映画『市子』を観てきました。

ストーリー
川辺市子(杉咲 花)は、3年間一緒に暮らしてきた
恋人の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを
受けた翌日に、突然失踪。途⽅に暮れる⻑⾕川の
元に訪れたのは、市⼦を捜しているという刑事・
後藤(宇野祥平)。後藤は、⻑⾕川の⽬の前市子の
写真を差し出し「この女性は誰なのでしょうか。」と
尋ねる。市子の行方を追って、昔の友人や幼馴染、
高校時代の同級生…と、これまで彼女と関わりが
あった人々から証言を得ていく長谷川は、かつての
市子が違う名前を名乗っていたことを知る。そんな
中、長谷川は部屋で一枚の写真を発見し、その裏に
書かれた住所を訪ねることに。捜索を続けるうちに
長谷川は、彼女が生きてきた壮絶な過去と真実を
知ることになる。
(以上、公式サイトより転記)


公開前から観たいと思っていた作品ですが、
年をまたいでやっと観られました!
年明け1作目としては若干重めな気はしましたが、
観てよかったな、と思える良作でした。

主演は杉咲花さん。
華奢で小柄で声が小さくて、消え入りそうなのに
存在感が光る花さんは、この市子にぴったりの
キャスティングでした。
私たち観客は、市子の恋人である長谷川
(若葉竜也さん)と一緒に市子の行方を追いながら
市子が辿ってきた壮絶な人生を知っていきます。
最初に想像していた以上の過酷さに苦しさを
覚えました。

どうしても架空の物語と思ってしまいがちだけど、
きっと市子と似たような境遇の人は、私たちが
想像するよりもっと多いのかもしれないと
思いました。
ネタバレになってしまうと思うので書けませんが、
市子の境遇だったら、私はとっくにギブアップして
いるに違いありません。
でも市子の場合、ギブアップできる状況が来る前に
ギブアップすらできない状況になってしまった。
彼女の境遇を思えば、それでも救われるのでは
ないか、救われてほしいと願ってしまいます。

すべての苦しみを小さな体に押し込めて、
声も押し殺して涙を流す市子の姿に、本当に胸が
苦しくなりました。

もし私が市子に出会って、友達になっていたら
どうしただろう?と考えます。
出会ったのが小学生の頃だったら、たぶん梢ちゃんと
同じだったと思うし、高校生だったとしても、
北くんのようには関われなかった気がします。
そしてそういう「関わらない人」たちのために、
市子はどんどん後戻りできないところへ追いやられて
いってしまうのだろうと思います。

でも、やっぱり勇気が出ないですよね。
自分の中の警戒心が「深入りするな」と
引き止めると思うのです。
そこで一歩踏み出せたなら、踏み出せる勇気か
市子を救えるだけの知識があったなら。
やはり無関心でいてはいけないですよね。

人との出会いって、思ってる以上に大きな影響を
人生に与えますよね。
市子が出会ってきた人々が全然違っていたら
こんなふうにならなかったかもしれないし、
逆に夢を持つこともできなかったかもしれません。
自分で決めることが難しい子供の頃の出会いは特に、
本当に人生を左右すると思います。

終わり方がなんとも微妙で、市子はどうなったのか
観る側の想像にまかされてしまいます。
いつもなら、そういう終わり方はあまり好きでは
ないのですが、今回はこれでよかった気がします。
どちらにせよ苦しい。
市子が生きれば……、
これ以上はネタバレですので控えます。


出演者の多くが今泉監督作品で見かける方々で、
お芝居上手な方ばかりで、とても入り込めました。
宇野祥平さんも渡辺大知さんもよかったなぁ。
苦しいけど、すごく良い作品でした。