
¥420
Amazon.co.jp
当店は本の配達業務も行
っている。
お店等への定期配達が主
で、散髪屋、美容院、喫
茶店、病院と口伝えで顧
客が増えていっている。
誠にありがたいことであ
る。
だが今日はそれで配達ミ
スを犯してしまったのだ。
顧客が増えた分、よく似
た英語名の散髪屋も増え
た訳である。
納品書を確認しながら配
達すれば間違いも起こら
ないのだが、
「英語名の散髪屋はあそ
こね」
と思い込みで配達をして
しまったわけだ。
「たけうちさん。今日届
けてくれた雑誌、うちの
と違うよ」
帰店後、電話に出るとそ
このイケメン店長から連
絡を頂いた。
申し訳ございません、と
顔を朱に染め直ちに引き
取りに伺い、本来配達す
べき散髪屋へと急いだ次
第である。
今後はこのようなミス防
止のため、納品書店名欄
の横に所在地住所を記載
するように致しました。
イケメン店長さん、すみ
ませんでした。
そしてお忙しいところ、
ご連絡ありがとうござい
ました。
ミスといえば運輸会社に
入社して間もない頃、こ
んな失敗をしたことがあ
る。
「この書類、○○会社に
FAXしといて」
上司に頼まれた僕はFA
X機に向かった。
暫くすると先方から苦情
の電話があったらしく、
送話口を押さえた上司が
「たけうち君! FAX
は出来てるのかっ」
と席を立って立腹してい
るのである。
僕はFAX機から顔だけ
上げて弁解した。
「はい。FAXしてます。
でも、何度FAXしても
原紙が下から戻ってきて、
まだ届けられてないんで
す」
一瞬、不意打ちを食らっ
たように社内が静まり返
った。
皆の視線が僕に集まり、
そろばんを弾いていた経
理のおばさんから、難し
い顔をして見積書を書い
ていた先輩から、マフィ
アのボスみたいな会長ま
で、社内中の全員が大爆
笑となった。
お陰で上司の
「先方に同じ書類が三十
枚も届とるぞっ」
という怒声はかき消され
たのであった。
僕はその頃なぜか、FA
Xというのは原紙があの
電線の中を通って相手方
に届くものだと思い込ん
でいたのである。
思い込みは危険なのだ。
作家の江國香織氏も僕と
同じようなFAX思い込
み間違いをアルバイト先
で披露してしまったらし
く、僕はその話を読んで
彼女のファンになった。