◆伊藤整『改訂 文学入門』講談社文芸文庫、2004年12月

『小説の方法』のしばらく後に書かれた本。伊藤は『文学入門』に続いて『小説の認識』を出している。

『小説の方法』はかなり面白い本だったので、続けてこの『文学入門』も読んでみることにした。『小説の方法』はやや難解な本であったが、『文学入門』は『小説の方法』の解説に位置するような本で、非常に読みやすい。具体的に文学作品を分析しながら論じているのが功を奏している。『文学入門』のほうが、伊藤整が何を考えようとしているのかが理解できるので、こちらを先に読むといいのかもしれない。

《ある社会をいかに見るか、ということは、その作品の内容に思想として現れるだけでなく、その文体にも現れるのである。(p.118)》

こうして文体と社会の関係を論じるところは、見逃せない。伊藤整は、しばしば音楽を引き合いに出すことがあるが、こうしたところもバフチンに似ている。

批評家、理論家としての伊藤整は再評価されるべきだなと思う。

伊藤 整
改訂 文学入門