「直木賞作家」となる佐藤正午さんが若い時に「佐世保で考えたこと」となれば……

「沖縄」「普天間で考えたこと」のような視座を期待するでしょうか?

[2024・9・27・木曜日]

 

 

 

佐藤正午さんのエッセイ本『かなりいいかげんな略歴 1984-1990』(岩波現代文庫)を読み終え、同じくエッセイ本の『佐世保で考えたこと1991-1995』(岩波現代文庫)も読了しました。

 

『~で考えたこと』という書名は、昔、堀田善衛氏の『インドで考えたこと』(岩波新書)なんて本がありました。堀田さんはそんなに好きな作家ではないので、小説はむろんのこと、エッセイ本もあまり読んだ記憶がありません。スペイン関連書など「積ん読」は少ししていますが。どちらにせよ、堀田さんのような人が『インドで考えたこと』となると、ちょっと生真面目な思想紀行本だと思われます。

 

ほかにも司馬遼太郎さんの『司馬遼太郎が考えたこと(新潮文庫)と題したエッセイ本が何冊も出ているようです。司馬さんのエッセイ本は、何冊かは読んだ記憶があります。基本的にマジメな本かと。

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その点、佐藤さんの『佐世保で考えたこと』は……。「佐世保」といえば、軍事基地もあるところ……。米国原潜もよくきます。ハンターイの雄叫びもこだましているところです。

「沖縄で考えたこと」とか「普天間で考えたこと」といった「戦争と平和」などに関する考察が、地元に住む純文学作家、いや後に直木賞作家になる佐藤さんならではの視座が展開されているのだろうかと思いました。しかも版元はあの岩波書店なのですから。さらに「岩波現代文庫」ですよ。角川文庫でいえば「角川ソフィア文庫」から出ているような感じですよ。

ほかにも、岩波書店からは『佐世保―基地の一形態 (岩波写真文庫 復刻ワイド版 (53)―シリーズ 戦争の記録 1952〜1956)』なんて本も出てました。「佐世保」といえば「軍事基地」。「軍事基地」といえば「ハンタイ」ですよね?

 

ところが?

ご本人も、こんなタイトルをつけて「これでいいのかな?」と不安に思っていたようです。もっともな不安です? でも編集者がお勧めしたようです。

 

佐世保に住んでいて、そのころ「水飢饉」が発生し、四苦八苦したことがあったようですが、そうした状況下で「考えたこと」などが綴られているわけです。抱腹絶倒とまではいかないまでも、昭和世代だと、クスクスと笑えるユーモアタッチではあります。読んで退屈することはありません。

 

ミニ小説なども収録されていました。三無主義の回想もありました。無気力、無感動、無関心。

さらに、四無主義もあって、さらに無思想とかも。五無主義も? 追加項目は「無責任」?云々と我々の世代は言われていたことを思い出しました。

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このエッセイ本は三冊シリーズで、さみだれ式に刊行されているようです。今月は、三冊目の『つまらないものですが。 エッセイ・コレクションⅢ──1996-2015 』(岩波現代文庫) も刊行された模様です。

 

そこまで謙遜しなくてもいいのではないでしょうか? 読んでみたいと思います。

 

では、ごきげんよう。