朝から天人(あまびと)の機嫌がよろしくない。

思い当たる節がないだけに厄介だ。

 

どうかしたかと訊ねれば…「どうせ、わかってもらえないもの」とはね返され…

見て見ぬ振りを決め込めば…「わたしなんて、だっれも気にとめない存在よ」と拗ねられる。

 

どうすりゃいい…「ハァ〜💨💨💨」

 

彼の女人(ひと)が塞ぎ込むと于達赤の士気もダダ下がる(※)、という珍現象が起きており、テジャンとしてどうにも気が重いのだ。

 

「これでも差し入れときな」

 

声がするのと同時にパカ〜ンと何かで頭を叩かれる。

 

「コモっ、なんだよっ」

「まったく、大の男が昼間っからため息なんぞつきおって、情けない」

「誰が…だよ」

 

チェ尚宮は、目を逸らした甥の頭を今一度、今度はかすめるようにして、手にしたそれを彼の目の前にひけらかす。

 

「よぉ〜く見な、これが医仙さまのご所望品さ。ほら、いいから早く行け」

 

 

☆☆☆

 

「これ、何処で手に入れたの? スッゴく欲しかったのに、 最後の一冊を製氷機野郎に持ってかれちゃって💢」

 

驚くほどのよろこびようだ。

小冊子一冊で、女人の機嫌がこうも変わるとは、驚きである。

 

「なんの書です?」

 

キッチリと帯封がかけてあり、チェ・ヨンは中を見ていない。

 

「えへへ、ちょっとね。でもさ、よく手に入ったわね〜。どうやったの?」

 

そう問われても、よもや叔母から手渡されたなどとはいわずもがなだ。

 

「わかった! 極秘ルートね。OK、これ以上聞かないであげる」

 

満面に笑みをたたえ、スッゴクうれしい、等と呟きながら、冊子をギュッと抱きしめている。その様子から、チェ・ヨンはその中身が気になったのだが…

 

 

☆☆☆

 

典医寺の仕事を終え、ウンスは急ぎ王妃のもとを訪れた。

 

「ワンビママっ!」

 

彼女が手にしているのは、大都で年にたった一度、しかも限定数発行されるという、最も洒落た着こなしをした男女が掲載された小冊子、つまりはベストドレッサー賞の結果が挿絵付きで紹介されているという代物。

 

ここ開京に入ってくるのはほんの数冊で、扱うのは民間のとある書房のみ。

それも、巷の噂によれば、徳成府院君 キ・チョルの息がかかっている店…

 

それでも、大都の女子がこぞって買い求めるともなれば、何とかして手に入れるしかない! ウンスはそう意気込んだ。

 

だから、于達赤テジャンの目を盗み、武閣氏の2人と共に、曰く付きの書房に足を運んだのだが…

 

 

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差し上げるわけにはゆきませんな。

 

なんで? どうしてよ?

 
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最後の一冊は、私めが所蔵する決まりゆえ。

 

じゃあさ、それ、こっちに譲るってのはどう?

 
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いくら天の女人の願いでも、それは叶えられませぬな。ダメです。

 

…というやり取りがあり、取りつく島もなくウンスはスゴスゴと王宮に戻ることに。

 

ワンビママを元気づけるのに必要だってのに🌀🌀🌀 あ”〜どうしよう…

 
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一晩かかって入手法を模索するも、光明を見いだせず、悶々としていたところに、テジャンがカモネギ✨状態で現れたというわけ。

 

「医仙、そなたどうやってこれを?」

 

王妃が驚きの声を上げれば、ウンスは苦笑を浮かべながら…

 

「それがね、思ってもみなかった男(ひと)から、ついさっき」

「その奇特な御仁とは?」

「へへ、極秘にするって約束なんです」

 

その表情から、于達赤テジャンのことだと察しはついた。しかしどんな鉱石よりも堅物と評判のテジャンが、一体どうやって何処で手に入れられたのか?

王妃は不思議に思ったのだが…

 

「ね、ワンビママ、それよりも早く封を切って下さいな。さっきからもう気になっちゃって(*´艸`)」

「そう、そうじゃな」

 

疑問を脇に押しやるように王妃は小さく息を吐き出すと、おもむろに冊子を開いたのだった。

 

 

ウンスは目を輝かせながらページをのぞき込む。

 

あ”ーやっぱり漢字ばっかりか…

そうだ! 挿絵を見ればわかるかも、ワンビママの説明付きだしヾ(^v^)k

 

「ね、予想どおりでした?」

「意外、じゃ。…医仙、何故このような結果が…」

「どう意外なのか、詳しく聴かせてくださいな」

 

頰を上気させながら、王妃の話しが始まった。

 

 

ここ数年、女性部門No.1はバヤン・クトゥク皇后で、男性部門は皇帝トゴン・テムルという至極当たり前な結果が続いていたらしい。

 

「へぇ〜、皇室がトレンドセッターだったんですね」

「皇后は礼法を重んじ、普段は質素は暮らしを好まれるのだが、公の場で纏う礼服で背の高い皇帝と並び立つと、まるで少女のように麗しく見えたものじゃ」

「ワンビママ、皇帝はイケメンなんですか?」

 

さぁて、どうであろう、と王妃がお茶を濁す。

 

「強いてあげるなら…そう、龍袍の刺繍は、眩しいくらいに素晴らしい」

「あはは、それ、誰かに通じてるかも」

「おお、徳成府院君のことじゃな」

「そっちはワーストですけどね」

 

ベストとワースト、王妃の生まれた国では、最佳と最差と云うそうな。

 

「最差は置いといて、今年の最佳はどなたなんですか?」

「それが、今年は驚いたことに…」

 

王妃と王妃の叔父であるソジュンが揃って栄光を手にしたというのだ。

幼い頃から見目麗しいと評判の王妃は、毎年トップ10入りしていたらしいが、都から離れて幾久しいソジュンが何故?

 

「どうやら叔父上は、旅先で“せるふぽーとれーと”なるものを撮り、妾が婚礼衣装を着た姿絵と共に大都に出回った、との記載がある。

叔父上は、一体何を考えておるのやら…」

 

 

宝塔失里、一度くらいこういった栄冠を手にするのも悪くなかろう?

 

ソジュンが悪戯そうな顔を向け、魅力タップリな声で語りかけてくるようだ。

 

「あらま、ステキじゃないですか。ワンビママは高麗の王妃。この国一番のベストドレッサーですもの❤︎」

「そうなれるといいのだが… 妾はまだ衣に負けておる気がする」

 

内面の美をも余すことなく纏うには、まだまだあれこれ足りない、と。

 

「そういうお気持ち、少しだけわかる気がします。

天界でも、有名タレントがこぞってプレタポルテのドレスやタキシードを着て、レッドカーペットを歩くんだけど、若い子達、姿勢が悪かったり痩せすぎてたりで、ボディラインが貧相というか服に着られてるっていうか…」

 

ボンキュッボン過ぎるのも問題だが、王妃のいうとおり、内面の輝きを纏わない限り、最佳著裝獎は夢のまた夢ということだ。

 

「ワンビママが最佳っていうのは、イングムニムを心から想ってて、それが人々の羨望と憧れに繋がったんですよ。一等賞、心から祝福します❤︎❤︎❤︎」

 

 

☆☆☆

 

遡ること十二時間前…

場所は稀少本を扱う例の書房。チェ尚宮は秘密裏にその場所を訪れていた。

 

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武閣氏の長がこんな時間に何用じゃ

 

徳成府院君自らおでましとは…話が早い。いつぞやの借りを返していただけますかな?

 
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借りなど作った覚えはないと云いきるキ・チョルに、チェ尚宮はお忘れですか、と耳元でゴニョゴニョと呟いた。

 

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苦苦苦。そ、それは…それだけは困るッ!

 

ならば、よろしいですね?

二言は無しですぞ!!!

 
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(例のことをバラされるくらいなら)どうぞどうぞ。

 

 

例のこと…それは、年一発行の冊子で、昨年、キ・チョルが最差著裝獎(ワーストドレッサー賞)に選出されていたという事実( ̄□ ̄;)!!

 

曲がりなりにも徳成府院君の称号を持つ輩は、予め今年の冊子から最差が記載されたページを抜いておいたのだった。

 

 

☆☆☆

 

たれんと、べすとどれっさぁ、わあすと、ぷれたぽるて、れっどかあぺっと、ぼでいらいん…さっぱり意味わかんないって

 

テジャンにどう報告すればいいんだよ…(×_×)

 

天を仰いだかと思えば地に俯きつつ、トボトボと于達赤宿舎への道を歩くトクマン、本当にご愁傷様です…

 

 

 

終わり

 

 

 

※ウンスの機嫌が悪いとテジャンのしごきがきつくなる、という図式が、于達赤の間では定説となっているのであります!

 

 

 

今年1年を漢字で表すと?

 

暴飲暴食?!

 

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