今回はテマン登場

一体誰に向かってしゃべらされているのか…

 

  

そっ そんなせかさないでくださいよう…

オイラしゃべろうとすればするほど どっどもっちまうの、ご存じでしょう?

 

でも…どこから話したらいいのかな…

え? はっ 早く言えって?

 

とっ とにかく、医仙様がついに戻られたんです!!!

もう知ってるって…そう言われても

そこからじゃないと おっ オイラ…

(ほら…どもってる)

 

テホグンはここ何年かの間、戦況が落ち着くと天門のすぐ近くにある大きな樹の下で医仙様をお待ちになっていたんだ

ただじっと、座って、遠くを見つめて…

息をしているのか恐くなるくらいじっとして…

 

最初のうちは何をしていらっしゃるのかが、オイラにはよくわからなくて…

でも一日経ち、二日経ちってそうしてるうちに、目をつむると医仙様と楽しそうに話をするテホグンが浮かんできて…

目を開ければ、テホグンは少しだけ微笑んでおられた…

まるでそこに医仙様がいらっしゃるかのように…

 

それからというもの、夜の間は樹の上からテホグンの護衛につくこと、必要な分のメシを運ぶこと、この二つがオイラの仕事に加わったんです

 

テホグンがあの場所に陣取ってから二日目のこと

朝早く、オイラはいつものように兵営に顔を出したんです(前みたいにこっちでも連絡係を務めているんで…)

朝の軍義はテホグンがいないこともあってさっさと終わったから、ウダルチの面々とメシにゆこうっていう話になって、チュモがササッとみんなに声かけをして繰り出すことになって…

あいつは人望があるんです

ただ昔から…トクマン並に間が悪くて…その日もテジャンまでついてくることになっちまったんですよ

 

メシを食い終わるとテジャンがテホグンの居場所はどこかって…

だからいつもの場所だって話してる時…

オイラ背中に何かを感じたんです…

懐かしくて、あったかい…そんな感じの何か

 

振り返るとその人はもういなかった

でもわかったんだ…お戻りになったんだって

訳なんてないですよ、ただわかったんですってば

 

それからがめちゃくちゃ大変で…

しばらく前からそのときが来たらこうしろとテホグンから言いつかっていることを、大急ぎでやりとげなくちゃならなかった

 

最初に…

あの樹のところへ向かったんです

先走らずにまずは確認しろっ て、そうテホグンからいわれてたから

うん……それでやっぱり…間違いなく医仙様だった!

 

オイラ…すぐにでも駆け寄りたいのを懸命に堪えて、近くにいるはずのスリバンを探したんです そうしてテホグンから預かっていた二通の文を渡したんだ

チュウの奴、きっと寝ずに走ったんだと思う

 

次は…

大急ぎで食料を調達して例の庵に行って大掃除です

部屋の空気を入れ換えながら湯を沸かして厨に種火を残し、布で覆っていた家具を磨きましたよ

 

ちょうどそれらが終わった頃、チュホンの蹄とうれしそうに鼻を鳴らすのが聞こえてきた…

ほらさ、天界語でいえば……ないすたいみんぐ?!

 

それからどうしたのかって?

お二人のことを詳しく話せって言われても…

オイラ近くに寄れなかったから…

だけどすっごく仲よさそうに見えた

医仙様は前よりお綺麗で…

テホグンが用意されたお召し物がよく映えて、まるで天女みたいだった

 

え? 供寝?

…だから近くにはいなかったって言ってるじゃないですか

どうせオイラはまだまだガキですよ

 

そんなことより…みんながテホグンはいつものように樹の袂ですごされてる、そう思ってる残りの二日間が…結構忙しかったんですッ

 

昼間は寺と船着き場を行ったり来たりで…日が暮れてからは兵営に戻ってウダルチと顔を合わせないようにしてさ、その日に届いた書状を覚えるんだ(これは前からやってたことだけど…)

 

なんで寺に行ってたのかって?

そりゃあ医仙様を無事開京へとお連れするための策ですよ

テホグンは寺の高僧を自らがお守りしながら都まで道行くおつもりだったんだ

その一行に医仙様を加えるっていう算段で…チョナに早馬で書状をお送りしてたんです

 

それをトクマンの奴が…

 

☆☆☆

 

ヘッ ヘーックション ハーックション…

誰かがオレの噂してる?

んん? 誰かな…

ムガクシの中の誰か?

それとも…妓楼の?

 

いや…少し寒気がするから…

無茶ぶりしてきたチュモ?

いや、アイツはまじめだからそんなことは…

もしかして…テマンの奴?

 

まずい! ゾクゾクしてきた

熱も出てきた気がする…

 

そういえば…あれ以来毎晩チェ尚宮に呼ばれてろくに寝られてないし…

 

テホグンがお戻りになるまでには何としても治さなきゃ!

 

 

テマンが気付いていて、トクマンが気付かないこと

トクマンが知っていて、テマンが知らないこと

 

いよいよ動き出します…