この話は、2月初旬に一ヶ月の任期満了をもって閉室されたグルっぽ『二次書きさんの談話室』から、『このネタ、どういう風に書く?』板で…「依依恋々」ぽんたさんのアイディアをわたしがget!(外伝も是非!)
その板でのコラボ企画第二弾になります
第一弾
「つれづれSS」
soraさん「神医チェ・ヨン」(連載終了)
第三弾
「memories of rain」
りえさん「水明の縁」(連載終了)
こちら不定期という名の下に、更新が滞り…_(._.)_
三十四話目…ヨンとウンスはそれぞれの局面を迎えております
登場人物の人の名前とか忘れちゃったよーという方、こちら からどうぞ!
~それでは話しの始まり~
百年前 立夏より少し前の頃…ウンス
三方を岩山に囲まれたこの村にも、間もなく夏が訪れようとしている。
わずかばかりの田畑では作物が青い芽を伸ばし、岩場近くに咲くシャクナゲは今が見頃といっていい。
ウンスはその花を長いこと見つめている。
典医寺にショック状態の患者が運び込まれた事があった。
『石南葉(せきなんよう)は強壮、鎮痛効果をもたらしますが、同じ漢字を使う石南花(シャクナゲ)は、その木や葉に毒性を有し、誤って服用すれば呼吸困難を引き起こしてしまう。
…体力のないものは死に至るでしょう。』
患者は、”石南花の葉”を”石南葉”と間違えて服用したのだとチャン・ビンがそう語っていた事を思い出す。
花が咲いて気がついた。
これの毒、だったのね。
キムのおじいちゃんも、ホンのおばあちゃんも…
村が生き残るためだと、ハニはそういった。
因習とはそういうものだと。
だがウンスは、はたしてそうなのだろうかという疑問を捨て切れずにいる。
罪人でもない人の生き死にを、ただ弱者だからという理由で決めていいもの?
…ヨン、あなたならどう考える?
「どうされたんです?
先ほどから思い詰めた顔をされてる。」
いつの間にか、ガンウが隣にいた。
ウンスはこの男のことを、伸びやかな人だと思う。
家を捨て諸国を旅をしてきただけあって、その考え方は現代でもまかり通るだろう。共鳴出来るところも多々ある。
ヨン、あなたと同じ武士(ムサ)だからかしら。
この人がいてくれて、随分と救われてる、わたし。
何度かまじめに俺と生きてくれないかと、ガンウはウンスを口説いた。けれど、帰ってくる答えはいつも同じ。
『パートナーが…あの人が待ってるんです。
わたしが戻る事を信じて。
きっと石像みたいに、あの場所に座って…』
ウンスの、一分たりとも疑いのない眼差しはまぶしいくらいに潔い。
何をどう騒ごうと、この人の心は変わらないのだと、ガンウは三度目にして、あきらめようと心を決めたのだが…
『ガンウさん、あなたは一人でも生きてゆける人よ。』
ウンスのその一言で気づいてしまった。
どれほどこの人に惹かれているのか…
「戻ったのね。無事でよかった。
外はどうでした?
やっぱり兵士達がウロウロ? 」
「相変わらずですね。
川沿いの村人達はほとんどが連れて行かれた後だった。
ったく、くそったれめ!」
時々びっくりするほど似てる…
ヨン、あなたもきっと同じリアクションをするわね。
ガンウはとある商団と組み、行き場のない人々を保護して歩いている。
人数が集まればその一行に紛れ、船が待つ場所まで陸路を行く。
希望するものがいればそれに乗り、天竺(=インダス川流域)へと向う予定だ。
…だが、最近は蒙古の奴らに先を越されてばかりだと。
「まさか、ここにもきたんじゃ…」
首を横に振るウンスを眺め、ほーっという安堵の息を吐く。
「この木を見て、ある事を思い出しちゃって。
それよりも、ここでも育ちそうな作物って何かしらね。 」
この人がこうして話題をそらすのは、云いたくないということ。
これ以上踏み込まないでくれってことだ…
「天山(=天山ウイグル王国 シルクロードの中継点として栄える)からの帰りに通った村では、米に似たものを栽培していましたが…あとは豆類か。だけど… 」
なぜそんなことをたずねるのかと、顔をのぞきこんだ。
「ホン家の蓄えだって限りがあるし、それが尽きる前に村の人たちが少しでもちゃんと暮らせる方法が見つかればね…
まあ、ここが兵士達に見つからないって云う前提だけどさ。」
ウンスは肩をすくめて見せる。
全てはそこに尽きた。
一部の蒙古兵が赤い髪の女を捜しているという話しを聞き込んだばかり。
この人のことだ…間違いなく。
他の男に絶対の想いを寄せる女。
なのに、護らなければという強い想いがガンウの胸にこみ上げてきた。
至正十六年 改め 恭愍五年 春の終わり…チェ・ヨン
「イムジャっ!」
夢を見た。
息が苦しくなるような、そんな夢だった。
…天門へ入ろうとするウンスを誰かが止めようとしている。
なんて夢だ…
夜明けまでにはまだ大夫間があった。
それでもチェ・ヨンは手早に支度を済ませると、欅の場所へと向かう。
心にある想いはたったひとつ。
ウンス、どうか無事でいてくれ…
続く
立夏(4月節気)…二十四節気の一つ。立夏を迎えて夏の季節が始るとした。太陰太陽暦の四月節 (4月前半) のことで,太陽の黄経が 45°に達した日 (太陽暦の5月5日か6日) に始り小満 (太陽の黄経が 60°,5月 21日か 22日) の前日までの約 15日間である
コトバンク
https://kotobank.jp/word/立夏-148929
シャクナゲ
毒が全木・葉に含まれ、嘔吐、下痢、痙攣、呼吸麻痺、呼吸困難などの症状を引き起こす
Sakiyomi trivia.com
http://先読みトリビア.com/2015/0217/syakungage/
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20151216/19/hongkong-jack/da/0f/j/o0424028313513420700.jpg?caw=800)
その板でのコラボ企画第二弾になります
第一弾
「つれづれSS」
soraさん「神医チェ・ヨン」(連載終了)
第三弾
「memories of rain」
りえさん「水明の縁」(連載終了)
こちら不定期という名の下に、更新が滞り…_(._.)_
三十四話目…ヨンとウンスはそれぞれの局面を迎えております
登場人物の人の名前とか忘れちゃったよーという方、こちら からどうぞ!
~それでは話しの始まり~
百年前 立夏より少し前の頃…ウンス
三方を岩山に囲まれたこの村にも、間もなく夏が訪れようとしている。
わずかばかりの田畑では作物が青い芽を伸ばし、岩場近くに咲くシャクナゲは今が見頃といっていい。
ウンスはその花を長いこと見つめている。
典医寺にショック状態の患者が運び込まれた事があった。
『石南葉(せきなんよう)は強壮、鎮痛効果をもたらしますが、同じ漢字を使う石南花(シャクナゲ)は、その木や葉に毒性を有し、誤って服用すれば呼吸困難を引き起こしてしまう。
…体力のないものは死に至るでしょう。』
患者は、”石南花の葉”を”石南葉”と間違えて服用したのだとチャン・ビンがそう語っていた事を思い出す。
花が咲いて気がついた。
これの毒、だったのね。
キムのおじいちゃんも、ホンのおばあちゃんも…
村が生き残るためだと、ハニはそういった。
因習とはそういうものだと。
だがウンスは、はたしてそうなのだろうかという疑問を捨て切れずにいる。
罪人でもない人の生き死にを、ただ弱者だからという理由で決めていいもの?
…ヨン、あなたならどう考える?
「どうされたんです?
先ほどから思い詰めた顔をされてる。」
いつの間にか、ガンウが隣にいた。
ウンスはこの男のことを、伸びやかな人だと思う。
家を捨て諸国を旅をしてきただけあって、その考え方は現代でもまかり通るだろう。共鳴出来るところも多々ある。
ヨン、あなたと同じ武士(ムサ)だからかしら。
この人がいてくれて、随分と救われてる、わたし。
何度かまじめに俺と生きてくれないかと、ガンウはウンスを口説いた。けれど、帰ってくる答えはいつも同じ。
『パートナーが…あの人が待ってるんです。
わたしが戻る事を信じて。
きっと石像みたいに、あの場所に座って…』
ウンスの、一分たりとも疑いのない眼差しはまぶしいくらいに潔い。
何をどう騒ごうと、この人の心は変わらないのだと、ガンウは三度目にして、あきらめようと心を決めたのだが…
『ガンウさん、あなたは一人でも生きてゆける人よ。』
ウンスのその一言で気づいてしまった。
どれほどこの人に惹かれているのか…
「戻ったのね。無事でよかった。
外はどうでした?
やっぱり兵士達がウロウロ? 」
「相変わらずですね。
川沿いの村人達はほとんどが連れて行かれた後だった。
ったく、くそったれめ!」
時々びっくりするほど似てる…
ヨン、あなたもきっと同じリアクションをするわね。
ガンウはとある商団と組み、行き場のない人々を保護して歩いている。
人数が集まればその一行に紛れ、船が待つ場所まで陸路を行く。
希望するものがいればそれに乗り、天竺(=インダス川流域)へと向う予定だ。
…だが、最近は蒙古の奴らに先を越されてばかりだと。
「まさか、ここにもきたんじゃ…」
首を横に振るウンスを眺め、ほーっという安堵の息を吐く。
「この木を見て、ある事を思い出しちゃって。
それよりも、ここでも育ちそうな作物って何かしらね。 」
この人がこうして話題をそらすのは、云いたくないということ。
これ以上踏み込まないでくれってことだ…
「天山(=天山ウイグル王国 シルクロードの中継点として栄える)からの帰りに通った村では、米に似たものを栽培していましたが…あとは豆類か。だけど… 」
なぜそんなことをたずねるのかと、顔をのぞきこんだ。
「ホン家の蓄えだって限りがあるし、それが尽きる前に村の人たちが少しでもちゃんと暮らせる方法が見つかればね…
まあ、ここが兵士達に見つからないって云う前提だけどさ。」
ウンスは肩をすくめて見せる。
全てはそこに尽きた。
一部の蒙古兵が赤い髪の女を捜しているという話しを聞き込んだばかり。
この人のことだ…間違いなく。
他の男に絶対の想いを寄せる女。
なのに、護らなければという強い想いがガンウの胸にこみ上げてきた。
至正十六年 改め 恭愍五年 春の終わり…チェ・ヨン
「イムジャっ!」
夢を見た。
息が苦しくなるような、そんな夢だった。
…天門へ入ろうとするウンスを誰かが止めようとしている。
なんて夢だ…
夜明けまでにはまだ大夫間があった。
それでもチェ・ヨンは手早に支度を済ませると、欅の場所へと向かう。
心にある想いはたったひとつ。
ウンス、どうか無事でいてくれ…
続く
立夏(4月節気)…二十四節気の一つ。立夏を迎えて夏の季節が始るとした。太陰太陽暦の四月節 (4月前半) のことで,太陽の黄経が 45°に達した日 (太陽暦の5月5日か6日) に始り小満 (太陽の黄経が 60°,5月 21日か 22日) の前日までの約 15日間である
コトバンク
https://kotobank.jp/word/立夏-148929
シャクナゲ
毒が全木・葉に含まれ、嘔吐、下痢、痙攣、呼吸麻痺、呼吸困難などの症状を引き起こす
Sakiyomi trivia.com
http://先読みトリビア.com/2015/0217/syakungage/
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20151216/19/hongkong-jack/da/0f/j/o0424028313513420700.jpg?caw=800)