ウンスはヨンの忠告にでてきた侍院に隠れることに…
ハニを筆頭に、ウンスを蒙古の将軍イェグから護るため…
そして冬将軍がウンス達に加勢します

嵐が止んだ朝、侍医院にイェグが訪れますが…




「もう一度、ゆっくりと話すのだ…
ウンス殿が消えた…と」

イェグ将軍にとって、寝耳に水とはこのこと…

ハニの渾身の芝居は続く…うまい具合に側でウンジョも大声を上げて泣き出した
「………昼過ぎから…お姿が…見当たらず…
暗くなってまいったので、心配になり…私は…ヨウルと共に坂をずっと下って…崖の方向へとまいりました……」

「…泣いていてはわからぬ…
他に詳細を知るものはおらぬか?
お前は? お前はどうなのだ??」

年かさの医員が前に出て話し始めた

「陽が落ちても戻らぬウンスさまを、手分けして探すことに致しました
雪が積もれば、痕跡も隠してしまうでしょう…
そしてヨウルがウンスさまの外套を見つけたのです
そしてそれを掴むと自ら…」
別の医員が引き継ぐ…
「飛んだのです…
落ちたと言うより…
あの者はウンスさまに心酔しておりました
何か痕跡を見つけて…後を追ったのかも…
しかし、雪が一段と激しくなり…それ以上は…
そして昨日までの吹雪…二人を探そうにも…難しく…
将軍にお知らせしようにもできませなんだ…」

ギリギリという歯ぎしりの音が聞こえてくる
髭におおわれた顔色がどす黒く染まるのがわかるくらいにこの男は怒っている…
「そのヨウルとやらが飛んだという場所に案内せよ
すぐにだ!」

☆☆☆

イェグは背の丈以上に積もった雪のせいで崖下に降りることもかなわず、右往左往する

この雪のせいで、何もかもがうまくゆかなくなった…

昨夜、こちらに向かっているはずの僧侶から鷹文が届いたのだ
積雪で足止めをくらっている旨、妻達が不満を言い出して収拾がつかなくなっている旨、指示を仰ぐといった内容だ

『わたしの世界じゃあ男と女の仲はね、互いに恋慕わない限りどうにかなるモンじゃないのよ』

ウンスの切った啖呵…

あの人に、好いた男がいることぐらいすぐにわかった
いつも同じ方向を見つめ、しばらくすると綺麗な瞳を輝かせて、まるでそこにその相手がいるかのように微笑むのだ…
顔をいつも同じだけ上に向けて…
きっとその先には男の瞳があるのだろう

遠征からの帰り際…俺はあの人を見たのだ…
大木の元に一人佇み、まるで誰かに寄り添うようにしておった…
声をかけたかった
腕を取り、こちらを見よ、そう言いたかった…
だが…できなかったのだ…

その男となぜ離ればなれになっているのか…
それがわからない…
わかっていれば、慰めることも…できただろう
わかっていれば、忘れろと強引に手を引くことも…できたやもしれぬ

ウンス殿、…あなたは死んでなどいないのだろう?
あの眼差しで見つめる相手を残して、死を選ぶはずがないのだ…

俺は本来計算高い男

今は…このままあなたを求めたところで百害あって一利なし…
さらに南下した場所に本陣を構えろとの王命まで賜っている…

また戦か…

…雪が解け、時期が来たら、もう一度この地へまいろうではないか…
もう一度だけ、あなたを探すために…

☆☆☆

「イェグが本陣を移すため、昨日ホンの家を出立しました
若い兵二十数名を残しておりますが、集落も滅び、立ち向かうものたちもおらぬという判断で、かなり手薄になったといっていい状態です」

ハニはアジュンマから報告を聞く

『そろそろ本格的に策を講ずるべき時が来たのね…』

蒙古襲撃後に集まった男衆は百名に満たない
今侍医院で医員に紛れさせてはいるが、春になるまでの間にどの程度戦えるようになるのか…
武器だけはかなりの量を隠してある…

『まずはホン家を取り戻すわ…』

そのために…既に一人の武人を招いてあった…