「ちょっと高麗へ、って…あの、それってどういう」
マダムローズが眼を細めている。
自分は、彼女が思った通りのリアクションをしたのだろう。
そして感じたに違いない。ふたりは同じユ・ウンスなのだ、と。
「ごめんなさい。驚かせちゃったわね。
きちんと話すいい機会だと思ったものだから。ちょっと長くなるけど聞いてくれる?」
その言葉に、ウンスはしっかりと頷いていた。
☆
「ねえ、縦横無尽に走るハイウェイを想像してみて。
今、わたし達がいる世界と、あなたがいたソウルや高麗はね、いくつものジャンクションが分離したり合流したりして、繋がっている…そんな風に考えるの」
ゆったりとしたハイバックチェアに身体を預けると、ウンスは目を閉じてみる。
すると子供の頃の記憶が蘇ってきて…
高速で車を走らせるためのそれは、一つ分岐を間違えればとんでもないことになる。
ソウルで生まれソウルで育ったにも関わらず、ウンスの父は高速道路が苦手だった。
ハラボジとハルモニに会いに来たのに、気がついたら逆方向に向かって車を走らせてた、なんてこともあったわね
ジャンクションを一つ間違えたよって、アッパったらよく言ってな…
…ジャンクション?
もしかして…ハイウェイ同士を繋ぐジャンクションを天門に見立てるってこと?
「もうわかっちゃったみたいね」
その声に、閉じていた目蓋をパッチリと開く。
見えてきたのは、鏡に映した自分の姿かと思うほど瓜二つの顔だ。
優しく笑いかけられて、ウンスは心底ハッとした。
マダムローズ
違う時空に迷い込んで、行き先すらわからないわたしを、こうして助けようとしてくれてる…
「ウンスさん、ここからが本題。
時空と時空との間には、裂け目があるのよ。
ハイウェイでいうところの、目には見えないジャンクションてわけ」
「時空の裂け目、ですか?」
「それぞれのジャンクションには、それぞれの扉があって、これが天門だとしましょう。
但し、時空の裂け目はとっても気まぐれで神出鬼没なの」
「つまり、どのハイウェイに繋がるのか、そこがどんな時代でどんな場所なのか…
行き当たりばったりってことでしょうか?」
「天門と天門は、光りのトンネルで繋がってるんだけど、とても不安定なの。ジャンクションはね、ハイウェイの中で常に位置を変えながら、その度再生と崩壊を繰り返している」
「じゃあ、なら、あなたのチェ・ヨンはどうやって…」
「その前に、もう少しだけ我慢して聞いて。
大方の天門は、必ずしも同じ場所にあるわけじゃないのよ。だから、安定した天門の場所さえ見つけ出すことが出来れば、目的の時間と場所に辿り着くことは理論上可能だわ」
「…標識とか?」
「さすがのみこみが早いわね。チェ・ヨンには、どうやらそれが見えちゃうみたいなの」
続く
已己巳己(い・こ・み・き)、久しぶりの更新です
この話しを書こうと思った理由の一つが、天門の役割をどう解釈するか、でした
ということでハイウェイのジャンクションを引っ張り出しちゃった
確か「Flash」というアメリカのドラマで、そんな説明があったような記憶が…
話が逸れますが、これ、シーズン2まではメッチャ面白かったですヨン ❤︎
最後に、この日のために目次を作っておきました(半分ウソです)
目次 part 7 Contents ┣(已己巳己)
ではでは新年会行ってきます!!!