6月27日。


僕らは、縁あって岩手県大槌町へ歌を届けに行った。


震災から機会を探しずっと続けてきた慰問LIVEですが、岩手へ訪れたのは初めて。


夜車を走らせ、朝9時に岩手の盛岡に到着。今回の慰問LIVEを実現させたくださった納棺師の川村さんと合流した。
聞けば、激務が続き、もう3日もろくに眠れていないという。そんなことを全く感じさせない明るい笑顔で迎えてくれた。
実は川村さんとは、東京で2度お会いする機会があり、今回は彼の地元ということもあり、なんだかいつもよりさらに頼もしく見える。


そこから2時間車を走らせ、震災の被害、津波の爪痕が激しく残る、沿岸部の大槌町へ。


当時と比べると、めっきりと震災関連のニュースは減り、復興の現状も、こちらが手を伸ばさなくてはほとんど知ることは出来ない。
そして、実際に被災地に赴き、その目で、その耳で、その肌で、感じなければ、本当にどれだけの被害なのかはもちろん、痛み、悲しみも理解するには程遠いだろう。
復興なんて軽々しく口に出来ないほどのリアルが、ここにはある。


まず、伺ったのが、山田町にある保育所。お昼前だった。
3歳から5歳の子供たちとのお歌の時間は、楽しくあっという間だった。
みんなで一緒に歌えそうな曲を練習していったのだが、アンパンマンのうた、ドラえもんのうた、となりのトトロの「さんぽ」、森のくまさん、どれもみんな大得意だった。



Honey L Days Official Blog Powered by Ameba-山田町第一保育所にて


可笑しくて笑ってしまったのは、1番を歌い終わると「2ばんも~~!」とお願いしてくる子供達。アコギをかき鳴らしながら「じゃあ2番歌おっか!せーの!」と
一緒に2番を歌い始めると、歌詞はさっき歌った1番のまま(笑)結局、3回1番を歌った。


この子達は、まだ物心つかないうちに、震災を経験し、この地で元気に育っている。
たくさんの優しさに包まれて、毎日を全力で笑って泣いて、生きている。
僕らは、キラキラした子供たちのまなざしを前に、歌いながらも込み上げてくるものを必死にこらえ、最高の笑顔で応えた。


元気いっぱいの園児達に、次はヤッターマンの歌を練習して覚えてくるからねと約束をして、バイバイをした。

(山田町第一保育所のHP!この日の事を写真付きで書いてくれているよ!

http://daiichi3137.blog.fc2.com/blog-entry-166.html

フッと笑顔になってしまう写真がいっぱいです。)


保育所を後にし、吉里吉里(きりきり)というところで、川村さんと一緒に現地訪問の段取りをしてださった、『子ども夢ハウス』の吉山さん達と合流。



Honey L Days Official Blog Powered by Ameba-吉里吉里にて


そこで海の幸、海鮮丼ご馳走に!直ぐに皆さんとも打ち解け、お腹も心も満たされたところで、
今度は、吉里吉里第二仮設住宅と、旧安渡小学校の公民館へと車を走らせた。


リアス式海岸沿い。深く青い静かな海をバックに、目に飛び込んでくるのは、ぐにゃりと折れ曲がったフェンス、コンクリートから突き出る錆びた鉄の棒。
瓦礫処理のクレーン車がいたる所で作業している。かつてと違うところと言えば、臭いくらいだろうか。


吉里吉里の仮設住宅は、海を背に、山を数百メートル登ったところにあった。
お住まいのほとんどの方が仕事で出てしまってはいましたが、集会所の様な感じのプレハブに、おばあちゃんが15名くらい集まってくださった。
そんな皆さんのケアをされている方も一緒に、参加してくださった慰問LIVE。


僕らは、歌を届けたかったが、それ以上に、一緒に何かを感じ、短くても同じ時を過ごしたかった。
普段LIVEでは、あまり話しすぎない様な、その歌に込めた想い、自分の経験、そんなことをゆっくり丁寧に話して1曲1曲歌わせてもらった。
最初から最後まで、話も歌もじっと聴いてくださり、最後はアンコールまで!手拍子はいい運動になると喜んでくれたおばあちゃんもいらっしゃった。
出会った思い出になればと、ハニエルのLIVEツアーグッズのトートバッグを皆さんにプレゼントしたんだけど、
スカイツリーがデザインされてて、それに気付くと「あら!これ、スカイツリー!?」と凄く喜んでくれた。


次に向かった仮設住宅は、旧安渡小学校の公民館のそばにあった。
ここにはまさに老若男女、たくさんの方が僕らのLIVEを楽しみに待ってくださっていた。


ここで、復元納棺師の笹原さんを紹介して頂いた。笹原さんは、震災で家も家族も何もかもをなくされた川村さんが納棺師になるきっかけになった方。
僕らは岩手に行く前に、笹原さん著の、笹原さんが復元納棺師として、震災の時ボランティア活動に奮闘された体験を綴った「おもかげ復元師」を読ませて頂いていた。
笹原さんの人柄は然ることながら、復元納棺師という仕事、当時の被災地で本当は何が起こっていたのか、生きること死ぬこと、そして、人の優しさと家族の絆が詰まった本だった。
涙で文字が読めなくなったのは初めての事だった。

(笹原さんもHPでこの日の事を綴ってくれてます。2013/6/29のページです。

http://www.sakura-noukan.com/main/category/fromsakura/

伝えていくのも、僕らに出来ることの一つだと思うので。僕らの記事に限らず、是非、納棺師の皆さんの目線での被災地のリアルを読んでみて欲しい。)


勝手ながら、既にとても身近に感じてしまっていて、この日お会い出来るのをとても楽しみしていました。


旧安渡小学校の公民館では、なんと、ステージと照明まで用意して待っていて下さっていた。そんなお心遣いも本当に嬉しくて、胸が熱くなった。
そして、笹原さんも見守ってくれる中、僕らにとってこの日3度目のステージが始まった。



Honey L Days Official Blog Powered by Ameba-旧安渡小学校の公民館にて2



Honey L Days Official Blog Powered by Ameba-旧安渡小学校の公民館にて

LIVEが終わり、みなさんの輪の中へ入らせてもらった。本当にあたたかい人ばかり。
そして、その中でも特別元気な、ヤスさんというおばあちゃんが話しかけてくれた。
「わしらは充分、色々んな人達が訪問してくれ皆さんに良くしてもらった。これからは元気に一人一人が心の復興をしていかないとね。」
そして おばあちゃんが大事そうに持ってきたのは、表紙に『絆』と書かれたノート。
「君らが来た証を書いてほしい。大事にこれを取っておくから。君たちにまた会えるまで若々しく生きてくから絶対また来てくれな。」
ふたりでノートに感謝と約束を記した。



それから、笹原さんの案内で、海沿いの街を歩いた。“元”街と言ったほうが、近いかも知れない。
無惨にも押し流された家の跡だけが残る街。山に沿った数十メートルもある高いコンクリートの壁には信じられない高さにまで津波の傷跡が刻まれていた。
笹原さんは、歩きながら色々な話をしてくださいました。当時の状況を話すと言うことは、その時の光景を思い出すということ。
記憶は共有できなくても、気持ちを共有できる。僕らは笹原さんの話に耳をかたむけた。
歌った曲の中に『ありがとう』があったのだが、笹原さんは、まるで自分たちに歌われているようで本当に驚いたと言葉を下さった。
『ありがとう』は、大切な人に、心から“ありがとう”って言ったのは、いつだったかな。そんな風に想いながら、“ありがとう”を詰め込んだ歌。
音楽は、聴いてくれた人の数だけ物語が生まれて、心を動かした分だけ強くなる。笹原さんや川村さんの様な方にそんな風に感じてもらえて凄く嬉しかった。


この旅の最後に訪問したのが『こども夢ハウスおおつち』。
震災後にご家族や友達、大切な人を失い心に傷を負った子供達を迎え入れ共に成長していく憩いの家。
笹原さん達がご支援されている施設で、僕らの最終目的地。

この日は、そこに通う小学校の男の子2人の誕生日会があった。
僕らは、やった!!とばかりに、アコギをかき鳴らし、みんなでハッピーバースデーを合唱。そして配られたケーキを夢中で食べる子供たち。
わんぱくな男の子に、面倒見の良いお姉ちゃん、幼稚園児から高校生まで、仲の良さと木造の一軒家の柱は本当に絵になる。
支える夢ハウスのスタッフの皆さんの真心に胸を打たれながら、僕らはこの会の心地よい暖かさに溶け込んでいった。


「ケーキを食べながらでいいよ!」そう言ってスタートした、アコギ1本で歌う畳の部屋でのLIVE。
この日の最後の歌に、僕らは『まなざし』を選んだ。
夢を持って欲しい。持ち続けて欲しい。そしてその夢に向かって、自分を信じて頑張っていってほしい。そう願いを込めて。



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日も暮れかけた、大槌。帰りは、夢ハウスの皆さん全員が見送ってくれた。
「本当に帰るの?もうちょっとゆっくりしてけばいいのに」と冗談混じりに笑顔の笹原さん。
子供たちからは、寄せ書きの色紙が!嬉しいサプライズに、名残惜しくなって、寂しさはその日のピークに。
みんな、僕らの車が見えなくなるまでずっとずっと手を振ってくれた。多分見えなくなっても振っていてくれた。だって、僕らがそうだったから。
もっと話したかったし、もっと知りたいし、遊びたかったなぁ。必ずまた帰ってくるからね。


『ありがとう』の歌詞にもあるけど、


同じ空の下繋がってること。
一人じゃ生きていけないこと。
一人で生きていないこと。


そして、当たり前のようで、当たり前じゃない。忘れがちだけど、忘れちゃいけないこと。


このことを改めて実感した、僕らの岩手初訪問記でした。


長々と、読んでくれてありがとう!


そしてここに誓います。


僕らはこれからも、歌い続けていく。


出会った方々との元気な再会を信じて。



Honey L Days
KYOHEI
MITSUAKI