2015年3月イベント
王子様のプロポーズ Love Tiara
『王子と私のFirst Kiss』
グレン√
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ステージ1
【花言葉は愛と尊敬】
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~~オリエンスの街並み~~
シャルルからオリエンスに戻って街を散策していると、甘い香りが漂ってきた。
(この香りは……イチゴ?ジャムでも作ってるのかな?)
香りに引き寄せられて近くのスイーツショップを覗いてみると、
店中にはイチゴのスイーツがたくさん陳列されていた。
(わぁ、美味しそう!)
(イチゴといえば、グレンくんに告白された時のことを思い出しちゃうな……)
私は先日、グレン王子に呼び出されて中庭へ行った時のことを思い返す……
~~アトリエ~~
……いつものようにアトリエでデザイン画を描いていると、
♪♪♪~
携帯にメールが届いた。
送信者は、グレン王子。
『今、中庭に出てこられる?』
(今からって……何の用があるんだろう?)
最近グレン王子との距離が縮まるのを感じていたので、急な呼び出しに自然に胸が高鳴ってしまう。
「早く行かなくちゃ……!」
私は急いで中庭へ向かった。
~~中庭~~
中庭へ行くと、グレン王子は白い小さな花が咲き乱れる花壇の前にいた。
グレン
「……来たか」
花壇の花を見ていたグレン王子が、顔を上げてふっと笑みを浮かべる。
「お待たせ、グレンくん!これ…イチゴの花?」
グレン
「ああ。……アンタにあげようと思って」
グレン王子がイチゴの花の小さな鉢を差し出した。
「ありがとう。……でも、急にどうしたの?」
鉢を受け取って何気なく問いかけると、なぜかグレン王子は、顔をそっと逸らせ
グレン
「……花言葉を調べればわかる」
(花言葉?)
(グレンくんがそう言うなら……)
「わかった、調べてみるね。お花、ありがとう。……じゃあね」
アトリエに戻ろうとすると、グレン王子が素早く私の手を取った。
グレン
「いや……やっぱり待てないな」
(え……?)
グレン
「イチゴの花言葉は"愛と尊敬"だ。
これ…アンタへの俺の気持ち」
「グレンくん……」
グレン
「アンタのこと……もっと知りたい」
私は胸がドキッとするのを感じながら、グレン王子を見つめた。
(愛と尊敬……。私のグレンくんへの気持ちと一緒だ)
グレン
「俺の気持ち、受け入れられるかどうか……答えて」
(そんなの、決まってる)
「はい。……だって」
私も同じ気持ちだと答えようとした時、言葉を遮るようにしてグレン王子が私の体を抱き締めた。
瞬く間に私の胸が早鐘を打ち始める。
グレン
「……」
ふとグレン王子が、ゆっくりと顔を近づいてきた。
(え……もしかして、キス?)
緊張のあまり体を固くすると、グレン王子がハッとしたように顔を離した。
グレン
「……ごめん、急に」
「あ……ううん、大丈夫……」
グレン
「じゃあ、今からアンタは俺の彼女……ってことでいいんだよな?」
グレン王子が、頬をほんのり桜色に染めながら私を見据える。
(……え?)
「う、うん……」
私は驚きと戸惑いが入り混じった気持ちで、小さく頷いた――。
~~オリエンスの街並み~~
(……グレンくんに告白されたなんて、未だに信じられないな。
そういえば私、あの時ちゃんと自分の気持ち伝えられたっけ……?)
中庭での出来事を思い返しながら、私は心の中で首を傾げる。
(それにしても、イチゴのスイーツ美味しそうだな……)
「……お土産に買って帰ろう」
~~オリエンス城~~
私はイチゴのスイーツをたくさん購入して、オリエンス城へ戻った。
アラン
「ひめ、すごくたくさん買ってきたな」
「色々見てたら、どれも食べたくなっちゃって……。お茶にしようか?」
アラン
「うん!」
ダイニングでアランくんと一緒にイチゴのスイーツを楽しんでいると、公務帰りのグレン王子とユウお兄ちゃんがやって来た。
グレン
「……どうしたんだ、そのスイーツ?」
ユウ
「随分とたくさんあるんだね」
アラン
「グレン兄ちゃんには、イチゴのショートケーキをとっておいたぞ。イチゴがでっかくて美味しそうだぞ!」
アランくんがニコニコしながらイチゴのショートケーキを差し出した。
グレン
「別に何でもいいのに……」
ユウ
「グレン様のお茶も淹れてまいりましょう」
グレン王子が加わって、三人でイチゴのスイーツを堪能する。
アラン
「どうだ?ショートケーキおいしいか?」
グレン
「まぁ、悪くはない」
アラン
「イチゴのババロアも美味いぞ。グレン兄ちゃんに一口やる!」
アランくんが差し出したイチゴのババロアを、グレン王子が一口食べる。
グレン
「……こっちも、悪くない」
(言葉は素っ気ないけど……何か嬉しそう。イチゴ、好きなのかな?)
アラン
「そういえばグレン兄ちゃん、今年はストロベリー収穫祭に行かないのか?」
アランくんの何気ない質問にグレン王子が顔をしかめた。
グレン
「そうか……今年もその季節がやってきたか」
ユウ
「ストロベリー収穫祭でしたら、来週参加の予定になってますよ」
グレン
「……来週?」
グレン王子はチラッとユウおにいちゃんを見てから、小さく息をついた。
「ストロベリー収穫祭って何?」
グレン
「オリエンスのイチゴの産地で開催されるフェスティバルだ」
ユウ
「ミスコンも開催されるんだけど、グレン様は毎年審査委員長をなさってるんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
(でも、これだけ嫌そうな顔をしてるってことは……)
「グレンくん……ストロベリー収穫祭に行きたくないの?」
グレン
「いや、行く。……公務だからな。
でもあのミスコンは正直苦手で……。ドレスも着こなし方とか、よくわかんねーし」
(なるほど、それで悩んでいるのか……)
アラン
「だったら、ひめがしんさいいんちょーをやるのはどうだ?)
「え……私がミスコンの審査委員長?」
私は驚いてアランくんを見つめた。
アラン
「ひめはデザイナーだから、ドレスのことはグレン兄ちゃんより詳しいぞ!
それに、たくさんのイチゴのスイーツが食べられるパーティーもあるんだ!」
(イチゴのスイーツは魅力的かもしれないけど……)
「でも私が公務について行くなんて……。さすがに無理じゃないかな?」
ところがグレン王子は、アランくんの言葉に小さく頷いた。
グレン
「……いいんじゃない?アンタ、一緒に来れば?」
「え……本当にいいの?」
ユウ
「さすがに審査委員長は無理だろうけど、審査員として参加することはできると思うよ」
(そうなんだ……)
イチゴのスイーツはもちろんのこと、ミスコン参加者の衣装を見てみたいというデザイナーの欲求がふつふつと湧いてくる。
「じゃあ、よろしくお願いします」
グレン
「……ああ」
ストロベリー収穫祭当日。
私はグレン王子とアランくんと一緒に収穫祭の会場へ向かった。
~~収穫祭会場~~
現地に到着すると、パーティー会場にはおいしし追うなイチゴのスイーツがたくさん準備されていた。
アラン
「ひめ! このイチゴのシュークリームがお薦めだぞ?」
アランくんが少し大きめのシュークリームを指差した。
早速アランくんと一緒にシュークリームを食べてみる。
「あ……イチゴが丸ごと入ってるんだね。すごく美味しいね」
アラン
「だろ?」
「これ、美味しいよ。グレンくんも食べてみたら?」
イチゴのシュークリームを乗せたお皿を差し出したが、グレン王子はチラッと見ただけで手に取らなかった。
グレン
「…いらない」
「どうして? お腹空いてないの?」
グレン
「……ガキみたいに、甘いもんに興奮したりしないから」
(え……?)
思わず私は、グレン王子をしげしげと見つめた。
(イチゴ、好きなのかと思ったけど違ったかな……?)
アラン
「ひめ、散歩に行くぞ!」
シュークリームを食べ終わったアランくんが、私の袖を引っ張った。
「でも、散歩に行ってる時間あるかな……?」
ユウ
「まだリハーサルには時間があるから、少しくらいなら大丈夫だよ」
「わかりました。グレンくんは?」
グレン
「ああ……じゃあ、主催者に挨拶してから追いかける。携帯に連絡するから先行ってて」
グレン王子が踵を返して歩いていくのを見送っていると、ユウお兄ちゃんが首をかしげた。
ユウ
「グレン様……甘いものはお好きなのに、どうしたんだろうな」
(……え?)
「そうなの……?」
ユウ
「うん。特にイチゴには目がないはずなんだけど……あまり食欲がないのかもしれないから、あとで控室に持っていくことにするよ」
ユウ
「アラン様のこと、よろしくね」
笑顔を向けたあと、会場のステージのほうへ戻るユウお兄ちゃんの背中を見つめながら、私はひそかにショックを受けていた。
(どうして……嘘ついたんだろう。私、グレンくんの恋人なのに何も知らないんだな……)
~~会場の近くの原っぱ~~
アランくんと散歩をしながら、会場外の原っぱまで来た。
「会場の外に、こんなところがあったんだ……気持ちがいいね」
アラン
「なぁ、ひめ! あっちの方が気になるぞ! 行ってみよう!」
アランくんが、広々とした緑地の先を指差した。
(あまり遠くまで行かなければ……まだ時間もあるし大丈夫かな)
グレン王子にメールで今いる場所を連絡し、アランくんに笑顔を返す。
「うん、いいよ。行ってみようか!」
ところが歩き始めてすぐに、グレン王子が私たちの元へやって来た。
グレン
「……散歩は終わりにして戻るぞ。もうすぐ開会式の準備が始まる」
「え? でもユウさんに言われた時間まで、まだ大分あるけど……」
グレン
「……とにかく行くぞ」
グレン王子が背中を向けて、さっさと歩き出した。
アラン
「変なグレン兄ちゃんだな……」
(グレンくん……どうしたんだろう?)
私たちは不思議に思いながらも、グレン王子のあとに続いた。
~~グレン王子控室~~
--美羽やアランと別々の控室に入ったグレンは、ドアを閉めるなり深いため息をついた。
グレン
「なにやってんだ、俺……」
そこにノックの音がしてユウが入ってくる。
ユウ
「会場ではあまりスイーツをお召し上がりになっていらっしゃらなかったので、こちらにお持ちしました」
グレン
「…別に、いい」
ユウ
「では、こちらに置いておきますので、気が向きましたらお召し上がりください」
テーブルにスイーツの盛り合わせを置いてユウが出て行く。
グレン
「……うまそ」
グレンはポツリとつぶやいた自分の言葉にハッとして、頭を横に振る。
グレン
「男が甘いもん好きだなんて、絶対ガキっぽいと思われるだろ……ただでさえ俺の方が好きなのに、これ以上がっかりさせられないよな……」
グレンは頭を抱えながら、更に深いため息をついた。
~~収穫祭会場~~
一度控室に入った私は、ベールピンクのミニスカートドレスに着替えてから会場へ向かった。
(このドレスなら、審査員としておかしくないよね……?)
ミスコンの出場者よりも華美にならず、ストロベリー収穫祭に合うようなフレッシュで元気な感じのドレスにしようと思い、このドレスを選んだのだ。
「あ……グレンくん」
グレン
「……!」
会場へ到着すると、グレン王子は私の姿を見るなり固まった。
「どうかな、このドレス……?」
グレン
「……スカート、短すぎるだろ」
グレン王子はそれだけ言うと、さっさと会場の奥の方へと行ってしまった。
(一生懸命、選んだのに……こういうドレス、あまり好きじゃないのかな?)
着ているドレスを見下ろしながら、私は小さく息をついた。
(なんだか、私ばかりグレンくんのことが好きなような気がする。 寂しいな……)
…
その頃グレンは、会場の奥の壁に頭をコツンと当てていた。
グレン
「たく……刺激強すぎ…あんな格好で、人前に出るなよな……」
自分ばかりが空回りをしているような焦燥感と、抑えようのない美羽へのときめき。
グレンは頬の熱が冷めるのを待ってから、審査員席へと向かった――。
-----continue----
ステージ2へ続く