儒教の毒 (PHP文庫)
という本があります。
著者は、村松 暎氏。
「儒教」という徳を説いた思想体系を「毒」であり害があるという内容のものです。
本文は非常に詳細に書かれていますが、巻末の渡部 昇一氏の解説にわかりやすくまとめられています。
なぜ儒教が毒なのかについての著者の主張を渡部氏は順を追って解説されます。
まず、
「儒学の開祖である孔子という人物が、政治に携わる意図があったにもかかわらず、政治には成功しなかったという事実である。孔子の述べていることはいずれも理想論であって、議論するときに相手を言いくるめることはできても、いざ実践に移すとなると具体的にどこからどうすべきであるかという手続きに関しては、何にも説かれていないというのである。
もともと儒教には妙な文献主義が底に流れている。(中略)"述べて作らず″という机上の理論にしかすぎないわけである。これを都合のいいように採用した最たる人物が、儒教を国教にした"漢の武帝″であろう。儒教に述べられている一部分に、「階級による社会秩序」があるが、武帝は絶対君主の支配体制として非常に便利であるという理由からこれを重んじた。
(中略)
儒教によれば、「農民は天の道に従って作物を栽培するからいい、商人は他人が汗水たらして作ったものを右から左に動かすだけでけしからん」ということになっている。しかし儒者だけが農民のために何かしてやるのかといえばそんなことはなく、農民は常に搾取されっぱなしという大きな矛盾がまかり通っている。儒教を学んだ儒者たちの建前の論理の前に、最も悲惨な目にあっていたのは、ほかでもない儒教の中でたたえられているはずの農民だったのである。」
「儒教はきれいごとを言うだけであって、それは建前にしかすぎない。しかし建前であったとしても″徳″が絶対的なものであるから、議論でうちかつことはできないのである。いくら具体的な政策であろうとも「儒教の中にはそんなことは説かれていない」と言われれば、それは徳に反することになってしまう。」
「氏の考えによれば、日本でもおかしな事が起こる時には必ず儒教の匂いがするという。徳をふりかざす建前が正当化されるときには、どこに歪みが生じていると、鋭く喚ぎとっているのである。その最もわかりやすい例が「平和憲法」であろう。
「平和憲法」l誠に結樵なことである。平和は何より尊ばれて然るべきである.それに反対するつもりはないが、平和憲法を唱えておれば外国は攻めてこないであろうという発想法はどうやって成り立つのか。その具体的な証明がないままに、「平和憲法」という言葉をうのみにしていいものなのかlここに疑問が浮かびあがってくるのである。
(中略)
「徳は絶対だ。徳を受け入れることのできない者は間違っている」という、いわば押しつけの主観ともいえるのではないだろうか。天安門事件の時、学生たちは「客観的な法律で裁いてほしい」と主張していた。つまり、中国が主観的な人の意見で治められていることに反発したのである。
裁判でも何でも、高級官僚は徳があり、その徳がある人物が裁くことに間違いはないとして、客観的な法律が確立していないのだ。高級官僚になるためには、まず筆記試験に合格しなければならない。ランキングをつけるのは皇帝である。皇帝とは天から位をもらった徳のある人物だから、その皇帝がランク付けした富僚は徳があるはずだIという図式なのである。儒教でいうところの徳海ものの見事に政治をあやまった方向に向けているわけである。
台湾出身の黄昭堂氏は「韓国や台湾の経済が発展したのは、法治国家である日本が儒教を壊してくれたからである。香港やシンガポールも、イギリスが儒教を壊してくれたから発展したのだ」と指摘している。日本統括下、イギリス統治下の歴史があったからこそ、儒教の影響力が本質的に取り払われた社会ができて、発展してきたという説である。
中国が今ひとつの発展がなされないのは、儒教と共に生きてきた歴史から抜けだせないでいるためではないかと、村松氏は実例をあげて説得的に解きあかしている。しかもその見地から我々日本人の、建前主義、左翼の言論の中に儒教的本質を見つけることができることも指摘している。」
本文でも、思想統制・独創性無用・「新しい考え」の排除・行き詰まる極端な精神主義というようなことばが並ぶが、時代の変化が早く、理想論より行動が求められるいま、儒教的な秩序重視・精神主義よりも、具体的な仕組みづくりと実践が求められます。
「儒教は倫理学であると同時に政治学でもある。よい政治を行なうには、と始終言っている。ところが、この政治学には経済というものに対する理解が完全に欠如している。」と村松氏は書いていますが、
今後のアジアの発展を考えても、実践を優先し、経済を主眼に置くために、"アンチ儒教”というのもひとつの面白い視点だと思いますがいかがでしょうか。
興味のある方は、著書をご一読ください。