今回の論文は「奇をてらった」感が否めません。しかし示唆に富んでいます
「イヌリンやマンナンなどの水溶性繊維は善玉菌の栄養となり短鎖脂肪酸(乳酸、酪酸など)の材料となる優れたプレバイオティクスである」というのが今までの通説です。
しかし・・2024年にGastroenterology誌(結構、権威のある医学誌です)に<目を引く>‘報告がありました。
APC遺伝子を異常にしたマウス(人の大腸癌モデル)に
水溶性繊維を多量に投与すると「大腸癌が増加する」
です
水溶性繊維も量が多いと善玉菌だけでなく悪玉菌の栄養にもなる、という話です
<酪酸パラドックス>
2020年、当院HPで「最近、乳酸が癌を促進するという報告が多い。代わって、最近は酪酸が抗腫瘍性・短鎖脂肪酸として注目されている」という記事を書きました
しかし、この報告では「酪酸も過剰になると癌を促進する」「高用量の水溶性繊維が癌を促進したのは酪酸が原因ではないか?」と推測しており「酪酸パラドックス」と呼んでいます
「Too Much of a Good Thing(過ぎたるは猶及ばざるが如し)」というコメントが論文に寄せられています。
健康を考える時に「過ぎたるは猶及ばざるが如し」とういう孔子の教えは重要です。
その最たるものは「免疫と癌」です
この問題は当院HPでも紹介しています
免疫は癌予防の主役です。しかし免疫とは例えるなら「軍隊の攻撃」を意味します。戦争の無い時も常時、軍隊が出動したらどうなるでしょう?
恒常的な免疫の亢進(慢性炎症)は癌の重要な原因であり、これを抑えるアスピリンが癌を予防します。
免疫を亢進するサプリの恒常的な服用が癌を増加させる危険は無いのか?これは検討する必要があります