たんかを切ったウンスに将軍イェグは…
ウンスはこの地で追い詰められてゆきます

どうすれば打開できるのか…
キーワードは…やっぱりヨン!



『よろしいですね?

さあ、ウンジョをここに』

イェグが入り口の兵士に顎をあげてみせると、すぐに猿ぐつわをはめられたウンジョが連れられてくる

「ウンジョ…」そう言って小さなウンジョを抱きしめるハニ…

「取り決めを守ってくれてありがとうイェグ将軍」

テントを出て行こうとするウンスの腕をグッと引き寄せると、将軍はウンスにだけ聞こえるような小さな声で囁く

「ウンス殿…今回はあなたの顔を立てて引き下がろう
首を切られた件、あなたの細腕にやられたのではないとはっきりした
俺の体面も保てたしな…
だが、俺はあなたを連れて戻るつもりだ
モンゴルの草原にこそあなたのその姿は似合うはず

できうる限り無理強いはするまい
…遠からずあなたは俺の寝床を温めるようになるのだからな」

ウンスはつかまれた腕をふりほどくと将軍をにらみつける

「わたしの世界じゃあ男と女の仲はね、互いに恋慕わない限りどうにかなるモンじゃないのよ
わたしが欲しいなら贈り物以外でわたしの心をつかむことね
添い寝の相手が欲しいなら、悪いけど他を当たって」

☆☆☆

寒空の下、ウンスとハニ(ウンジョはハニに負ぶさり眠っている)が白い息を吐きながら侍医院へと坂を登っている

転げるようにこの坂を下りたのはついさっきのこと
そのときの心のざわめきと、今の重たさ…
ウンスは思いっきり泣きたくなった

「ウンス殿…あの…大丈夫でしょうか…
最後にイェグ将軍はあなたに何を言ってきたのですか?

…その…だいたいは想像できますけど…

ねえ、逃げましょう
逃げ切れますとも…」

「ハニさん
とにかくウンジョを連れて帰って、何か食べさせてあげましょう
わたしもお腹が空いたわ
考えるのはそれから!」

侍医院の門をくぐり、ハニの部屋へと向かう
部屋の前にはホン家でアジュンマをしていた女が待っていた

「この者は、モンゴルの言葉がわかるだけではなく、習慣などに関してもよく存じておりますから…屋敷においておけば何かと役に立つのです

何か動きがあったのか?」

「ハニさま、屋敷が正式に蒙古の支配下にあるという達しが私どもに参りました。最初の政はイェグ将軍の婚礼の儀で、つい先ほど大王からの許可がおりた、とのことでした
放牧の地より、僧と十人の妻が向かうので、人員が揃ったなら、すぐ式を挙げると…」

ハニは「ヒッ」という声をのみ込むように口元を手で押さえる
たまらなくなってウンスが口を挟んでくる

「その相手は?
もしかして…わたし…
その…到着までどれくらいの時間があるの?」

アジュンマはお相手に関しては曼珠沙華のお方と呼ばれている方で、到着まではおそらく後一月くらいではないかと、そう答えた

「一ヶ月…それしかないの…」

☆☆☆

一人自分の部屋に戻ったウンスの顔色は真っ青に変わっていた

『イェグ将軍…もしかしたらキ・チョルよりも恐ろしい相手なのかもしれない…
ヨンの元に戻るまでの、残りの252日、この危機をどうやって乗り越えたらいいの…』

今、ウンスは土俵の真っ只中に一人立たされたも同然

『ヨンア…何か考えなくちゃ…』

「イムジャ…イムジャ
俺の声が聞こえますか?

小刀をどんな時も放しちゃダメだ

水車小屋のもう少し先に寺があります
尋ねてみて…

俺を信じて…」

『そう、あなたはいつもわたしを護ってくれる』
「ヨンア…信じてるわ…」


その晩ウンスはヨンに抱かれる甘く悲しい夢を見た…