旅と酒をこよなく愛した若山牧水(わかやまぼくすい、日向市、宮崎県)について、改めて調べて見ました。

 

 

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旅ゆく牧水の像(生家近くの牧水公園、日向市、宮崎県)

 

(解説) 若山牧水(わかやまぼくすい、1885~1928、歌人、宮崎県生れ)は、尾上紫舟(おのえさいしゅう、1876~1957、歌人・書家・国文学者、岡山県生れ)の門下、平易純情な浪漫的な作風で、旅と酒の歌が多い

 

 1908年(明治41年)に歌集海の声」を刊行、自然の大胆なとらえかたに加えて、旅・酒・恋を抒情(じょじょう)豊かに詠う歌風は、1910年(明治43年)の「別離」において一気に開花しました。同年3月に主宰誌「創作」を創刊。「みなかみ紀行」など優れた紀行文も数多い。全集・14巻(1992~1993)があります。 

 

 

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歌碑(若山牧水の筆跡、揮毫旅行、幾山川 こえさりゆかば 寂しさの はてなむ國ぞ けふも旅ゆく、歌集では幾山河と表記、北上、岩手) 

 

  歌の意味は、いったいどれだけの山や川を越え去ってゆけば、この寂しさが終わる国にたどり着けるのであろうか。行けども尽きない寂しさの国を 今日も私は旅している。

 

(解説) 全国を旅した歌人らしく、歌碑は九州から北海道まで280基もあります。生涯につくった8800の短歌のうち、最も多く碑に刻まれているのは「幾山河 こえさりゆかば寂しさの はてなむ」国ぞ 今日も旅行く」(歌集、海の声、別離)で13基あります。 

 

 酒好きにはたまらない「白玉の 歯にしみとほる秋の夜の 酒はしづかに 飲むべかりけり」(歌集、路上、讃酒歌)は8基、次いで、「白鳥は かなしからずや空の青 海のあをにも 染まずただよふ」(ふる郷旅の歌) は7基あり、汽笛を友とし、酒に沈潜する孤愁の人のイメージという。

 

 晩年は、富士山の見える沼津の千本松原で過ごしました。臨終の枕元にあった短歌雑誌の裏表紙には、赤いペンで「酒ほしさ まぎらはすとて 庭に出でつ 庭草をぬく この庭草を」の絶筆が残されていて、やはり酒が命を縮めたのかと哀れを誘います。

 

(参考文献) 下中邦彦編: 小百科事典(初版)、平凡社(1973); 新村出編: 広辞苑(第四版)、岩波書店(1991); 永原慶二監修: 日本史辞典(第1刷)、岩波書店(1999)