枢密院副使 柳仁雨(ユ・インウ)

次々と王が変わってゆく中、武官として高麗王朝を支えてきた功臣の一人。

 

無論、剣の腕は立つ。

しかし、それだけなら ”上” 止まり。

彼が ”特上”  へとランクアップできたのは、対峙した相手の ”気” を探る『探功』というものが備わっていたから。

”気” が弱ったと見たら一気に攻める、盛り返したと感じたらすぐに退く、といった具合だ。

その力のおかげで戦場のみならず、その後の交渉ごとで武官としての名をあげてきた。

 

 

視察に出る直前、彼は久々にチェ・ヨンの ”気” を探る。

 

ほう…

十分に満ちておる

良い伴侶を得て、長生きしそうじゃ

…だが、あの赤い髪の女人は確か天界に帰ったと聞いておったがな

 

惜しいことをしたものだ、とため息交じりの息を吐き、目を閉じる。

すると…

手を取り合い穏やかな笑みを浮かべるふたりの姿が、目蓋に浮かんできたから不思議だ。

 

「副使、私兵の同行をお許し頂きたく」

「おおっチェ・ヨン、そうかそうか」

戻ってくるのだな?!

 

「はっ?」

「いやいや、構わんぞ。其方に任せるさ」

そうか、戻ってきおるか

 

まるで一対の磁極のように、どんなに離れても惹かれあう、言うなれば運命のふたりなのだ。

 

天に在らば比翼の鳥、地に在らば連理の枝とは…まさに此奴とあの女子(おなご)のことじゃわい

 

 

 

…とまあ、そんなことがあったわけだが、探功のことなどおいそれと話しが出来るものでもなく、枢密院副使は(テマンから受けた)点穴が解けるのを大人しく待たなければならなかった。


 

☆☆☆

 

一方こちらは隠国とも見果てとも呼ばれる場所。

引き寄せられるように城に入ると、ウンスはどこまでも続くらせん階段を登り始める。

 

 

ここ、かな

 

現れるべくして現れた目の前のひときわ大きな扉を、えいッと一押しで開けようとすると…

 

「おっとっと!」

 

重いはずの両開きのそれがいとも簡単に開き、つんのめってしまった。

 

 

…そこは、城に相応しいあしらいが施された寝室だった。

 

「うわっ! ゴージャスね…」

 

思わず手を伸ばして羽根枕に触れてみれば、”ここに来て、眠りなさい” そう言われてるような気がして、躊躇わずベッドに横たわる。

 

柔らかくて心地のよい寝具に包まれるのは、いつ以来のことだろう。

思わず口元からほ〜っと安堵の息が漏れてくる。

すぐに目蓋が重たくなって、今にも眠りに落ちてしまいそうだ。

 

疲れてるのかしら

だけど…あんな長い階段を登っても息が上がらなかったわ

扉だって、触っただけで開いちゃったし…

 

睡魔と戦うかのように、ウンスの長い睫が二度三度と揺れ、ついにはゆっくりと閉じられた。

 

夢でもいい…ほんの僅かな時間だってかまわない

チェ・ヨン…あなたに、すっごく逢いたい

 

 

時を遡るかのように、見た事もない光景が走馬燈のように映り、強烈な光りに向かって身体ごと吸い込まれてゆく。

 

 

チェ・ヨンと共にくぐった天門の中で、閉じたその目に感じた光りととてもよく似た感覚。

 

目が合えば最後逃れられなくなるような瞳を持ち、手からは稲妻を放ち、武士の約束だと言ってウンスをソウルから連れ去った男(ひと)…

その彼に思わずしがみつくほど怖ろしいと思った、あの時と同じ天門の中にいる。

 

見果てだろうと百年前だろうと、そこがクレタ島でも例えグリムの世界だって…

チェ・ヨン、あなたを守れるなら…

何度だってくぐる

逢えると信じて

だから、生きて欲しい

生きていてくれさえすれば…

 

 

その時、ウンスは確かに感じた。

今いるのは、チェ・ヨンの腕の中なのだと。

 

イムジャ…

聞こえるかっ!

 

…聞こえる

ヨンっ! 聞こえてるわ!!!

 

俺が、共に、貴女とくぐれば…

 

 

 

最終話に続く

 

 

 

100年前の世界で、天門は何度も開いた、という設定だとソン・ジナ氏の50問50答にありました(冬ごもり中のOさま、しつこくありがとうございます)

 

ウンスが辿り着いた過酷な時代は、ドラマでは多くが語られていませんでした

 

国境沿いだった場所は当時まだ高麗の領地ですが、武臣政権の時代真っ只中

当時の王(高宗)は江華島に遷都中

 

モンゴルの領土と接した場所に天門はあるから、ウンスはそこから離れるわけにはゆかない

倒れたままのチェ・ヨンから引き剥がされて、彼を助けるため天門をくぐったわけなので、その生死も定かではなく…

 

一年…それはウンスにとって限界に近かい歳月ではなかったかと

そういうわけで ”転ばぬ先の杖” ついて歩いてるとか?!?!∑(-x-;)ヾ(▼ヘ▼;)m(_ _ )m

 

強い願いは縁を結び、切実な願いと思い出が二人を巡り合わせる

 

(°∀°)b 最終話で逢わせちゃいましょう〜っと♡

 

m(_ _ )mタイトル変えるの忘れてアップしちゃいましたm(_ _ )m