伊藤若冲、雪中の名作
動植綵絵(雪中雄鶏図、雪中鴛鴦図)
代表作、仙人掌群鶏図襖
 
 伊藤若冲(いとうじゃくちゅう、1716〜1800)は、京都生れ、江戸中期の画家。はじめ狩野派、のち中国(宋、元、明)の古画を学び、さらに対象の実写に努め、尾形光琳(1658~1716)の装飾画も取り入れ、動植物画に写生的な装飾画の新風を開きました。
 
 特に、鶏の巧妙な絵で名高い。代表作は、30歳ころから約10年かかって完成した、動植彩絵(どうしょくさいえ)30幅(宮内庁 三の丸尚蔵館蔵、東京)、仙人掌群鶏図襖(さぼてんぐんけいずふすま、西福寺蔵、大阪)である。 
 
 
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雪中雄鶏図(せっちゅうおんどりず)
署名は景和。若冲30代前半の作品、細見美術館蔵(京都)
 
 降り積もる雪の中、餌を探して佇む鶏を描く。鶏(ニワトリの雄)の朱のとさかや漆黒の尾羽が鮮やかに映える。一方、背景の溶けた雪が固まったような、奇妙な雪の連なり、ジグザグに折れ曲がる竹など、後年発揮される彼の作風の萌芽をすでに見出すことができる。
 
 
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伊藤若冲(1716〜1800)
 
  江戸中期の画家、若冲の号は、禅の師であった、禅僧、大典顕常(相国寺)から与えられた居士号。京都の青物問屋の長男。40歳で家業を弟に譲り(隠居!)、以後画業に専心。以後、独身で、85歳の長寿を全うしたが、中国絵画の影響を強く受け、身近な花鳥などを主題に奇想ともいえる超現実的な多くの名作を残している。 
 
 
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雪中鴛鴦図(せっちゅうおしどりず)
宝暦巳卯仲春若冲居士製、1759年(宝暦9年)2月作、
宮内庁 三の丸尚蔵館蔵(東京)
 
 雪の降り積もる冬の川辺に暮らす鳥達を描く。鴛(オシドリの雄)は石の上に片足で立ち、鴦(オシドリの雌)は水中に頭を突っ込み、尾羽を外に出している。雪の降り積もった柳の枝には、3羽の色鮮やかな雉鳩たちがとまっている。大典和尚の書いた詩文、藤景和画記では、寒渚聚奇(かんしょしゅうき)という題名が付いている。
 
 
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仙人掌(さぼてん)群鶏図襖(ぐんけいずふすま)
襖絵六面、若冲晩年の傑作。1789年(寛政元年)作
重要文化財、西福寺蔵(大阪)
 
 天明の大火に遭った後、一時的に滞在した大阪の鰻谷で薬種問屋を営む数寄者、吉野五運の依頼によって同家の菩提寺(西福寺)の襖絵として制作されたと伝えられている