已己巳己(い・こ・み・き)番外編です
「已(い)」「己(おのれ)」「巳(み)」という異なるがよく似た3つの漢字が指し示す、よく似ている、見分けのつかない、でも実際は異なる世界に迷い込んでしまったウンスと、彼女を信じ、待ち続けるチェ・ヨンのお話し
こちらは、江華島を舞台にした番外編となります
その日ウンスは早起きをした。
日帰りで江華島に行くためだ。
ソウルから北西へ約50キロ。新村から直通のバスに乗れば、約2時間程で着ける。
そこで、どうしても行きたい場所があった。
☆☆☆
誰もが案じていた王妃の容体が、ここにきて好転した。
伝燈寺に燭台を寄進すれば気の病も治る、という夢のお告げがあったそうなのだ。
王が即座に動いた。
道中の警護は、久々に于達赤が任される。
辺境の地から開京に戻っていたチェ・ヨンにも、王直々に声がかかった。
随分と久しぶりの江華島行きである。
鼎足山の山麓に建つその寺で、二日ほど過ごされる予定なのだが…
警護は、いつにも増して厳重なものとなる。
まことしやかな噂が流れてきているのだ。
それは、反元政策を推し進める現王の首を、元が挿げ替えようとしている、というもの。
新たな王として奇皇后が押すのは、忠宣王の庶子で現王の叔父にあたる、唯一人王族の血をひく塔思帖木児。毒男だ。
命よりも大切な女人(ひと)に、二度も毒を持った許されざる者。
チェ・ヨンにとって、名を聞いただけではらわたが煮えくりかえる相手。
恐らくは、険しい表情をしていたのだろう。
「大護軍、高麗山の稜線沿いにある支石墓の一つで、おかしな物を見つけたという報告が上がってきておりまして…」
于達赤隊長のチュンソクが、目を伏せたまま耳打ちをして来た。
☆
元宗の子王昛は江都(江華島)で生まれた。世子としてモンゴルに入朝したのは三十路を過ぎてから。二度に及ぶ婚姻申込の末、三十半ば過ぎて元の世祖フビライの公主、忽都魯掲里迷失(後の荘穆王后)を妃とした。その後、父の死を受けて第二十五代の王となるが、それは、高麗が正式に(モンゴル帝国改め)大元の冊封国となり、 “辺境の地” を委任統治せよ、と大都から命じられたことを意味した。駙馬高麗国王の誕生である。それ以降、大元から高麗王に贈られる玉璽には「駙馬国王宣命」の文字が刻まれ、王の諡には ”忠” の字がつくようになった。
王権を揺るぎなくするために、敢えて背負った “駙馬” という荷は、忠烈王にとって想像以上に重かったのだろうか。それとも、異国の年若い公主に心を奪われたのか。
婚姻が済むと、王は前妃である貞和府主に指一本触れようとしなくなり、府主は廃妃同然の身の上となった。
…それから八十有余年が過ぎている。
「チョナ、貞和府主はどんな思いで祈りを捧げていたのでしょう?」
王妃は胸が詰まる思いだ。
子を孕み、幸せの絶頂にあった。なのにニセの手紙に誘い出され薬を飲まされた。
自らの弱さで授かった命を無くし、挙げ句、高麗に嫁いでから十二年そのほとんどの時間を正気を無くして過ごしてきた。
「プイン、こうして共にいて、其方が笑みを浮かべてくれるだけで、余はこの上なく幸せじゃ」
「チョナ、妾は強くありたいのです。
そしてなによりも丈夫になって、子を授かりたいのです…」
王は王妃の痩せた身体をそっと胸に引き寄せる。
そして、あの叔父が高麗に足を踏み入れるのだけは、何としても阻止せねば、と心に誓った。
☆
「大護軍、こちらなのです」
「これは…」
「天の品ではないでしょうか? もしかして…この近くに天門があるのではないかと」
チェ・ヨンは手渡された品を壊さないように、そっと握りしめる。
ウンスが身につけていた品とは少し違ってはいたが、同じ類いの物に違いなかった。
イムジャ、 これは貴女からの合図なのか、それとも…
で続く
已己巳己(い・こ・み・き)番外編になります
二人は逢えないままでいたのか、それとも、どこかでニヤミスをしていたのか…
上、中、下の3話で終わる予定なのですが、またもや伸びちゃう可能性大も無きにしも非ず
え━━━(゚o゚〃)━━━!!!
ドウシタ?!(。艸゚;*三*;。艸゚)ドウシタ?!
∑ヾ( ̄0 ̄;ノヾ(▼ヘ▼;)
ここを借りて御礼をば
四方山、シンイとは無関係な記事2本続けたにもかかわらず…
ペタやら、いいね!やら、メッセやら、コメまで頂いちゃって、楽しかったです❤︎
おしゃべりなので、アップの時は、即コメ返しを自らに課しておりますが、遅れてすみません
いつもの記事も、本日からはなるべく直ぐにコメ返を目指したいかと❤︎