[脱・脱原発論]その4:「脱原発・反原発・卒原発」は盲点無く構築された理論なのか(後半2) | honey-spider presents 『胎児が密猟する時』

[脱・脱原発論]その4:「脱原発・反原発・卒原発」は盲点無く構築された理論なのか(後半2)





歴史が教える「脱原発」の危うさ―渡部昇一(終)(上智大学名誉教授)
http://blogos.com/article/52546/?axis=k:35357
(BLOGOS 2012年12月19日 10:10)


※ 人気ブログランキング投票画像…佐波優子、三橋貴明と六ヶ所村の映像。(後日メインで取り上げます)





問われる新総理の国家観と歴史観


先の大戦でアメリカに大敗した日本がその後復活するのは、中東地区で奇跡といえるほどの豊富な石油が出たからである。安い石油をエネルギーにして高度成長が訪れるが、1973年の第一次オイルショック、1979年の第二次オイルショックを経て、石油に依存したままでは危ない、と日本は気付き、原子力へと舵を切る。


現在、日本の原発技術は世界最先端だが、高速増殖炉「もんじゅ」までを視野に入れていたのは慧眼というべきだろう。「もんじゅ」が完成すれば、日本のエネルギー問題は500年、1000年単位で解決する。いまでも高速増殖炉の開発を続けているのは日本、ロシア、中国、インドぐらいで、今後も日本が開発を継続させれば、それだけで世界中の最高の原子力科学者が日本に集まってくる。そうした高速増殖炉を世界に輸出すれば、中国のように資源漁りをする必要もなくなる。ほんとうに地球に優しいクリーンエネルギーが生まれるのだ。


鳩山氏は首相になるやCO2の排出量を25%削減すると国際公約したが、これは原発の稼働を近い将来に50%にすることを前提としている。それをゼロにするなら排出量は25%削減どころか、増えるしかないだろう。


今回の総選挙で自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立をめざす」「10年以内に持続可能な電源構成を確立する」と慎重な言い回しに終始したが、国家の雌雄を決するエネルギー問題に新政権はいかに対処するのか。問われているのは新しい総理の国家観、そして歴史観である。


それはとりもなおさず、エネルギーをどうするかにかかっているのだ。毎年、何兆円ものムダ金を燃料代に使って平気な人は、政治家の資格がないと断定してよいだろう。






管理人より。


いったんこのチャプターも残りあと一稿で終了だが、前回記事で論(あげつら)った「課題」に追加ばかりしている様で申し訳無い、だが今後、おそらく何10回も繰り返すであろう、重要なエネルギーの話なので、最終チャプターは下記について深く突っ込むことをお許し願いたい。



■ ドイツ・メルケル政権下の2022年までの原発全廃路線は、本当に成功しているのか?



■ 「ピークオイル論」にて語られている2050年以降の「一人あたま使用可能なエネルギーの半減期」到来後も、日本は原発に依存せずに済むのか?



■ 現在日本国内で未稼働と言われている残5割の火力発電、残7ないし8割の水力発電で、最高電力需要を賄えるという統計数字は完全に信が置けるのか?




どうしても代替エネルギーだけは重要と考えざるを得ないので、先に論じさせていただく。ご心配いただかなくとも今後、管理人にとっても「修羅の道」である向こう100年まで監視が必要な被曝問題(管理人がほぼ100%の文系脳だから苦痛である、という意味もあるぞ…)、使用済み核燃料問題、そしてこれも結局は代替エネルギー論だが「もんじゅ」に代表される「高速増殖炉」「核燃料サイクル」が本当に破綻しているのか、など…管理人がいつ挫折してもおかしくない難問が、それ相当の長きに渡り、うず高く山を築いて待っていますから!


もしも管理人に対し読者の皆様に特別の悪意が無いのならば、どうか急かしてあれも書け、これはどうした、それが抜けている…こういった類の揚げ足取りは本当にご容赦いただきたい…。





"Japan will be felt fallout amid nuclear shutdown"


悪夢の福島第一原発事故から3日後の2011年3月14日、アンゲラ・メルケル独首相は独国内の原発の稼働年数を2030年代半ばまで延長する計画を3か月間凍結すると発表した。元来原発推進派として稼働年数を延長する政策を採ってきたハズのメルケル政権が、こうも迅速にフクシマに反応したのは、何てことは無い、独国内での「原発アレルギー」が急増したからだ。




その根拠は明白で、英断として賞賛される目論見だったこの凍結宣言にもかかわらず、独国内の原発不信は拡大していき、地方議会選挙で緑の党が躍進するなど与党が相次いで敗北した。それならばと泣く泣く、政権維持の為に「2022年までに国内17基すべての原発を閉鎖する」と宣言し、エネルギー政策の転換を図ったに過ぎないのである。


日本じゃ「想像被曝で円形脱毛症を起こした」山本太郎が、まるでかつて北朝鮮をこの世の楽園と絶賛した寺尾五郎と全く同じ様に、ハンパに他国を理解した気になってドイツのエネルギー転換政策にありったけの賛美を惜しげも無く送っていたが、事あるごとにドイツ・メルケル政権のこの政策を引き合いに出す反・脱・卒原発の面々含め、その実態などまるで理解していないと管理人は断言する。



使用前・使用後、では無く寺尾五郎(左)と山本太郎。新旧愚者揃い踏みだ。

 



かつてかような独メルケル政権を批判した産経新聞の様に「右の悪あがき込みのプロパガンダ」と思われるのは癪なので、英フィナンシャル・タイムズ2012年3月26日版の記事を元に要約してみた。管理人の都合の良い様に捏造した事を疑う向きもあろうから、英語の達者な方はどうぞ、下記原本と比較して誤りが無いかどうか対比してみていただきたい。



Germany feels fallout amid nuclear shutdown(FT.com)
(March 26, 2012 2:34 pm)

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/8925115a-6eb7-11e1-afb8-00144feab49a.html#axzz2H2Nj8kMo



ドイツ原発の段階的廃止の最前線にいる人々は、電気が消えないよう日々苦労している。国内にある原子力発電所の半分が閉鎖されてから1年半、政府は今後10年間で進める再生可能資源による電力への転換は予定通りに進んでいると主張するが、多くの専門家は実際やってみると移行は困難だと言っている。


ドイツに4つある地域高圧送電網の1つを運営するオランダ企業テネットで、北部コントロールセンターの責任者を務めるフォルカー・ヴァインライヒ氏は、「冬は何とか乗り切った。だが我々は幸運だった。現在はもう、できることの限界に近づいている」そう語る。ハノーバー郊外にある何の変哲もない低層ビルに拠点を構えるヴァインライヒ氏と同僚たちは2011年に、北海とアルプス山脈を結ぶテネットのケーブルの電圧を維持したり障害を回避したりするために、合計1024回も出動しなければならなかった。この出動回数は前年実績の4倍近くに上った。

長期的な目標は今も、20ギガワットの原発の発電能力を代替する持続的電源を探すことだが、喫緊の問題はドイツの送電線の脆弱性であることが明らかになった。
エネルギー倫理委員会のメンバーとしてアンゲラ・メルケル首相に助言を与えてきたユルゲン・ハンブレヒト氏は言う。


「寒波は乗り切ったものの、大きなダメージを被った。我々にはまだ非常に野心的な目標があるが、どこを見ても、計画の実行、具体的な行動が足りない


昨年3月の日本の原発事故の直後に、ドイツの原発17基のうち8基が停止されて以来、ドイツの送電線は急な需要に対応するのに腐心してきた。2月初旬にはあわや停電が起きそうになった。閉鎖された原発の大半はドイツ南部にあったため、シュトゥットガルトとミュンヘン周辺の工業中心地は、前例のない量の電力を北部の石炭・ガス火力発電所や風力タービンから調達し始めるようになった。ところが高圧送電網は、このような北部から南部への供給急増に対応できるようには設計されていなかった。昨年夏にドイツ政府が(当初目標の2036年ではなく)2022年までに原子力発電を段階的に廃止する計画をまとめると、テネットやアンプリオン、50ヘルツ、EnBWといった送電事業者は、ハンブルクとシュトゥットガルトが弱点になると判断した。

特に工場の電力需要に加え、家庭の暖房と料理の電力需要が生じる冬場の夜には需給が逼迫する。


2月初旬には全国規模の停電に対する各社の懸念が欧州レベルにまで膨らんだ。フランスでの価格上昇を受け、折しも寒波がロシアからの天然ガス供給を滞らせた時に、エネルギー商社がドイツの電力を大量に輸出したためだ。従来であれば、送電網を運営する事業者は原発事業者に発電量を増やすよう要請していた。だが、総計20GWのうち8GW分の設備が閉鎖された今、これは選択肢にはならない。結局、各社は約10日間にわたり、ドイツ南西部とオーストリアにある古い予備のガス火力発電所を利用した。

「我々にはもう、危機時に対策を講じる余地を与えてくれる予備設備がない」とヴァインライヒ氏は言う。「もし大規模な発電所を失っていたらどうなるか?」そうなれば欧州全土の特定地域で電気を消す「計画停電」を余儀なくされるという。

南部でのガス火力発電所の増設や北部から電力を運ぶ追加の送電線の敷設をはじめとした解決策には異論がないものの、計画が実行されるかどうかは疑問が残る。投資家はガス火力発電所を建設したがらない。再生可能エネルギーが法律で優遇されていることから、ガス火力発電所は風力発電を補完するためにたまにしか稼働しないかもしれないからだ。

追加の送電網敷設(政府機関によると、そのコストは電力料金を8%押し上げる可能性がある)は、計画段階で滞っている。
政府は予備のガス火力発電所を建設するインセンティブを検討していると言う。また夏には包括的な送電網計画を明らかにすると約束しており、長期的に電力価格は上昇しないと話している。だがハンブレヒト氏は、計画実行のスピードとユーザーにかかるコストについて心配している。欧州最大の工業国には「信頼でき、クリーンで手頃なエネルギー供給」が必要だと同氏は言う。




送電網の問題は、最後に残った原発9基が閉鎖し始める2015年までに解決する必要がある。送電線や発電所を計画して建設するにはまだ6~7年の歳月がかかるとハンブレヒト氏。これを2~3年に短縮するためには、ドイツには、進捗状況を監視し、次の対策を特定し、実行させる「コントロール・調整センター」が必要だという。ハンブレヒト氏は、送電線敷設に対する地元の反対に触れ、「エネルギー転換は今なお実行可能ではあるが、政治的に実行可能かどうかは分からない」と指摘。もっと大胆に計画を実行していかなければ、ドイツは一部原発の運転を2022年以降も継続するしかないかもしれないと警鐘を鳴らしている。






…何か管理人から、あえて補足すべき説明はありますか?無いなら管理人から、進んで補足しましょう。既にご存知の方々が大半のハズですが敢えて。



こと独に関して言えば、太陽光発電の電力固定価格買取制度にせよ風力発電にせよ、現実にはバックアップ電力としてガス火力発電の待機が不可欠である。考えが至らない方々はこれに対し即座に「自然エネルギー発電を補完する火力発電が控えていることの何が悪い!」とまくしたてますが、悪い事だらけなのです。


1. 火力発電に必要なガスは36%をロシアから輸入している(2011年時点)。結果いわゆる「エネルギー・セキュリティ」向上に貢献せず、かえって「エネルギー・セキュリティ」を低下させている。


2. 常時スタンバイ(待機、準備)状態の火力発電所・火力発電機の運転は不規則になる。これに伴い発電効率は低下し、通常の火力発電以上に経費が増大する。


3. 1、2を打開すべく技術的改良の余地を求めても、少なくとも現時点ではこれ以上不可能である。



…冷静に考えるならば、これらは予想のついた顛末(まだこれが最終結論と管理人は言うつもりはありませんので、誤解なきよう)ではないか?一切の予断を捨てて冷静にそして素直に考えるならば、クニの政策案として実現に乗り出すのならば、自然エネルギー発電の技術的優位性が確認出来てから、火力発電以上のコスト・パフォーマンスが確認出来てから、安定性があることが確認出来てから、初めて実用段階に向けて国庫補助、という流れだろう。


既存エネルギーより劣るのが明白なのに国家が補助金を出し、無理な普及を進める…これを賞賛する人達が、果たして高速増殖炉もんじゅや六ヶ所村再処理工場が莫大な費用に反し成果をあげていないと騒ぎ立てるのが、本当に正鵠を得た批判と言えるモノなのだろうか…。






"日本の火力発電は約5割、水力発電は2~3割しか稼動していない"

…この言葉を金科玉条の如く唱える方が多いです。つまり、未稼働分をフル稼働させれば、これら火力・水力だけで余剰電力さえ発生すると。この意見をリードするひとかどの識者でさえ、これはあくまで統計数字上の想定で、現実には火力・水力ともに定期点検・補修が発生し、水力に関してはダム貯水率が稼働能力を左右する以上、そして火力は燃焼後発生する煤(すす)除去の為のメンテナンスや、高熱にさらされる部品交換に伴うメンテナンスで24時間265日連続稼動出来る訳ではないと但し書きをつけています。


※ どういう訳かこの「従来型発電所フル稼働論」、但し書きだけ取り去られて「切り取られた部分」だけ意図的にバラ撒いている無責任者が非常に多いのですが。



だが管理人は、それに対し声を荒げて噛み付きたい訳では無いのだ。


許し難いのは「火力・水力フル稼働論」が騙る最高電力需要が、真夏の日中帯の僅かな時間だけを対象にしていること、まさにそれなのだ。



くだんのドイツの例をよく見てください。さらには管理人の生まれた北海道や、青森、岩手、秋田といった東北地方を。我々が冬の間、潤沢な電力不足バッファーを枯渇させることから、どのような生命の危機に曝されてしまうか。








無慈悲な響きで誤解を受けそうなのは承知で敢えて言うと、クニの体を成す為には、集中する重要な機関や大企業の社屋や中枢施設、そして地方部より遥かに多い人々のことを考慮すると、そして必ずしも真冬といえど、生命の危機にまで至らない箇所が多い以上、まず都市部で真夏の時期、こうなるのは管理人も致し方ないと考えるのだ。




だがこれは、決して北海道や東北に住む者達を蔑ろにして良いという理屈にはならない。



北海道・東北にも病院や入院患者、寒さから身を守らねばならない老人・子ども・女性が存在するのである。そして健常な大人といえど、万一電力不足による水道管破裂や凍結、給湯器故障、急激な寒波、落雪・落氷や積雪による家屋倒壊…どれもこれも、電力不足という事態にひとたび陥れば、どれもリアルに発生するまさに「生死を分ける」大問題なのだぞ。




"これはあくまで統計数字上の想定で、現実には火力・水力ともに定期点検・補修が発生し、水力に関してはダム貯水率が稼働能力を左右する以上、そして火力は燃焼後発生する煤(すす)除去の為のメンテナンスや、高熱にさらされる部品交換に伴うメンテナンスで24時間265日連続稼動出来る訳ではないと但し書きをつけています。"





…上記セルフ引用となるが、「火力水力フル稼働論者」達よ、もしもの際に余剰電力が枯渇して、それが原因で無辜の被害者を生み出したら、「統計数字の誤差」で詫びて終わらせようとは思ってまいな?



いざとなったらオマエ達には、猪瀬直樹ではないが北海道や東北に出向き、犠牲者が一人も出なくなるまで雪掻きを最後まで手伝わせたいと思っている。そして管理人としては、この無慈悲で杜撰な論を書籍にして日本中に流布したこの男(下記参照)に、ぜひ北海道まで来てもらおうと思っている。




※ 「人気ブログランキング」投票画像です。左画像が以上に述べた、「致命的欠論」が述べられた盲点の多い「脱原発論」そして右がその作者・小林よしのりです。道民としても是非、キツいワンクリックの一刺しをお願いします…。







(続く。なお次回の2050年・ピークオイル論を以って、このチャプターは今度こそ最後となります。)