あっ…

 

チェ・ヨンの親指が唇に触れ、その腹で僅かに押されると…

おもわず声がこぼれ落ちる。

ゆっくりと、弧を描くように撫でられれば…

まるで、魔法にかけられたみたいに熱がこもって、あわやフリーズ寸前といったところか。

 

 

ウンスの口元からこぼれた声に、色が見えた。

それは、一瞬で意識を奪われるほど魅惑的で…

息が止まりそうになる。

顎に指を這わせ、顔を少しだけ上にもたげると…

うっすらと開いたその唇を奪いたくてたまらない。

今すぐにでも…だ。

 

「目を、閉じてください」

 

その一言を、チェ・ヨンは辛うじて絞り出した。

 

 

自分のそれよりゆうにふた回りは大きな指で顎をクイッと押されると、顔が上向きになり、その男(ひと)と見つめ合う格好になる。

胸がさらに高鳴りを増し、ウンスは瞬きすら忘れてしまった。

 

「…を、閉じてください」

 

「なに、を閉じるの?」

 

目を、ととろけるような瞳でチェ・ヨンが唇を動かすのが見え、途端に目蓋をギュッと閉じる。

 

やだ…眼輪筋に力が入り過ぎちゃった

目元、強ばったまんま? シワとかよってる?!?!

 

気にし出したら無視するのは無理というもの。

このままこの顔で口づけを受けたら…

 

一生の不覚よ

 

ウンスはおもむろに瞬きを繰り返した。

 

 

天の女人は、口づけの前にこうするものなのか?!?!

 

ウンスがパチパチと瞬きを繰り返している。

ゴミでも入ったのかと心配になったが、そうではないようだ。

 

合図、なのか?

俺に言いたいことでも?

 

天界にはそういった決め事があるのかもしれない。ふとそんな考えが過ぎりもしたが…

 

それがどうした?

だからなんだ?

 

チェ・ヨンはウンスの頰を両手で包み込むと、唇で目蓋にそっと触れる。

そうやって瞬きをいったん止め…

 

「しばし、そのままで」

 

そう言い終わるや否や電光石火の勢いで、ウンスの甘やかな唇に口づけた。

 

 

☆☆☆

 

あのふたり、うらやましいくらいお似合いだわ

今夜は戻ってこないわね

 

ヨン、覚悟を決めさえすれば、答えはすぐ傍にあるものよ

…ペクサンがあなたに語ったことを、どうか忘れないで

 

ウォルヒが部屋の灯りを消し去ると…庵そのものが、闇という名の隠れ蓑を纏ったように静まりかえった。

 

 

☆☆☆

 

チェ・ヨンとの口づけは、驚くほど優しくて、穏やかで…

ウンスの口元に笑みが広がる。

 

いいか、耳をすまして羽音を聞くんだ

そうすれば、どんな風を望んでいるのかが自ずと聞こえてくるから

問題は、その先

 

一、音色は引いては寄せる波 (攻め時を誤るな)

二、音の高低を聞きわけろ(状況把握を怠るな)

三、すべては強弱あってこそ(押し引きが肝心)

 

軽く触れるだけの戯れを繰り返した後、口づけは少しずつ長くなり、探るように深いものへと変わってゆく。唇が合わさる毎に、その女人(ひと)の吐息が、鮮やかな色に染まっていった。

 

 

 

エマージェンシーもいいところだ。

 

Kissの一つや二つ、そう思ってたのに…

 

ウンスは知ってしまった。

後戻りが出来なくなっている自分の気持ちを。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

仕事が…

現場が…

続いておりまして、どうにもこうにも状態でまだ現場でございます

 

。(´д`lll) (/TДT)/

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