これは2019年5月20日に投稿した記事の"りばいばる"です。
オランダの現地小学校に通う娘達ですが、今年10歳になる長女はグループ5(日本の3年生にあたる)に所属しており、その授業の一環にブックべスプレーキングと呼ばれる、読書感想文の様なカリキュラムがあるのですが、その内容は、自分の選んだ一冊の本の、作者や内容についてをまとめて、クラスのみんなの前で当然オランダ語でプレゼンするという、移民にとってはかなりハードルの高い課題なのです。
このプレゼンですが、年明けから始まり、毎週水曜日に1人ずつ発表していくそうで、昨年末に教室内に貼り出されたスケジュール表の希望のプレゼン日に、名前と選んだ本のタイトルを早い者順で書き込むシステムだったので、準備時間の確保の為、なるべく後ろの方にしなさいと急いで学年末頃を確保したのですが、あっと言う間にいよいよ長女の順番が迫って来たわけです。
初めは、音楽が好きという理由で、長女が町の図書館で見つけたモーツァルトの自伝をチョイスし、時々僕や妻が手伝いながら、それこそ一行ずつオランダ語を日本語に翻訳して話の流れを把握し、一旦日本語でプレゼン内容を構成し、それをオランダ語に直すという作業を少しずつ進めていたのですが、分からないオランダ語を一文章ずつ解読していくのに膨大な時間と労力がかかってしまい、先の見えない道のりに長女も我々も戦意喪失してしまっていました。
そんな中、学校の三者面談の時期が来て、長女の担任の先生にブックべスプレーキングが難し過ぎると伝えると、担任の先生は「だったら日本のお話を選べばいいのよ!長女にしか出来ないことなんだから!」と提案してくれました。
日本語からスタートすればオランダ語を一旦日本語に訳す手間が省けるのと、クラスに日本人は長女1人なので、きっと誰も知らない日本の物語をクラスメイトに紹介出来て一石二鳥です。
早速日本の代表的な物語を選ぼうと僕と妻と長女で会議した結果、日本最古の作品と言われ、日本人なら知らない人はいない、ザ・ジャパニーズプリンセス・かぐや姫、つまり竹取物語に決定しました。
以前ドライバーサービスをよくご利用頂いていた駐在さん一家の娘さんから譲ってもらった「10歳までに読みたい名作」シリーズの竹取物語をネットで注文し、お義母さんにオランダまで送ってもらい、早速長女は読み始めました。
丁度良い文量と現代っぽいキャラクターの挿し絵に、漢字にフリガナも振ってあって、長女は一気に読み終わったのですが、先日ブックべスプレーキングの為に、物語のあらすじを一緒にまとめていたところ、徐ろに長女が
「漢字を読めるようになりたいから日本の学校に行きたい!」
と言い出したではありませんか!!
かつて自分が小学生の頃、この勉強がしたい!なんて思ったことがあったでしょうか?
いつの日か勉強はなるべく成績の良い学校に入る為の辛い試練という刷り込みに支配され、我慢しながら学生時代を過ごした身としては、全く想定外の角度からではありましたが、この長女の一言だけでもオランダへ来て良かったと思える衝撃の一言でした。
我が家の考えとしては、平日現地校で四苦八苦しながら授業を受けているのに、土曜日まで学校へ行かせるのは酷かもしれないということと、日本の教育をある意味では捨て、オランダ移住したのに、海外で日本語補習校に通うことは矛盾している様で勝手におこがましくも感じていたので(あくまで我が家の考え方です)、日本語補習校に通わせることは全く想定していなかったのですが、我が子が自ら学びたいと言い出したのなら話は別です。
本人が望まないのに通わせたところで、勉強させられモードになってしまい、あまり意味がない様に思っていたのですが、自ら勉強したいと意欲を示したのなら願ったり叶ったり。
喜んでその環境を用意してあげようと素直に受け取り、一気に日本語補習校へ通わせるべく、速攻体験入学を申し込んだのでした。
つづく・・・
それから一気に日本語補習校ライフがスタートし、早2年半近く経ちました。
長女は自分が言い出した通り、日本語学習へは意欲的で、漢字が読めるようになったり書けるようになったりするのが単純に楽しいようです。
日本では息を吸うように当たり前に、その年齢が来たら、同じ学区内に住む同い年の子達が一斉に決められた小学校へ通い、あまり疑問を抱く暇もなく、中学3年生までエスカレーターで上がるシステムに対し、海外移住することで、日本人としての母国語に特別な感情や想いが芽生えるというこの環境こそ、海外移住の恩恵だなと感じるようになりました。