前回、私のブログを読まれた方はご存知と思いますが、
我が家の将軍さまの無慈悲なるご英断により、
私は「平日限定1,000円支給」という、小遣い制度を余儀なくされました。
日々の昼食、ドリンク、たまにタブレットを買えば、
私が自由に使えるお金の余地はありません。
ですが私は希望を持ちました。
100円でも日々余れば、10日で1,000円、100日で10,000円貯めれるのではないか。
もしそんなに貯まったら何を買おう、ブックオフでも行き漫画を全巻揃えよう。
そんな淡い期待を膨らませていました。
しかし、現実はそんなに甘くはありません。
将軍さまの、緻密な計算で作り上げられた平日のみ1,000円支給制度は、
一向の猶予さえ与えられなかったのです。
私はいつものように会社で働いていました。
何も変わらない時間が過ぎ、与えられた仕事をこなしていると、
何かいつもと違う空気が辺りを包み込みました。
一瞬キーボードを打つ手が止まってしまったことを今でも覚えています。
辺りを見回すと、会社の入り口に黒づくめの女性が少しの汗を拭いながら立っていました。
そしてその女性は間(ま)を見計らい私達にこう告げます。
「お弁当はいかがでしょうか。」
その言葉を聞き、私はすぐに我に返りました。
それは何故かと言えば、お弁当屋の売り込みなど日常的にあり、
どうせ何処でも一緒だろうと、
半ば呆れた気持ちがとても強くはたらいたからです。
しかも値段はそこそこする。
私はその彼女の売り込みを断ろうと思い、側に近寄りました。
そして優しい口調で、
「申し訳ないですが、うちには‥」
私は言葉を失ってしまいました。
カウンターに無造作に並べられた弁当を見て、一瞬で心を奪われたのです。
透明感と輝きがある【Riz(お米)】は一粒一粒が存在感を主張し、
見ているだけでもワクワクする。
その横で黄金色で包まれた【Poulet frit(唐揚げ)】が輝き、
極め付けは、一晩中煮込んだことが容易に想像がつく【Sauce(タレ)】に
漬け込まれた【Hamburger(ハンバーグ)】が、今にも口の中に飛び込んできそうでした。
もちろんそれだけではありません。
栄養バランスがしっかり考えられ、その主役たちを衛護するかのように
【Legumes(繊維性食物)】達が脇を固めていたのです。
空(Riz)、大地(Hamburger)、海(Sauce)、植物(Legumes)、生命(Poulet frit)、
お弁当箱という小さな宇宙の中で、アースが具現化していました。
「あなたは何処に所属されている方ですか?」
私は思わず口開きました。
「ハガクレです。」
彼女は誇らしげに伝えました。
「こんなに素晴らしいお弁当に会えたことはとても幸運です。
ですが私にはこんな高価なお弁当を買える程の経済力を持ち合わせておりません。
非常に残念です。」
「私はあなたに謝らなくてはいけません。
あなたは、本当はこのお弁当を手に取りたいという気持ちで一杯なはずです。
しかし、高価なのではないかという疑念から、諦めなくてならないという決断に、
あなたを追い込ませてしまったことを。」
「おっしゃっている意味がわかりませんが?」
「このお弁当は○○円です。」
おろし立てのワイシャツを、汗で少し滲ませてしまったことを後で気が付きました。
私の平日のみ1,000円の救世主(メシア)となることが瞬間的に分かったのです。
100円貯金も出来るかも知れない‥‥。
まさしくその時、運命の歯車がゆっくりと回り始めたのです。
「私はこの奇跡の出会い感謝いたします。
毎日あなたにお会いすることは可能でしょうか。」
「それはできません、余った日のみです。」
時がしばらく経ち、
ハガクレの歯車に、新たに三つの歯車が加わりました。
三人の女性です。
そのとても美しい女性達は自らをHyene de Hagakureと名乗り、
その歯車からもう外れることは出来なくなったそうです。
私が一番驚いていることは、この三人の共通点です。
ハガクレを愛するが故、その味の精度、風味、食感、調理方法を研究し、
それぞれの家庭で再現しようと日々努力をしていることです。
ハガクレの味は、食べる者のみならず、その者たちの生活環境へと伝わっていきます。
すなわち、家族や周り、そして子供へ、次世代に自然に受け継がれていっているのです。
私の予測が正しければ、このままいけば2050年には全国の家庭の味が、
元を辿ればハガクレという時代になるでしょう。
ハガクレは生きとし生けるものたちが忘れかけていたことを伝えるために、
時代の救済者として我々の前に現れたのかも知れません。
ある人はハガクレをこう呼びます。
Dejeuner de la terre(デジュネ デ ラ テラ)「地球のお弁当」と‥‥。
※グーグル翻訳より