今日は仕事を辞めた日。


大学の恩師が卒業する私たちにくれた詩を思い出す。


大好きな詩。








行かなかった道

ロバート フロスト
 (駒村利夫訳)


黄ばんだ森の中で道がふたつに分かれていた。
口惜しいが、私はひとりの旅人、
両方の道を行くことはできない。長く立ち止って
目のとどく限り見渡すと、ひとつの道は
下生えの中に曲がりこんでいた。



そこで私はもう一方の道を選んだ。同じように美しく、
草が深くて、踏みごたえがあるので
ずっとましだと思われたのだ。
もっともその点は、そこにも通った跡があり
実際は同じ程度に踏みならされていたが。



そして、あの朝は、両方とも同じように
まだ踏みしだかれぬ落ち葉の中に埋まっていたのだ。
そうだ、最初眺めた道はまたの日のためにと取っておいたのだ!
だが、道が道にと通じることは分かってはいても、
再び戻ってくるかどうかは心許なかった。



今から何年も何年もあと、どこかで ため息まじりに私はこう話すだろう。 森の中で道が二つに分かれていて、私は― 私は通る人の少ない道を選んだのだったが、 それがすべてを変えてしまったのだ、と。