折々に触れて書いてるけど、ゆに施設は認知が進んだ

利用者さんが本当に多い

前の施設より重度の認知症の人が多いんじゃないか

 

ただ、幸いな事にゆにでも相手出来る程度しか認知症ぶりを

発揮していないので何とかなってる

夜に不穏になる人が多くて、夜勤の人は大変だ

 

「食事を摂って無い」って言いだすのは日常茶飯事で

「ずっと食べて無いからお腹空いたわ」とか、

「食事をするにはお金払わないとならないわよね

お金持ってないわ…どうしよう…」とかさ

まぁ実際は利用料に食費が入ってるからお金払って貰ってるんだけどね

 

さっき食べた事を忘れて事務所まで来て

「飯はまだか」をやる。コントみたいでしょ

でも、「う~ん、多分ね、〇〇さんさっきご飯食べたと思うよ」

って言うと「そうかしら…頭おかしくなっっちゃったわ」って言って

大人しく引き下がる

マジで、30分前の事を綺麗に忘れてしまう

 

そういう飯を忘れる、薬を飲んだ事を忘れる系なら

まだ良いんだ。言い分を聞いて、事実を伝えて納得して帰るから

 

「不穏になる」系がいちばん気の毒

 

居室ではずっと寝てて、食事の時間に食堂に連れて来ると不穏になる

Nさんという老紳士が居る

Nさんの席に着いてもらって、食事が出るまで待って貰うんだけど

この時間が堪らなく不安になって不穏になる

 

Nさんは車椅子なんだけど、着席するや否や

「ねぇ、これからどうしたら良いだろう…ねぇ助けてよ」って職員を呼び止める

じっと座ってられなくて車椅子でウロウロ始める

 

「ねぇ、これからどうするの?何が何だかさっぱり分からなくて不安でしょうがないんだよ」

そういう時は、これから

・Nさんはこれから食前薬を飲む事

・そうしたらじきに食事が配膳されるから食べる事

・食べ終わったら食後薬を飲んで

・職員が居室に送るからまたベッドで眠れる事

を滾々と、背中をさすりながら話す

するとその時は納得して、「うん、分かった。アンタに任せるよ!頼んだよ!」

って言うんだけど、五分もすると「ねぇ、これから…(ry」が始まる

 

なので、また一から説明して納得して貰う

食堂に着いてから配膳まで1時間近くあるから、このやり取りを

10回くらいする

職員によってはこんなNさんをウザがってぞんざいに扱う人も居るけど

ゆにはずっとNさんに付き合う

Nさんの心の中は不安でいっぱいだろうから

 

「何がなんだかさっぱり分からなくて不安でしょうがない」

この一言に認知症の人の心が集約されてると思う

 

自分が今、なんでここに居るのか、これから何をするのか

今後どうなってしまうのか。これ、全部分からないんだよ

 

認知症だからと言って、これまで経験してきた事に対する

知恵や度胸が無くなる訳が無い。

90年以上も人間やって来たはずの人がこんなに不安になってしまう

職員に説明されて、一時安心しても、それを忘れてしまうから

また新たに不安になる。この辛さはいかばかりか

不穏になる系代表選手のNさんには、どうか抑肝散を処方して欲しいと思います

 

飯食ったのを忘れると同時に自分がおむつだって忘れる人も居る

Tさんというご婦人。部屋に行くと

「ねぇ…おしっこしたくてさっきから我慢してるんだけど

トイレでしちゃだめって言われてるのよ。どうしたらいいの?」って。

ダメ…って言うか…Tさん車椅子だから自分でトイレに座れないのよ

自分でトイレ行こうとして転倒したの何回もあるから

「おむつしてるからおむつにして下さいね」が、「トイレでしちゃダメ」に

変換されてるっぽい

この時も「Tさん、おむつ履いてるからそのまましちゃって大丈夫!

したら替えるから安心してしちゃって!」って説明

「あら、あたしおむつしてるの?」ってなって、おむつにして貰う訳さ

これも一日に何回も。膀胱炎になるぞ

 

時は変わって夕飯後

老人達が食べ終わり、どんどん部屋に帰って行き、食堂は閑散となる

老人が居なくなったテーブルはアルコールで拭くんだけど、たまに食後も

残ってる人が居て、その人の付近は拭かないでおく。追い立てるみたいだから

件のTさんも居残り組の一人で、例え食堂に一人になってもなかなか部屋に帰らない

寂しいんだと思う

 

今日も飯終わって片づけしてたらTさんはお茶飲みながらゆったりしてた

まぁ、一人になったとしても夜勤さん居るから良いわ。って思いながら

Tさんのテーブル周りは拭かないで置いた。ら。

Tさん湯飲みをひょいと持ち上げて

「ここ、拭いて良いわよ。あなたいつも私が居ると遠慮して近くは拭かないから」って。

ほぉ。飯とおむつは忘れても、日々のこういう小さい事は覚えてるんだ

 

認知症の老人は、日々、不安と忘却と少しの楽しみの中で生きてる

 

学校時代、三冊あったテキストの丸々一冊が認知症の老人への

理解って内容だった。正直あんま覚えてないけど

こうして日々認知症の老人を見てると、なんとなくじんわり思い出す事もある