生まれて初めて、オーロラを見た。
それは、天空から降りてきた光りの布が、その長い裾を揺らし、おおきな襞を幾重にもつくるようにたなびいていた。
ウンスは、息が止まるほどに、美しいと思った。
「人ひとり寄りつかぬ鐘山という山に、燭陰という神が住んでいるのだとか。
その姿は竜神のように長い胴を持ち、空を覆うように舞うのだそうです」
固い胸に背を向けて寄りかかれば、その男(ひと)の発する声が、身体を通して伝わってくる。
その微かな振動に、低い声に、優しく包まれているようで…心地がよい。
「…赤い姿で現れると天変地異の前触れ。このように澄んだ色をしていれば、吉兆だと」
「…いいことが、起こるのね?」
※オーロラの色の違いは、大気の高度と相関の関連であることを科学は証明するが、今、この地で、それが何かを意味するだろうか?
見えているのは緑色のオーロラなのだ。
しょくいんていう神様の話しの方が、似合ってるわ
彼女は、チェ・ヨンに微笑んで見せた。
☆
オーロラが太陽フレアに伴って起きることを、ウンスは知っている。
チェ・ヨンが天門をくぐる前に見たという、天空を覆うような発光体もその一種だと考えれば…
ドラマからお借りしています(夜じゃないけど…オーロラ?!)
つまりそれは、間もなく天門が開くという標でもあったのだ。
☆☆☆
竜、何をしていた?
燭陰が目を覚ましたではないか
天が割れるようなそれは、玉皇大帝の声だ。
あの女人を、なんとしても引き留めねばならぬというのに…
このままでは、間もなく天門が開く
…天帝、つまりは、あの者が天門をくぐらなければそれでいいと?
竜神が恐る恐るそう訊ねれば…そうだ、という不機嫌きわまりない答えが返ってくる。
なら、お任せください 竜の名にかけて、引き留めて見せましょう!
☆☆☆
この庵の至る処に、ふたりが過ごした名残が感じられる。
奚琴を奏でるウォルヒのすぐ隣で笑っているペクサンの、蕩けるような優しいまなざし。
曲が終わると、彼はその奚琴を受け取り、彼女に口づけてから寝屋へと誘うのだ。
会ったこともない男(ひと)の、妻に向けられた深い愛情が、ウンスの背を押したのだろうか…
いつの間にか、ふたりの顔は、自分とチェ・ヨンに変わっていた。
天幕で交わしあった口づけが思い出され、頰が火のように熱くなる。
あの時、身体中に感じたチェ・ヨンの大きな手に、今一度、触れて欲しいのだ。
いつの日か、わたし達にも、永遠の別れがおとずれる…
ならば、師姉と師兄のように時を分かち合いたいと、ウンスは心から願った。
続く
※オーロラの色のくだりを加えました
( p_q)m(_ _ )m
ひえっ!
どんだけオーロラを引っ張りたいのか…(ドラマのシーンまでこじつけちゃってるし)
ということで、一話、挟んじゃいました
次は「分水」を書き書きし、週中で例のアレが…あれれ???
(_ _。)( ;゚─゚)ゴクリ(ノ_-。)((((((ノ゚⊿゚)ノ