ショートストーリー  
「彼のメール」    作 紅粉チコ


登録した筈のサイトから返信で送られてきた
パスワードを探しているうちに、
何年か前の3月に彼から貰ったメールがふいに目に飛び込んだ。

正しくは彼では無く恋人にはなれなかった彼だ。
人生で一度くらいは互いに惹かれあいつつも
どうしても結ばれない相手がいるのもそう珍しくない。

7歳年下のその彼は見た目も内面も少し冷淡に感じていた。
でもこのメールを貰った頃から彼の人としての温もりを
少しづつ感じ始めていた。
互いにそう思えば思うほど、二人には解決しえない距離がでてきた。

簡単に会えない間柄の二人が交わしたメールの内容はこうだった。


「人生やさしい人でありたいけどやさしさって難しい」

そんな私の投げかけに彼からの返事は

「人生考えても相手が生き物である以上考えは十色あるから難しい
まずはいろんな人の考え方を聞くのが先決と考える
人を理解することがやさしさの第一歩だと考えることができる」


私の方が彼よりも7歳上で大人でいた気になってた自分、
しかし大人だったのは彼の方だったのでは?
冷淡だと感じていたのは愛情を一人占め出来なかった事への
単なる不満だったのか?


「相談したくなったらいつでもメールくれ」


そんな一文で終わっていた彼からのメール。
ぶっきらぼうだけど優しさが含まれていた。
しかし私が彼に送ったメールは大人ぶって
云ったこんな一文だと私は思い出した。


「これが最後のメールです」



                                    終わり