『曇りのち晴れ』 紅粉チコ (B面)


探し物をしている時は決まって見つからない。
大好きな香港映画で流れていた『California Dreamin'』
確か持っていた筈のレコードが見つからないが、
無いと判れば無性に聞きたくなるのが人間の習性。
散歩のつもりでCDショップへと足を運んだ。

エスカレーターを昇る度に思い出す光景。
二人はよく仕事帰りここで待ち合わせた。
猫背になって試聴する彼の後ろ姿を、
遠くからほんの少しだけ見るのが好きだった。
すぐ側まで近付いても全く気付かない彼の、
お揃いで持っていたウォレットチェーンを
勢い良く引っ張って驚かすのがいつものパターンだった。
ポケットから落ちたセブンスターを拾いながら、
左の口角を上げて笑う顔が綺麗だった。

彼は今、何をしているのだろう。
もうどのくらい、そんな思いを抱きながら過ごしたのか。
曖昧な経緯で別れた当時の心情の説明が、
2年経ってやっと出来る。
私を思い出す事も無く幸せに暮らしていてくれたらと、
願う思いは本心だろうか?
たまに思い出す程度の女であるなら、
忘れようにも忘れられない女で居たいのが本心だろう。

しかし長らく訪れていなかったこの場所へやってきたのも
何かのきっかけだったのかも知れない。
偶然やきっかけは本能で自分が作っていくもの、
これはやり直しでも、懐かしさに浸るのでも無い。
新たな出会いとして私は彼の部屋へと電話をかけた。