◆中上健次『千年の愉楽』河出文庫、1992年10月

「オリュウノオバ」は、「路地」でただ一人の産婆だ。彼女は字が読めないが、記憶力がすぐれており、路地の人間の生まれた日や亡くなった日を覚えている。物語は、「中本の血」が流れる男たちの性的快楽の日々と悲劇的な最後を語る。オリュウノオバは、男たちの行く末を見守っている。神話的な雰囲気を感じる物語。

中上 健次
千年の愉楽