気を出して声をかけた
志:あの...?
パタンと本を閉じて私の目を見つめてくるから急に緊張して声が出なくなってしまった...
情けないなんて思い下を向くと
?:いつも歩いてますよね?
俯く私に優しく話しかけてくれた
志:はい...!あの、お名前聞いていいですか...?
?:私は渡邉理佐です...あなたは...?
志:志田愛佳です...!
理:愛佳ちゃんか、ピッタリなお名前だね!
微笑む貴女に心からの笑がこぼれる
志:理佐さんもお似合いです...!
理:ありがとう...
そう言い理佐さんは再び本を開きその本の世界へと行ってしまった。
近くから見る理佐さんの眼差しは今までとはまた違って見える。
缶コーヒーを一気にグッと飲み干し
口の中に大人の味が広がる中、静かに立ち上がりその場を去った。
次の日は日曜日だからまた理佐さんに会える
嬉しくて自然に口角が上がりそのまま眠りについた。
ザーザーーー
目が覚めると同時に聞こえる雨の音。
不運にも今日は雨だった...
けれどいつもの時間になると私は外に出てあの公園に向かった。
雨だから日曜日でも人は居ない...
私は自販機に向かいまた缶コーヒーを買った。
ガタンッ
何故か私は苦手なはずのコーヒーが飲みたくなったんだ
志:やっぱり苦い...
そう呟いて空き缶をゴミ箱に捨てた、そして来た道を引き返そうとするとそこには、昨日のように理佐さんが立っていた
理:愛佳ちゃんにはこっちのコーヒーがいいと思うよ?
理佐さんはそう言ってボタンを押した
ガタンッ
理:はい...!
理佐さんは取り出した缶コーヒーを私に向けた。
志:申し訳ないですよ...
私がそう言うと理佐さんはニコッと笑って私の手のひらに缶コーヒーを乗せ片手でギュッと抑えて渡した。
志:フフッ...ありがとうございます...!
理:雨なのにお散歩?
志:はい...
本当は違う。理佐さんに会いたかっただけだ...
理:そっか...
志:理佐さんは...?
理:...
そう聞くと急に理佐さんは黙ってしまった
志:理佐さん...?
名前を呼ぶと理佐さんは突然傘を手から離し、地面に落ちた傘がパサッと音を立てる
志:傘...!
私は左手に持つ缶コーヒーをポケットに入れ傘を拾おうとした。
だけど伸ばした左手を理佐さんが掴む
志:えっ...?
その反動で私の右手からも傘が落ちた
パサッ
ザーザーーー
私の目には理佐さんだけが映り、耳には雨の音だけが響き渡る
理佐さんは私の腕をつかむ反対の手で眼鏡を取りその場に落とした
カシャーンッ
まるでその音が合図だったかのように私の腕が理佐さんによって引かれると、ほぼ同時に私の唇に柔らかい感触がした。
志:ンッ...
たった数秒だけの短いキス。
私の唇から離れた理佐さんはすぐに傘とメガネを拾い歩いていってしまった...
理佐さんは何を伝えたかったのだろうか
理佐さんの後ろ姿に咄嗟に手を伸ばすが、打ち付ける強い雨に遮られ理佐さんの姿が段々と見えなくなっていく...
私は手をおろし、傘は拾わずそのまま走った
見えなくなりつつあった理佐さんの背中が近づく、
理佐さんの元へと着くと私は傘の中へと入り後ろから抱きつく、
お互い濡れていて冷たいはずなのに、何故か温かく感じた。
理:なんでだろ...温かい
私と理佐さんは同じことを考えていたようで、それがたまらなく嬉しかった...
そして理佐さんはまた傘をパサッと落としスマートに私の腕を解きまた唇を重ねる。
そのキスはさっきとは違い、
私の口には少し、しょっぱい味が広がった。
終