ムーンフェイスはただ顔を丸くするだけではなくてそれに伴う精神的なダメージが辛い。

顔が丸くなるということ

それは周りの人から見れば「太った」になる。それは次の選択肢を思いおこさせる。

 

①太るくらいだから健康になった

②以前より太るなんて節制もできていない

 

ムーンフェイスはまず自分との戦いがあるのだけど、社会復帰するとともにこの2つの偏見との戦いも出てくる。

自分との戦い

ムーンフェイスを何とか制御しようと恐らくほとんどの人が何らかの措置をとっていると思う。その大なり小なりは別としてね。もちろん治療優先の時期はあるからムーンフェイスをにくく思うことは健康にも近付いているとも言えるのだけど。でもそんな事はわりと本人には知ったことではなく。

食事を制限したり運動制限のある中でできる限りの運動をしたりと周りからしたらたいしたことではないように見えてもやはり病み上がりなので本人はすごくがんばっている。運動制限は過ぎれば病気によっては再発の危険もあるし、食事はほとんどの人が食事制限をしながらその中で工夫をして自分で節制している。

 

それでもムーンフェイスはなる時はなる。というかなるべくしてなる。コルチゾールという意思ではコントロールできないメカニズムによってムーンフェイスは起こってしまうのである程度は防げても100%回避することはできない。ムーンフェイスにならなくて済む人は身体にそれなりの理由がある。

残酷だけど、なる人はもう1000%ムーンフェイスになり、決まった用量になって初めて解消される。これはもう科学作用なので人知の及ぶところではない。太陽を西から昇らせるのができないのと一緒だ。

 

それでもムーンフェイスと戦う人は戦っている。

偏見との戦い

上記の「①太るくらいだから健康になった」「②以前より太るなんて節制もできていない」の偏見は思った以上に強く社会に根付いている。ムーンフェイスになった人が良く耳にする言葉は「元気そうじゃん」とか「血色良くなって元気そうだね」みたいな言葉だろう。血色良くなったっていうのもプレドニンの副作用。すごいね、プレドニンの副作用。

これらの言葉はわりとぐさりと刺さる。なぜなら上記項目のように戦ってる最中に聞く言葉だから。相手に悪気がないのもわかるし、説明したところで理解されたところで何が変わるわけでもないと理解しているから口をつぐむ。

恐らくみんなもそうだろうけど、最初は「薬の副作用なんだよね~」とか「体重はそうでもないんだけどさ~」とか説明したことはあるはず。実際にそうなのだけど、その説明をした後の周りの反応を見ていっても仕方がないかと観念したこともあるはずだ。

そして、この説明をあとどれくらいしなきゃいけないのだろう。説明ならまだしも言い訳にきこえてやしないか。そう思う。そして押し黙ってしまうんだよね。

わかるわかる~との戦い

「わかるわかる」ともよく言われる。わかってないのにって即座に思う。

24年前ムーンフェイスになって絶望していた頃、周りは青春を謳歌していた。俺はムーンフェイスにコンプレックスを持ち、閉じこもった。ムーンフェイスはただ太るのとはまた違う肉付きで本当に絶望的になる。みんなと同じように鏡を嫌い写真を嫌っていた。

 

友達はいた。

 

でも、結局分かり合えた友達はいなかった。努力してもどうにもならないムーンフェイス。このおかげで周りとは違うことをしなければならなかった。ムーンフェイス=高用量なので無理はできないし遊んでいてもおっかなびっくりだ。若さにかまけて馬鹿なこともできないしがんばることさえ制限される。残されたリソースを使ってムーンフェイス削減の努力をしたりしているのに結果は出ない。でもあきらめることもできない。なぜなら努力をやめてしまったらもっとムーンフェイスがひどくなるんじゃないかという恐怖があったからだ。

時間との戦い

時間は平等で残酷だ。

ムーンフェイスであろうがなかろうが1日24時間は平等に過ぎていく。だけど、10代20代の時間は人生で1度きりしかない。戻ってこないんだ。その戻らない時間を病気による制限下で費やし、しかも実らない努力を絶え間なくやり続けて過ごした。

 

1日でも1秒でも早く、1ミリでも1ミクロンでも顔の丸みを取りたかった。それでもムーンフェイスは治らなかった。

 

そして、プレドニンがある錠数ミリ数に達した時、ムーンフェイスは突然何の努力もなく消え去る。本当に唐突にだ。努力も要らない。ただ消える。しかも消えた時に「なくなってたと思ってたけどムーンフェイスまだ残ってたんだな・・・」と、消える直前のムーンフェイスに気が付くものだ。

 

「あの努力はなんだったんだろう」

 

とも思う。ひとつも実らなかった努力。費やした時間と精神。本当に無駄だった。かといって、あの努力をしないではいられない。

ムーンフェイス対策

今年またプレドニンを飲み始めてムーンフェイス対策をしているけど、「結局はミリ数でムーンフェイスは決まる」とわかっていてもつい対抗策をしてしまう。今のところ何とか小さい感じで出ているくらいで済んでいるけど、はっきりとわかることが一つある。

 

再発してまたプレドニンの用量が増えたら今度こそ間違いなくムーンフェイスが大爆発する。

 

ムーンフェイスは1日の用量と蓄積された用量で決まるからだ。だから今の俺は再発しないことがムーンフェイスへの最大の防御と考えている。とにかく再発をしない。プレドニンの減量ペースはもう遅くなってもいいのでとにかく再発しないことがムーンフェイスにならないための一番の対策だ。

 

もう2度と周りの偏見とは戦いたくない。