胎児・新生児の腸内は無菌か?新生児のうんち(初回排便)も無菌か?

 

実は、これは議論になっている問題なのです(⇒2023年Review)が、「無菌である(腸内細菌は出産後に作られる)」という結論になりつつあるようです(2021年Nature)。

 

成人の便(腸内細菌の死骸が多い)と異なり、新生児のうんちは100%,新生児の体の成分でできていますから血液に匹敵する位の「情報の宝庫」になります(新生児の採血は難しいですが採便なら容易です)。

 

最近、東大の小児科の先生達がNatureに出した報告によると新生児のうんちのたんぱく質を調べると新生児の胃腸の病気はもちろん、心臓病なども判るそうです(理由は不明です。心臓のたんぱく質が便中に漏れる?)

 

 

腸内細菌は出産後の早期に作られ、これが赤ちゃんの成長に大きな影響を及ぼすことが分かり

最近、「赤ちゃんのうんち」の研究が熱いです

 

経腟分娩では出産時に子供はお母さんの「膣液」を飲み込み、これが腸内細菌の「種」になります。

しかし帝王切開では「分娩室の雑菌」が子供の腸内細菌の「種」になります。帝王切開の子供がアトピーが多い理由は、ここにあるのではないか?と考えられています。

 

 

 

それなら帝王切開児にはお母さんの「膣液」を経口投与すればいいのではないか?

という意見がでていました

 

そして2023年に比較試験が報告され、お母さんの「膣液」を経口投与された帝王切開児は「知能の発育が良い」ことが確認されたのです(2~3割の高得点なので「著明に良い」訳では無く、子供の成長には意味のない僅差という意見もあります)。これは大きな話題となりNatureでも紹介されました。

 

もっとも「膣液投与」をしなくても母乳を与えれば同じ効果があるという報告もあります(母乳は意外と不潔なんですね)

 

また「母親の膣液より糞便移植の方が効果が大きい」いう報告もあります(感染のリスクから普及は無理でしょう)。

 

「膣液投与」が安全で手間も費用も掛からないので「希望される妊婦さん」には明日からでも実行してもいいのではないでしょうか?(但しお母さんが腸や婦人科系の病気、何らかの感染症を患っている場合は、禁忌です)

 

知能の発育がよくなる機序は?

上記の報告では脳に有益な代謝産物が腸内で増加しているのだろうと考察していますが「謎」です。

 

以下は私の私見ですが

最近、皮膚の細菌叢と体臭の関係が研究されています。腸内細菌が同じなら母と新生児は同じ体臭になるはずです。母親が自分と同じ匂いがすることで新生児は安心し脳の発育に好影響を及ぼすのではないでしょうか?