ここは開京

暮れも押し迫った夜のこと。

とある路地に、槍を高く掲げ、仁王立ちをするひとりの男がいた。

 

目を閉じて、白い息を吐きながら、その顔に浮かんでいるのはニヤリとした笑み。

 

仁槍(ニヤリ)よ、頼む!

 

おぼろげに見えてきたのは男女のシルエットだ。

 

くそっ!

なんで影だけかな…

こいつの霊力が足りないのか?

ったく…肝心なときに。

 

でもまあ、さっきの彼奴らよりは、確実に参考になる。

 

あのキャスティングは間違いだったと男は大きくため息をついた。

雪姫も、ウダルチの後輩も、揃って背が高すぎだ、と臍を噛む始末。

 

顔の角度からして色気ってもんがミジンコほども感じられなかったぜ。

しかし、この男も背が高そうだ。

ちょうどテジャンくらい?

そういえば髪型も似ているような…

 

まさか、な…

 

あれは… 顎? 女の顎に手をあてたぞ。

これくらい身長差があると絵になるもんだな。

ほーなるほど。

そうやって女の顔を動けないようにしといて…ブチュッとか。

 

うぉ!

女が結い髪をといたぜ!!!

すかさず男の手は髪をかいくぐるようにして女の首か…

こりゃあ、この後は間違いなくしっぽりと…

 

興奮した男を他所に、空からはフワフワとした冷たい雪が降り始める。

 

冷えるはずだ…

 

男がブルッと身震いをしたその時、微かな音を立てて仁槍がはじけ飛んだ。

慌てて拾い、天に向かって掲げ直すが、映像は完全に途絶えていた。

 

こいつ、あの部屋の付喪神に負けやがったのか?

いや、俺の修練が足りんのかな…

 

いままでもこういうことは幾度かあった。

だが、そのつど仁槍が勝利を収めてきたのだ。

 

香炉や掛け軸に負けるなど…あるまじきだ

酒を控えて、明日から気合の入れ直しってこった。

 

「ようし!」

 

そうひと言発すると、男は歩き始める。何故かその足取りは軽い。

 

「これにテジャンと医仙さまの情をたっぷりとこめれば…

描けるような気がしてきたぞ!!!」

 

夫何環逸之令姿

獨曠世以秀羣

(それ何と美しい姿の、世に秀でたることよ)陶淵明 「閑情賦」より

 

☆☆☆

 

危なかった…

いまのはウダルチの槍使いの槍か。

あわてて結界を張ったから事なきを得たが…

 

某がお側にいる限り、誰にもお二人の邪魔などさせるものか!

 

はい?

そういうお前は何ものかとお訊ねで?

 

既におわかりでしょうが、年も改まりました。

某、ウダルチ テジャンが携える “鬼剣” というもの。

 

なに?

仁槍とやら、シルエットだけでも持ち主に見せたとは、実にあっぱれだと?

 

そ、それは…某ついうたた寝をして…

 

霊力は、それを携える者の持つ力に大きく左右されるもの。

ならば、仁槍などに負けるわけがありませぬ。

なにせ、ウダルチ テジャンは高麗の鬼神と呼ばれるお方故。

 

おっと!

肝心なことを忘れるところでしたな。

 

旧年中は大変お世話になり、改めて礼を申し上げまする。

某、登場回数に多少不満は残るものの…

Jが申すには、こうしてみなさまに読んでいただけることが嬉しいのだと。

本年も、この鬼剣を…テジャンを? 医仙さまも、チェ尚宮に、王様と王妃さまと……

ひと言で申せば…

“シンイ”の世界を、楽しく泳ぎまわりましょうぞ!

 

 

年頭からふざけた話しで申し訳ありません!

アメンバー記事をまるっと端折ってはおりますが、アメンバーではない方々にも続きの内容が、なんとなーくおわかり頂けるのではと…あれ?

 

どうやらお後が宜しいようで…

 

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