一連のお話も一区切りしました
これもメッセージやコメやペタやいいね!で参加してくださったみなさまのおかげです!

さてさて、お次はかけら拾いです
ヨンとキ・チョルのムリクリ対決のあと、ウンスがヨンを治療して
ヨンがウンスに「泣かないで」と…
そして次のシーンは…空が明るい…っていうか朝???
兎にも角にも夜じゃない…
え”-
一晩一緒だったのね

ということで…

最後の部分にちょっとだけ書き加えしてます




【ウンス】

あなたが死ぬかも知れない
そう思った途端いても立ってもいられなくなった

『甥は死に場所を探している』
静かにそう語ったチェ尚宮の言葉が頭から離れない

あの人を逝かせない
戻らなくては
止めなくては

お願い…
勝手に、一人で逝かないで
わたしを、一人にしないで

自分の中で押さえつけていた想いがどうしようもなくあふれ出す
息をするのも苦しくらいに…

深い帳の中、わたしは必死で馬を走らせる
チェ・ヨン…
あなたを止めるために


【チェ・ヨン】

イムジャ…
正気の沙汰じゃない

俺はそう叫びたかった

この細身体の女人が自らの首に短刀を突きつけ啖呵を切った
こともあろうかキ・チョル相手に、だ…

俺を助けるために…貴女は…


【ウンス】

凍ってしまいそうなほど冷たいあなたの右手
両手で慈しむように温め、ふーっと息を吹きかける

恐くて、悲しくて、恨めしくて、そしてうれしくて
いろんな感情が一時に押し寄せて
わたしは生まれて初めて声を殺して泣いていた

髪を耳にかけようとするあなたの左手が少し頬に触れる

とても温かい指先…

あなたに泣いているのをみられちゃった…

交わした武士の約束だから護ってくれるのか
わたしのことを大事に思い護ってくれるのか
今はそんなことどっちだってかまわない
わたし…あなたを一人にはできないわ

「もう無駄に命はかけません
二度と」

そうよ、二度とこんなことしたら許さないから…

「だから…」

だから?
思わずあなたを見上げると…

「…泣かないで」
黒くて深い瞳の持ち主がやさしくそう告げる

わたしは…あなたの目をみてゆっくりとうなずいた


【チェ・ヨン】

刀傷を負った左手には布がまかれ、氷功でやられた右手はこの方の両手で包みこまれている

イムジャ…
貴女の手はとても温かい
貴女の息が少しこそばゆい

先ほどまでは、俺の命の一つや二つこの方を護るためなら惜しくない…
そう思っていたはず

今はどうだ…
今は…このまま、いましばらく…
イムジャ…あなたに許されるなら…

華の香りがする…
甘くて、爽やかで、胸が締め付けられそうだ

カサッ
コソッ

テマン…戻ってきたのか…
トルベもか
…チッ!
いいか、それ以上近づくな
ここから離れろ

「イムジャ
もう大丈夫です
だいぶ感覚がもどりました…
その姿勢では貴女が…その…お辛そうで…」

「ふーっ 辛くなんかないってば ふーっ

うん、ふーっ だいぶ暖かくなってきたみたい? ふーっ

ねえ、わたしズーッと馬を走らせてきの…
ちょっと疲れちゃったかな…」


【ウンス】

少しだけ体温を感じるようになった大きな手
あと少しだけぬくもりを感じていたいな…

ウンス…
もう認めちゃう?
好きなのよ…ね
どうしようもないくらい
この人のことが
命を賭けてでも護りたいほど…

この人はわたしをソウルから攫ってきた人なのに…
お帰しするって言っておきながらここに留め置いた人なのに…
最初はストックホルム症候群かと思ったりしてさ…

チェ・ヨン
辛そうにわたしを見つめるその瞳に絆されちゃったのかな

寄りかかりたいな、あなたに
もたれたいの、あなたの胸に


【チェ・ヨン】

「だから…あの…その……かっ 貸してれくない? あなたの肩」

この方は…いきなり俺の肩にもたれかかったのだ…
それも右手を俺の左胸にあてて…だ

これではまるで…情人の戯れみたいだ…

「チェ・ヨンさん
こうしているとあなたの鼓動が聞こえてくる…
ああ、この人は生きているんだって…安心するの
この音が聞こえる限り…」

声が震えている…
泣いていらっしゃるのか…?
どうしたらいい…
俺の鼓動が聞きたいと?

俺はこの方が苦しくないよう…膝の上へと横抱きにした

「ごめんなさい…
もう少しだけ…この音…聞いていてもいい?…」

「…はい…このままで…」

貴女の背中をゆっくりと撫でる

「イムジャ…
いつの頃からか…
気がつけばあなたの姿を追っておりました
気配を感じれば顔が見たくなり
顔を見れば声を聞きたいと
声を聞けば…言葉を紡ぐ唇が愛おしく…

俺は…あなたといると無くしたはずの欲が出るのです

イムジャ…俺は…」

この人の瞳が気になって俯けば…
キラキラと輝くそれは既に閉じられて…
赤い小さな唇からは…

小さく息が……
「スー スー」

んん?
「スー スー」

もしかして…寝てる…のか…?
「スー スー」

「イムジャ
ユ・ウンス
おい!起きてはくれぬのですか?」
「スー スー」

必死で馬を走らせ、啖呵を切り、
あげくには俺の治療までさせてしまったのだ…

愛おしさがこみ上げて…少しだけ開いた唇に自分のそれをそっと重ねる…

「スー スー」

イムジャ…貴女はよほど疲れていたのですね…
(大きな吐息一つ)




そうやって二人だけ?の夜は暮れてゆき…
チェ・ヨンはウンスを膝にのせたまま 朝まで一睡もできませんでしたとさ







「なあ、どうする…よ」
「こっこっこ声はかけないほうが…」
「だよな…俺らまだ命は惜しいもんな…」