[脱・脱原発論]その3:「脱原発・反原発・卒原発」は盲点無く構築された理論なのか(後半1) | honey-spider presents 『胎児が密猟する時』

[脱・脱原発論]その3:「脱原発・反原発・卒原発」は盲点無く構築された理論なのか(後半1)


歴史が教える「脱原発」の危うさ―渡部昇一(上智大学名誉教授)
http://blogos.com/article/52546/?axis=k:35357
(BLOGOS 2012年12月19日 10:10)



※ きょうの『人気ブログランキング』投票画像…後述の「2011年の日本の石炭輸入の依存先を示す円グラフ」。反対派も容認派も、まずは落ち着いてワンクリックお願いします。





先の大戦の原因もエネルギーだった




エネルギー問題が国家戦略においていかに重要か。そうした認識が菅氏にはまったくなかったといってよい。歴史を遡れば、先の大戦で日本が敗戦に至る原因も、すべてはエネルギーに拠る、といえるだろう。


そもそも産業革命はイギリス人が石炭の利用法を発見し、蒸気機関をつくったことに始まる。これによって鉄鋼業でも鉄が大量につくれるようになった。その象徴が黒船で、日本も明治以降は石炭の使い方を覚え、一方で石炭の輸出国ともなる。日露戦争以後は戦艦も日本でつくるようになり、石炭全盛の時代となるが、日露戦争からわずか10年後の第一次大戦によって、事情は一変する。


当時、第一次大戦を見に行った観戦武官は、戦争が石炭から石油の時代へと移り変わったことを知る。戦艦はもちろん、地上でも騎兵は消えて石油で動く戦車になり、さらに第一次大戦で登場する飛行機の燃料もすべて石油だ。これを知った当時の日本の軍人たちは、日本が戦争で勝てない国になった、と悟った。


陸軍と海軍でも、危機感には違いがあった。当時の陸軍は20個師団ほどしかなかった兵を4個師団も減らし、余った予算で機関銃部隊をつくっている。アメリカを仮想敵国としていない陸軍に石油問題がピンときていた節はなく、彼らは体制づくりに力を注いだ。これが統制派といわれるグループで、日本を総力戦のできる国家体制にしようと計画した。一方ではひたすら愛国心を鍛えよ、という精神論に左翼が結びついて皇道派や青年将校が生まれた。彼らによって2・26事件が起こり、統制派は黙って天下を取ったのである。その後、敗戦に至るまでの日本は、山本七平氏の言葉によると「陸軍に占領されたような国」になる。


一方の海軍は石油に敏感で、そこから軍縮会議にも賛成し、中近東の油田を握るイギリスや、カリフォルニアから石油が出るアメリカと妥協しようと考える。これが条約派である。ただし、石油よりも大砲の大きさばかりに関心を向ける艦隊派もいて、彼らは英米を敵に回して独伊と結ぶことを考える。マスコミが支持したのは「戦えば勝つ」と主張する艦隊派で、そこから日独伊による三国同盟が結ばれる。


とはいえ石油がなければ、戦艦を動かすことはできない。そこで日本は石油が出るスマトラのパレンバンの占領を考える。そのためには、アメリカが出てくるのを防がなければならない。ならばハワイの真珠湾を叩こう、という発想が生まれたのだ


いまにして思えば、あのとき山本五十六連合艦隊司令長官が機動部隊の南雲忠一司令官に「重油タンクだけ爆撃せよ」と命じていれば、戦局は大きく変わっただろう。戦後に出版されたアメリカのニミッツ太平洋艦隊司令長官の回顧録によると、ハワイの重油タンクと海軍工廠を爆撃されていれば、アメリカの船は半年間、太平洋で動けなかったという。その場合、1942年4月のドーリットル爆撃隊による東京空襲も、同年6月のミッドウェー海戦もなかっただろう。




ドーリットルによる東京空襲の前に、日本の機動部隊はインド洋海戦でイギリスの航空母艦ハーミスを沈め、その前にはイギリスの東洋艦隊を全滅させている。当時の日本の急降下爆撃の命中率は90%を超え、一方で日本船は1隻も沈まなかった。意気揚々で帰途に向かったところ、東京空襲の報を受け、そこから歯車が狂いだすのだ。


日本がハワイの重油タンクと海軍工廠を壊していれば、アメリカとの引き分けに持ち込むのが可能だったというアメリカ側の説もある。それほどエネルギーは重要で、そもそも日本が戦争を始めたのは、このままでは海軍の石油が7カ月くらいしか持たない、とわかったからである。それが毎日減っていく。半年後には軍艦を動かせないことがはっきりしているのに、アメリカは絶対に妥協しない、ということをハル・ノートで理解した。だからアメリカとの戦争に踏み切ったのだ。




管理人より。


改めてこの場そしてこれ以降、論じなければいけない事柄を整理すると、以下の通りと管理人は認識している。初回記事からいくつか追記しているのでご了承を。


● 今後中長期的に日本国内において、発ガン・その他(原発ぶらぶら病に代表される多様な疾患等)に悩まされ続ける児童、またそれ以降の世代はどれだけ発生するのか。


● 高レベル放射性廃棄物、使用済み核燃料は、最終処理とまでは言わないまでも今後日本国内で処理し続けられるのか。


● 代替エネルギーが、即座に、しかも今後永きに渡ってポスト原子力として使用可能か。


● 以上を総合して、結局原発など無い方が良いのか、残さざるを得ないのか、それとも従来以上に「原発推進」を推し進めるべきなのか。




だいたい反・脱・卒原発で議論の俎上に登るのは上記だろう。これらが明確にさえなれば良い。割り切った言い方か?いや、何が問題か明確にならないまま、延々と懐疑や反対論ばかりが冗長に続く状況など、全然良くないだろう。しかもこの問題は、単なる賛成論・反対論の軋轢ばかりで、滅多に互いの論がかみ合った試しが無く、いわんや昇華した実例など未だ見たこともないという、想像を絶する厄介な代物なのだ。


本来管理人が狙っていた「便乗ブサヨ」の洗い出しなど、上の課題に対し答えを捻り出してからでも遅くは無いと思ってはいるが…何しろハナっから、話を前進させる意図など微塵も無い癖に、「反対」することのみが行動原理の勢力(…そう、拙ブロでいつも取り扱っている『あの』連中のこと)を本気で根絶やしにしたいが為に衝動に駆られて始めたものの、そのステージまで辿り着くのさえ、いったいこの先何年続けてからにすべきなのか、今はそれすらも明確に答えが出ない。出ないし出せない。


まず、渡部昇一の元文のテーマが『エネルギー』、なので、ここは渡部昇一の歴史観など、脱線は最低限に留めてエネルギーの話をしよう。代替エネルギーと一言で括ってしまうが、その内訳は「旧型」「新型」に分類されるという前提からまずスタートすると…。



旧型:石油、石炭、原子力


新型:、太陽光、水力、風力、地熱、メタンハイドレート、シェールガス、バイオマス…



新旧一応、実用化の有無で勝手に分類したが…


まず、原子力の代替として提案されることも多い石炭、これが本当に代替ではなく本流に成り得るか考える。



結論から先に言うと、まずコスト面でどう考えても不利だ。






まず「石炭が純国産エネルギーとして主流たりえるか」、その前提として現在の石炭輸入先がどこなのかを把握したい。豪州が過半数を占める理由は何か?豪州の石炭採掘法(米国も同様の採掘法である)は、ドラッグラインという巨大なパワーショベル等で掘り進む露天掘りで、これならば効率よく大量の石炭を採掘することは可能なのだ。結果豪州は、世界に広く石炭を輸出する「石炭大国」たりえる。現在の日本は、この豪州産石炭を国内で消費しているのだ。



対する日本の国内産石炭は?日本の炭鉱はアメリカやオーストラリアの大規模炭鉱と比べて地層構成が複雑である。地下深いところに石炭がある場合、日本の炭層まで縦坑を掘り、炭層に沿って水平または斜め(斜坑)に掘り進む在来採炭法では、石炭は層状に存在するので採掘は広い面積で行われる。放置すれば採掘現場の天井が崩れ落ちる危険性が非常に高い。石炭を採掘する際には、天井が崩れないように支柱を組むなど様々な対処を行いながら掘り進む。従来採炭法では手持ち削岩機とダイナマイトの併用が多かったが、採掘には一般に知られている以上の手間がかかり、崩した石炭をトロッコに積むのも手作業で、掘ったあとに支柱を組むので甚だ能率が悪い。



日本の炭鉱で採掘可能な石炭は、おおむね地下の深部にある訳で、そのため上述のリスクを知りつつも、何キロメートルにも及ぶ坑道を掘り採掘を進めるが、かつての例で言うと労働条件は、原発作業員に勝るとも劣らぬ劣悪振りで、メタンガスや粉塵による爆発事故・落盤などが多発し、死者を多数生み出した。多くは炭層内に含まれるメタンガスの噴出に続く引火→爆発、炭鉱内に飛散した石炭の粉塵への引火→炭塵爆発、である。最大の事故は1963年の三池炭鉱(盆踊りの炭坑節で有名)炭塵爆発事故で、458名もの死者を出しているのだ。

※ 


茨城県北部から福島県浜通り南部にかけてかつて石炭採掘が行われていた「常磐炭田」も、石油へのエネルギー転換政策に伴い1976年に閉鉱、その後鉱夫たちはいわき市・相双地区を経て、福島第一原発の作業員になったことは覚えておくべき事実だろう。



…結局国内で豊富とされる石炭を代替エネルギーとして主流とするにせよ、これに伴う技術革新・その前提たる開発予算の捻出元が無い限り、この先何年も費やす必要があることには変わりは無いのですよ。風力発電にすら研究開発費を出し惜しみする現在のクニや地方自治体が、すんなり旧日本の遺物のイメージが強い石炭採掘と石炭の再エネルギー化開発に、よほど強力かつ斬新な提案無しに動くと思えますか?


それと、反・脱・卒原発の皆様が常々おっしゃる原発作業員の実態が残酷だというのが正論であるのならば、かかる鉱夫たちの過酷かつ劣悪な労働環境も、告発されて然るべきでは?



…いつの世にも、体を蝕みろくな保障も無い中で、何らかの事情で体を壊した瞬間お払い箱になるのを承知で働く人たちはいるのです。これを理不尽と言うのでしたら致し方ない、共産主義でも社会主義でも、こういった理不尽に対抗すべく、特定の主義思想に加担して世の中を変えるのもいいでしょう。日本では信条の自由が保障されているますから、止めやしません。


ただ、これだけは言っておきますが、どこに身をおき生計を立てようが、かような理不尽は何らかの形で多かれ少なかれ必ず身に付きまとうし、逃れられません。例え日本を捨てて海外に飛び出そうが。



これらの理不尽を認めたがらない方々は、ワタクシの知る限り、だいたい2種類の人種です。


ひとつは、いちおうこういった理不尽と背中合わせの世間に身を置きつつ、ご自身の思想・信条を最優先されて「決して諦めない」方。


もうひとつは、ご自身の思想・信条を優先されるあまり、世間に背を向けてしまい「特権階級」と化している方。




…さて、次に石炭の今後についてですが…一般的に150年以上の採掘可能な埋蔵量と言われる石炭にも限界説があります。





近年の消費量の急増と埋蔵量の減少に伴い石炭可採年数は大きく変化し、2011年つまり2年前の石炭可採年数現在の値は118年(BP統計2011年版より)となっている。僅か10年ちょっとで可採年数が109年も減少してしまった、これはかなり恐ろしい話と言うべきですが…この変化が続くと仮定して直線をひくと、2020年を待たずして可採年数がゼロに到達するという、さらに恐ろしい結果となります。

無論可採年数という指標だけに未来予想の全てを託すのはバカげていますが、石油や天然ガスの可採掘年数がここ数十年ほとんど変化していないことと対比すると、石炭の状況が近年急激に悪化しているのは、決して的外れではないでしょう。これは近年の、世界的な化石燃料としての石炭と、その埋蔵量の再評価に起因するモノ、そう言えます。


石炭に明るい未来を夢想されている方々には残念なお話ですが、現実がどういう結果を弾き出すのであれ、以上の内容は決して忘れるべきではありませんね。


地球温暖化・温室効果ガス増大の原因が化石燃料にあるかどうかは緒論ありますが、以上の内容は例えCo2排出による温暖化促進と引き換えにしてでも、エネルギーの問題は他に変え難い…それを端的に示す指標とも言えるのです。まぁ、これもヒトの生み出す理不尽の一端ではありますが。




石炭の話はここで一応終わりにして…


続けて話題としたいのがメタンハイドレート、なかでも米国産シェールガスの実用性についてです。



水圧破砕法(フラッキング)と呼ばれるその手法は、地中深く掘った穴に大量の液体を注入し、その強力な水圧によってシェール(頁岩)を破壊、そこから天然ガスを採取するというモノだが、地中深くを広範囲に破壊するため思わぬところから天然ガスが噴き出したり、地下水にガスが溶け込んだりする。もちろんこうして汚染された水は、飲料水として使用出来ないどころか、ペンキの様な臭いを放ち金属の様な味がするという水なのだ。


そして極めつけは、何と火種を近づけると引火するという、恐怖の水だということ。




言うまでも無く、大気汚染への寄与も計り知れない。初めは異臭を感じても、次第に嗅覚が麻痺し、何も臭いがしなくなり、次に味覚が殺され味を感じなくなるという。まるで毒ガスそのものである。


「ガス汚染された家のまわりで、バーベキューはできないな。」などとアメリカン・ナイスジョークのつもりで言っていたら、本当に家が吹き飛んでしまったという、まるで中国の様な事件も実際にあったのだ。


健康被害も底無しである。頭痛・耳鳴りから末梢神経に障害が現れはじめ、最終的には「回復の見込みのない脳障害」となるのだという。こうした被害が全米各地で報告されてもなお、米国はシェールガス開発を止めようとしない。なぜならシェールガス革命はアメリカの国家戦略だからである。そのため、ブッシュ政権時代に定められた「エネルギー政策法(2005)」において、シェールガスの開発シェールガスが「水質浄化法(1972)」・「安全飲料水法(1974)」の除外を受けた。つまりシェールガス開発で水が汚染されたとしても、誰も法律では裁けないことになったのである。その黒幕とは、いったい誰なのか?




ディック・チェイニー。かつてのブッシュ政権下で副大統領(2001年 - 2009年)だった男。




チェイニーは元々開発企業大手ハリバートンのCEOであったためシェールガス開発業者との癒着が強い。彼はエネルギー増産の名のもとに開発業者の規制(大気汚染・水質汚染・CO2)を次々に撤廃していった。その方針は徹底した秘密主義で、情報公開を求める議会や官僚には徹底して対抗した。政府の後ろ盾を得ているシェールガス開発業者は無敵だったのである。


住民の健康被害やクレームは全て金で解決し、金をもらった住民は不都合なことを一切公言しないという「契約」を書面にて結ばされる。実際、ほとんどの住民は口をつぐんでしまっている。



※ 

ここまでお読みいただいて、賢明な方は既にお気づきかと思う。この構造、日本の「原子力ムラ」、もっと言うと財政面での不遇故に原発誘致し、交付金・原発自体の固定資産税・核燃料税等で莫大な収入を得て口をつぐんでしまった各市町村そのものではないか。


反原発の皆様は、日本の原子力ムラが憎いあまり、米国で同様の光景が増大しようとも知ったことではないのですかね…あ、そうか。反米ゆえに、そんな醜い構造は米国に押し付け、日本が無事ならそれで良いよと。


管理人もエセでない反米の真髄目指していますので、一部同意ですが、このシェールガス、日本でも採掘の動きがあるのをご存知なのですよね?


原発を毛虫の様に嫌って代替エネルギーを、まるで子どもがおもちゃをおねだりする様に欲した反・脱・卒原発の皆様は、シェールガスが招く「原子力ムラの再現」が現実になろうとも、その時には既に前言撤回など不可能な状況となりますが、それで良いのですよね?




全米中の地下が何万・何十万という穴で虫食いのようになり全米の水が汚染されたのと引き換えに米の「天然ガス」生産は急増した。2009年には米がロシアを追い抜き天然ガス生産で世界No.1となったのである。「将来的には天然ガスの輸入が避けられない」とまで言われていた米が一躍天然ガスを輸出し利益を上げられるようになったのである。


シェールガスが利益を上げられるようになった背景には石油価格の高騰がある。かつてシェールガスの採掘は採算が合わず、実用化は夢物語と思われていた。しかし石油をはじめとするエネルギー価格の上昇により、シェールガスも利益が上げられるようになったのである。石油価格の高騰の背景には米が増刷した大量のドルが世界的なエネルギー・インフレを引き起こしたから、とする批判もある。そしてそのインフレは米にシェールガス革命をもたらした。世界は米に翻弄され、米国民も被害を受けながら、この革命はなされたのである。


シェールガス採掘による水質汚染は極めて深刻である。採掘には大量の水が用いられるが、その大量の水にはおよそ600種類の有害物質が混入されている。そして採掘後にその大量の水の有害物質は適正に処理されない。そのため、採掘地域の水はあらゆる有害物質で汚染されることになる。それを取り締まるべき法律(安全飲料水法)は既述の通りで、全く骨抜きにされている。


(続く)




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