部室
淳 由起?…どうした?
由 いえ…大丈夫です…
淳 大丈夫って顔じゃないけどな…。啓太となんかあったか?
由 えっ…なんで…
淳 あいつが部室から出てくとこ見えたんだよ。
由 …うっ…
淳 由起…
由 ふっ…うぅっ…
顔を両手で覆い、俯く由起。
淳 …
ギュッ
由 ⁈
淳 よしよし。
由 せ、先輩⁈
淳 ん?なに?俺じゃ不満?
由 いえっ、そういうことじゃなくて!
淳 あははっ。大丈夫。由起が思ってるようなことは全然ないから(笑)
たださ、かわいい後輩が泣いてたらほっとけないでしょ?
そして泣き顏だって見られたくないだろうし。だから今だけこの大きな胸を貸してやるから思う存分泣きなさい(笑)
由 先輩…
淳一の胸の中で涙を流す由起。
由起の頭を優しくなでる淳一は優しく微笑んでいる。
淳 ほんとはさ、俺の胸なんかじゃなくて啓太の方がいいだろうけど(笑)
由 なんでそれっ…
淳 え?いや、由起わかりやすいからさ(笑)気づいてないの本人くらいだろ。
由 …恥ずかしい…
淳 …ごめんな。由起…。
由 え?
淳 いや…。啓太とさ何があったか分からないけど、お前らはきっと大丈夫…。
自分の気持ちには正直でいてくれよ?自分に正直でいるって、実は大変で…でもすごく幸せなことだから。
由 ?
淳 俺みたいには…なっちゃダメだ…
顔をあげる由起。
由 それ、どういう…
ガタッ
由 ?
実 …っ
由 実彩子先輩⁈
駆け出す実彩子。
由 待ってくださいっ!実彩子先輩!
駆けて行く実彩子を追いかけようと部室を飛び出そうとしたその時。
パシッ
由起の腕を掴み制止する淳一。
淳 …
由 先輩⁈実彩子先輩行っちゃいます!
ちゃんと誤解だって言わないと!
首を横に振る淳一。
由 …っ。なんでですか⁈こんな誤解されたままじゃ、2人がっ…
淳 …いいんだ、これで…。
由 ⁈ どういう意味ですか⁈先輩?
淳 頼む…由起…。このままにしておいてくれ…。実彩子には…言わないでおいてくれ…。頼む…。
掴まれる腕に力がはいる。
真剣な眼差しで…でもすごく辛そうな表情で頭をさげる淳一。
由 どう…して…?先輩…
ーーーーーーーーーーー
実 …
由 私はどうすることもできなくて…。淳一先輩はそのまま帰ってしまいました…。ただ、やっぱり実彩子先輩に誤解されたままは嫌で…何日かして先輩の家に行ったんです。そしたら…
実 淳一は…いなくなってたんだね…
由 …はい。結局なにも分からないまま…私が悪いんです…もっと早く先輩に話を聞いて誤解を解いていたらこんなことには…2人は今だって一緒に…
実 ううん…。それはきっとなかったと思う…。
由 そんなっ!そんなことありません!だってあんなに…
実 啓太くん…きっと淳一から相談されてたんだね…。
由 え?
実 私、聞いちゃったんだ。淳一が「実彩子といると苦しい…疲れる…」って友達に相談してるの…。
その友達がね…啓太くん。
由 …っ。
実 だからね、由起ちゃんが私と淳一のことを啓太くんに話した時、きっと言いたくても言えなかったんじゃないかな?
淳一が由起ちゃんを止めたのも…きっと私との距離をおくためなんだろうね。
由 そんな…
実 ごめんね…。私達のことに2人を巻き込んじゃって…。
由 実彩子先輩…
実 淳一も…はっきり言ってくれればよかったのにね。なんで、何も言わないでいなくなっちゃったんだろう。好きじゃなくなったんならそう言えばいいのに…
無理に笑いながらジュースを口にする実彩子。
由 淳一先輩は実彩子先輩のこと…嫌いになんかなってないと思います。むしろ…大好きだったと思います…。
実 そんなこと…
由 卒業式の少し前のことですけど、先輩言ってました。「宝物は大切にしすぎると自分で壊してしまいそうになる。それが怖い」って…。
その時見てたのは、実彩子先輩の写真です…。だから私は絶対、淳一先輩が嫌いで別れたなんて思いません…
実 由起ちゃん…
由 なんて、私が言えることじゃないですね…本当にごめんなさい…。
実 ううん…もういいの。
あの頃は悲しくて、どうしようもなかったけど…今ね、不思議なくらい落ち着いてるんだ。淳一が離れていった理由は分からない。あの部室でみた光景が誤解だってことも分かって、少しほっとしたような気持ちもある…。
けど、きっとね、もう淳一はいないっていう事実を私の中で受け止められたのかなあって…
淳一とのことは大切な思い出にしようって…そんな風に思えるの。今は…
だから…
由起ちゃんと話せてよかった。
ありがとう。
由 先輩…