一泊二日の旅行に持参すべき本は、作家の分厚いエッセイ本に限るって本当ですね!

黒木亮氏の『世界をこの目で』(角川文庫)は正解でした!

[2024・9・11・水曜日]

 

 

 

 

 

先日、一泊二日の旅行にでかけました。もちろん国内ですが、飛行機にも久々に乗りました。こういう旅行をする時にいつも思案するのは、旅行中に何を読むべきかということです。

荷物は軽めがいいに決まっています。一泊二日なので、ノートパソコンも持参しません。夏ですので着替えの下着はちょっと多め。一泊二日ですから、通常は厚めの文庫か新書一冊があれば十分かと。

 

さて、どの本がいいかと本棚を前にして思案。結局手にしたのは、「積ん読」して久しかった1957年生まれの黒木亮氏の『世界をこの目で』(角川文庫)でした。2018年刊行。360頁。39字×18行。文庫としては、活字量はシルバー世代にはギッシリ感があります。「大きな活字」ではありません……。

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この選択は正解でした。行く時の飛行機は、機内への案内は遅れるし、機内に入ってからも、機内設備に不具合があり、いまから修理する云々で、なんと出発時刻は一時間近く遅れました(到着は空を飛ぶ時にスピードアップしたのか30分遅れでした)。そういう時も手頃な文庫があれば、いらいらも多少はおさまります。

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黒木さんは、大学卒業後、三和銀行に入行。同行の海外派遣制度でカイロ・アメリカン大学に留学し、上級アラビア語コースを修了した後、大学院で修士号(中東研究科)を取得しています。

その大学院での四苦八苦の勉強ぶりも、このエッセイ本に書かれていました。「カイロ・アメリカン大学」といえば、あの小池さんが通っていた大学?  小池さんはこの大学にちょっと在籍した後に、さらなる難関大学「カイロ大学」に移り、首席で卒業したと自称しています。

同じ部屋で一緒に生活した女性の証言が収録されている石井妙子氏の『女帝小池百合子』(文春文庫)を読む限り、黒木さんのような猛勉強をした形跡はありません。それでは、とても学士レベルの四年制大学でも卒業するのは無理だったのではないでしょうか?

 

黒木さんは実録小説といった本もよくお書きのようです。エジプト・カイロへの留学体験もある黒木さんなら、小池百合子さんを主人公にした「国際謀略小説」もお書きになれるのではないでしょうか? 題して『カイロから伸し上がった女帝』とか?

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その後、黒木さんは銀行を辞め、ロンドンの証券会社を経て、三菱商事ロンドン現地法人に入社。そして40代半ばすぎに作家として独立し、今日にいたっているとのことです。国際金融などを舞台にした小説を書いているとのことですが、あいにくと読んだことはありませんでした。

しかし、このエッセイ本を読み、黒木さんが国際金融の修羅場を体験し、それらを乗り越えて、さまざまな話題作を刊行しているということがよくわかりました。

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黒木さんの本を読んで驚愕したのは、かつて勤務した三和銀行が、不正な融資などをして訴えられて、その責任をまったく無関係の黒木さんに押し付けていたということです。被害者の方から、あなたは連絡不明になっているけどと連絡を受け、古巣の姑息な陰謀を知って、慌てて被害者側の証言者として帰国したりもしています(当時、ロンドン在住。英国の永住市民権も得ていた)。その体験をもとにした小説も書いているとのことです。

 

青法協問題など、さて?と思う箇所もありますが、総じて、いい意味で我武者羅に生きてきたダイナミックな人間の気骨ある正論の数々に共鳴を覚えました。若い時に書いたものを本にしてもらいたく出版社に売り込みをしていますが、その出版社別の対応の違いなども面白いものがありました。編集者も大変です?

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エッセイ本ですから、いずれも短文エッセイです。帰りは空港に早めに移動し、ロビーの隅っこの椅子で2時間ほど過ごしましたが、この本があったので退屈しませんでした。

 

帰りの飛行機は夜の便で機内の照明が消えて、読書灯だけが便り。さすがに、活字小さめの文庫本ですから、ちょっと苦労しましたが、なんとか行き帰りの旅行中に400頁弱の文庫本を読了することができました。

 

黒木さんは、仕事がら世界各地を周り、日本国内も全県制覇しているとのこと。そんな飛行機乗りに比べれば、こちらは飛行機に乗るのは稀。沖縄にも行きたいと思っているのですが、昔仕事ででかけただけ。そのときは飛行機でしたが、船で行くわけにも行かず。

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今回、飛行機に乗って驚いたのは、機内の窓のカーテンが全部おりていたことでした。なんでもJALさんは、次世代にこの豊かな地球を伝えるため(持続的成長がどうのこうのとアナウンスしていました)、空から見る地球がいつまでも美しくあるように、環境への負荷を減らし、地球温暖化防止につながるさまざまな取り組みを行っているとのことで、ご賛同いただけるお客さまにご協力をお願いしながら、駐機中に窓の日よけを下ろし、機内の温度上昇を抑える取り組みを実施していますとのことです。

「客室乗務員が外部を確認するための窓を除き、到着および出発時に日よけを上げることは、法令上求められておりません。また、整備士、地上スタッフなど外部からの十分な監視体制を確保しており、日よけを下ろす活動による安全上の問題はありませんので、ご安心ください。

なお、この取り組みの実施により、10分間補助エンジンの使用を減らし、エネルギー効率の良い地上電源に切り替えることができた場合、次のとおり環境効果が期待できます。(以下略)」とホームページにも出てきました。

 

ちょっと溜息をつきました。本気で?  マジで? そう思っていらっしゃるのでしょうか? でも一理あります。

 

そのうち、機内読書灯の使用も、機内の温度上昇につながり電気代の増加にもなるので「使用停止」にいたします……とならなければいいのですが。企業によっては、法律で定められている「検査」を勝手に省略して、自社の「持続的成長」に邁進しようとして処分を受けたところもありましたでしょうか? そんな我田引水は許されませんが、JALなどの姿勢は立派ではないでしょうか?

 

夜の9時頃到着した羽田空港。まだ出発便もあるのでしょうが、待機ロビーなど人もまったくいないところが多々ありましたが、そこにはテレビが煌々と輝いていました。一般のテレビ番組を流しているのか、広告などを流していて飛行機会社の収入になっているのか知りませんが、このだれも見ていない「テレビ」をオフにするだけでも、「地球温暖化防止」「電気代節約」に役立つのではないかと思わずにはいられませんでした。

JALなど航空会社のますますの「持続的成長」実現のための「節約」路線が拡大することを祈念したく存じます。頑張ってください。応援してますから。

 

それもあって、めったに遠路の旅行は控え、飛行機にも乗らないように心がけたく思います。JALなどのポイントカードも持っていますが、換算したこともありません(めったに乗らないので、そもそもポイントなど微々たるものでしょう)。どうせ無効になっているでしょうから。「無効」扱いにして事実上の寄付をしています。これも立派な社会貢献かと?

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あと別件で驚いたのは、旅先で知人の車に乗った時です。私はペーパードライバー(優良ドライバー)。その知人の車は数年前に購入したもので最新型ではないのですが、田舎の道路を走っていても、「まもなく一時停止箇所があります」とアナウンスが車内で流れるのです。バックで駐車場に入れる時も、後ろが写るカメラがあり、向きなども表示され、いちいち後ろを見たりせずに、簡単にできます。

 

40年前、教習所で車庫入れなどで苦労した思い出がありますが、いまでも、教習所ではそういうことはやっているのでしょうか? そういえば、当時はオートマ車などなく、ギアを入れたりあれこれしていました。そのおかげか中型車(八t)を運転できることになっています。

 

ほかにも、雨が降ってきたら自動的にワイパーが動いたり、暗くなるとライトが点き、対向車が来るとライトは下向きになったりするとか?(そのときは昼間の晴天)。

シルバー世代のペーパードライバーには、驚きの世界でした。たまに旅に出ると、ロバもびっくりです。

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今後、一泊二日程度の旅に出る時、持っていく本は、タイトルからして私に相応しい本にしようかと思っています。ジョン・ル・カレの『シルバービュー荘にて』 (ハヤカワ文庫)です。そのとき、地球温暖化阻止のために、ムダなものは廃止しますということで、機内の読書灯が「廃止」「停止」になっていなければいいのですが……。

天ぷら油かなにか廃油を航空燃料にするとかも聞いたことがあります。そもそも、飛行機には「窓」がないほうが安く作れるとか。合理的な節約などはやってしかるべきでしょうが、危機管理的に外の光景を乗客も確認できる必要もあるでしょうし(翼から火が出ているとか目視できたほうがいざという時には役立つ?)。

 

まぁ、あまり細かいことばかり気にしても……。バイロン・リース&スコット・ホフマン『この世からすべての「ムダ」が消えたなら 資源・食品・お金・時間まで浪費される世界を読み解く』(白揚社)も「積ん読」したまま。人生には「ムダ」が必要な時もあるんでしょうね。

 

では、ごきげんよう。