活字中毒カエルの『本の虫ケラ』

活字中毒カエルの『本の虫ケラ』

偏食気味の管理人が、読んだ本の感想をのらりくらりと偏見たっぷりに書いていきます。

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密室・殺人 (角川ホラー文庫)/小林 泰三
¥780
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☆ 内 容 ☆

息子の容疑を晴らしてほしいという依頼を受けて四里川陣は助手の礼子を現場へ派遣する。

不気味な人々、人皮紙の本を収集する容疑者、幻視に悩まされる礼子…。究極の新本格ホラー推理。

小林作品ではあまり多くはない長編、しかもミステリー。

なんていうか語彙が貧困で申し訳ないんですが、「本当に面白かった」です。

とにかく、キャラクター立ちすぎ。(もちろん良い意味で、ですよ。)

トリックは比較的オーソドックスですが、ミステリー要素に関しては読み応え有り!


あくまでも『密室殺人』ではなく、『密室・殺人』っていう所もミソなんですが、

そんなことより、もう、読後は小林先生が仕掛けた罠に「ぐはぁっ!」とハマっちゃってください。

ただ、短編の小林作品を読みなれてるせいか、文章が間延びしてる感が否めず。

長編には長編の良さがもちろんあるんですけど、ここまで長くしなくても良かったのかな、と。

まあ、キャラクター達やストーリー自体が魅力的なので、飽きることはありませんけど。


この作品の中で良い味出しまくってるお爺さんは『モザイク事件帳』 でも活躍してくれています。

なんか、今回の感想、いつもに増して頭悪そうだ。

でも私が味わった楽しさが少しでも伝われば本望です。


満足度★★★★☆



ちょっとでもキーワードを書くと、ネタバレになりそうで怖くて書けないっていう本音もありつつ。


独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)/平山 夢明
¥600
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☆ 内 容 ☆

表題作のほか、

『C10H14N2(ニコチン)と少年-乞食と老婆』

『Ωの聖餐』

『無垢の祈り』

『オペラントの肖像』

『卵男』

『すさまじき熱帯』

『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』

収録。

2007年の、このミス第1位。ですが一般的なミステリー要素は薄い。

グロかったりエグかったり。だけどギャグも多数散りばめられてます。


これはまた、なかなか気分を重たくさせられました。

正直に言うと、かなり嫌な気分にさせられました。

なぜなのかは自分でもよくわかりません。

文章とか、内容とか、そんなに嫌いな感じではないはずなんですが、

汚い言葉で言ってしまうと、「胸糞悪くなる本」でした。

何て言うんだろ、作品全体が悪意に満ち溢れていると言うか。

どの話も、頭から終わりまで細部に渡り悪意をぶつけられてる感じなんですよね。
(一部あてはまらない話もあります)


で、後半に行くと、だんだん慣れてきたのか、

はたまた作風が若干違ってるのか、

相変わらず悪意はぶつけられっぱなしですが、その威力がやや弱まります。

まあ、良い意味でも悪い意味でも読みやすくなるわけです。

そしてそのままフワッと終わる。

とどのつまり、オチが弱い。 (と、私は感じてしまう)


なんだろなぁ、要は、単に私がこの本に収録されてる話達に、

まったくハマれなかっただけのことなんでしょうけど。

あと、帯があまりに豪華で魅力的だったので、

期待が高すぎた、もしくは少し違う方向を期待してしまったのかも。

ちなみにお薦めは『無垢の祈り』。


満足度★★☆☆☆



『ニコチンと少年』は、一度普通に読んだ後、

副題を意識して読み直すと全く違った話として読めました。

(この解釈が正しいかどうかは別として。)

そう考えると、他の話も、私の読み込みが浅いが故の低評価?

臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)/小林 泰三
¥700
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☆ 内 容 ☆
男が旅の途中、街で見つけた「臓物大展覧会」という奇妙な看板。
中に入ってみると様々な臓物が展示してあり、しかも居合わせた謎の人物から
「臓物の呟きを聞きたいか」と問われ、男は異様な体験をすることに……。
『透明女』『ホロ』『少女、あるいは自動人形』『攫われて』
『釣り人』『SRP』『十番星』『造られしもの』『悪魔の不在証明』
と、ドドンと9作品が収録されています。
ただし、ほとんどが雑誌などで発表済みのものでした。

表紙のインパクトとタイトルの不穏さに躊躇される方もいるかもしれませんが、

書き下ろしである『透明女』と『悪魔の不在証明』以外は

それほどグロい描写はありません。

SSもあったり(『釣り人』)、コメディタッチのものもあったり(『SRP』)、と、

なかなか飽きずに読めるのではないかと思います。

逆に表紙のおどろおどろしさに惹かれて買われた人は、

相当な肩透かしをくらったことでしょう。

それぐらい、サクっと、カラっとした話が多かったです。

(ちなみに私は後者だったので、若干の消化不良)


私のお薦めは『悪魔の不在証明』。

こんなにイライラしながら小説読んだのは初めてかも。

それぐらい主人公の言動が逐一ムカつきます。

まあ、でもお薦めするぐらいですからムカつくままでは終わりませんよ。

『透明女』は非常に、いや、異常なぐらいグログロです。

恐らく、小林作品の中でもトップクラスにグロテスクなんじゃないかなぁ。

私は好きなんですけど、大好きなんですけど、

さすがに、ここまでグロくなくてもいいんじゃないか、っていう。

POPなシーンもあるけど、完全に打ち消されちゃってますからね。

まあ、しつこいようですが、私は大好きなんですけど。


満足度★★★☆☆



正直、読む前の期待度というか、題名からの先入観が邪魔でした。

書き下ろしの2作については★5つなんですけどね。

家鳴り (新潮文庫)/篠田 節子
¥540
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☆ 内 容 ☆

ありふれた日常の裏側で増殖し、出口を求めて蠢く幻想の行き着く果ては……。

巨大地震が引き起こす食糧危機『幻の穀物危機』

老女の心の中で育まれた介護ロボットへの偏愛『操作手(マニュピレーター)』

摂食障害のために限りなく肥満していく女『家鳴り』(表題作)

豚の世話だけに熱中する孤独な少年の心の爆発――。『青らむ空のうつろのなかに』

他『やどかり』『春の便り』『水球』収録。

抑圧された情念が臨界まで膨れ上がり、過剰な暴力となって襲いかかる瞬間を描いた戦慄の七篇。

『青らむ空のうつろのなかに』改題。

いやぁ、しつこい。

といっても、文章がくどくて“しつこい”って意味じゃないですよ、もちろん。

読み終わっても、しつこいぐらい頭の裏っ側にこびり付いてるってことです。

設定的にも完全にフィクションだし、一見現実味が無い話も多いんですが、

なのに、「自分がこの世界の住人だったらどうしよう」と

かなりのリアリティに支配されながら考えさせられてしまうストーリー。


短編なのに、一話一話に内包されているパワーがデカいデカい。

発信される情報量は、文章の長さに比例しないのだと改めて考えさせられました。

一文一文が頭にドカン、ドカンと入ってきます。


私のお薦めは『幻の穀物危機』。

これは実際に起きたらと想像すると怖すぎます。

真のホラーは幽霊や化け物ではなく、やはり人間の中にあるようです。


満足度★★★★★



お気に入りの本から感想書いてってるから高得点連発。

ぼっけえ、きょうてえ (角川ホラー文庫)/岩井 志麻子

¥500

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☆ 内 容 ☆
岡山の遊郭で醜い女郎が客に自分の身の上を語り始める。
間引き専業の産婆を母にもち、生まれた時から赤ん坊を殺す手伝いをしていた
彼女の人生は、血と汚辱にまみれた地獄道だった…。(表題作)

表題作のほか、

コレラ患者を密告するため設けられた密告函を管理させられることになった

村役場の男が主人公の『密告函』

暴力的な漁師の夫に嫁いだ女が主人公の『あまぞわい』

狐憑きかと恐れられ、陰惨な死を遂げた母を持ったが故に

村人に忌み嫌われる兄妹が主人公の『依って件のごとし』

の短編集。


ぼっけえ、きょうてえとは岡山弁で「とても、怖い」という意味。

舞台が岡山なので、登場人物たちもみんな岡山弁です。

これはこの本に限らず、岩井作品の特徴ですね。


日本ホラー小説大賞を受賞した表題作もさることながら、

他の収録作品も無駄な文字の羅列がなく言葉回しも秀逸です。

この陰湿さと淫縻な雰囲気を兼ね備えた文章は

岩井先生の専売特許かと思ってしまうぐらいの完成度の高さ。


ちなみに私のお薦めは『依って件のごとし』。

あと、文庫本のお楽しみといえば巻末の解説ですが、

京極夏彦先生の解説、こちらも非常に読み応えがありました。


満足度★★★★★



岩井志麻子パワーに完全に当てられた感じです。