河井事件と政党助成金<本澤二郎の「日本の風景」(3662)

<広島地検へ「安倍秘書4人捜査を」と列島市民の雄叫び!>

 政治をゆがめる永田町の不当な金集めを防止するという、偽りの名目で制度化した政党助成金が、河井選挙事件であぶりだされた。安倍晋三による1・5億円投入による岸田・宏池会壊滅作戦発覚で、疑惑の張本人である安倍とその秘書4人に、確実に流れた大金を捜査すべしと、列島から広島地検に対して、叱咤激励の雄叫びが遂に筆者の耳にも聞こえてきた!

 

<1・5億円の血税=金権買収資金=民主主義の根幹破壊>

 こともあろうに血税である政党助成金を、かつては護憲リベラルの宏池会壊滅作戦に悪用した安倍の手口に、官房長官や幹事長、それに公明党代表も関与していた?それゆえの1・5億円の発覚と想定されるのだが。

 いうなれば、歴史を紐解くと、国粋主義者の改憲野望のために、外堀を埋める関ヶ原の戦いだったともいえる。自民党を100%国家主義政党にする、安倍の最後の闘争となったものだろう。

 

 70年代以前から「公家の集団」と揶揄されてきたリベラル宏池会を、根こそぎ駆逐する安倍作戦に、菅や二階、そして平和を吹聴してきた山口らが関与しての、2019年夏の参院選だったことに驚きを禁じ得ない。1・5億円はそのための工作資金なのだった!

 

 血税が河井当選のための買収資金に大化けした一大金権参院選に、河井夫妻は狂喜して、見事にやり遂げたのだったが、むろん、買収金権選挙が発覚した以上、死中に活を求めた宏池会の反撃が表面化する。

 

 地元の中国新聞だけでなく、広島県警・広島地検と同高検も動く。500万円賄賂疑惑のある黒川弘務の検事総長人事に抵抗する最高検・稲田検察も、黙認はできない。広島地検の河井捜査を阻止したい黒川と、逆の稲田信夫の攻防戦も重なる!

 

 本題は、血税を使っての買収選挙によって、国民の代表が選ばれるとしたら、もはや民主政治は根幹から崩壊する。事実上の独裁を意味する。安倍が口ずさむ「自由で民主主義」は、口先だけでしかない。

 

 権力の走狗なのか、それとも独立した正義の検察なのか、という検察内部の抗争という側面もある。列島の市民は、後者を支援、いまや大きな世論となって拡大している。

 

<自民党街宣車「あさかぜ号」元隊長が暴露する安倍秘書の犯罪>

 ここで自民党本部の街宣車「あさかぜ号」の隊長経験者に登場してもらうと、安倍の4人の秘書の行動がくっきりと描き出される。

 「自民党総裁兼日本国首相の代理として参上しました」という安倍秘書の選挙運動の威力は、他を圧倒して絶大というのである。広島県内の大手企業・団体をすべて回って、河井を売り込む。依頼された方は、企業や団体の存亡とも関係するため、素人には理解できないだろうが、これは驚くべき効果を発揮するという。

 「河井は、現職の溝手の10倍以上の選挙資金もある。そこに安倍秘書4人が、広島県内の組織・団体から大企業までくまなく押しかけて、首相・総裁の名刺を差し出して、河井を売り込む。それはもう河井陣営にとって、県議に20万、50万円を配るよりも効果が出る。河井夫妻は1・5億円を安倍からいただいている。安倍秘書4人の接待は破格なものになる。宿泊先のホテルでの特別接待だけでもすごい。しかも、1・5億円の懐事情も知ってる。飲み食いだけでは終わらない。大金が4人の秘書にわたっている」と断言する元「あさかぜ号」隊長の解説を、自民党総裁首相の選挙応援に何度も同行した経験のある記者は、即座に納得できる。

 

 「河井秘書逮捕で妻の参院議員を国会から排除することはできるが、肝心なことは安倍秘書にメスを入れなければ、広島地検としては画竜点晴を欠くに等しい。世論が広島地検に期待する点はここに手中している」とも指摘している。

 

 

<永田町常識に稲田検察が動くか、世論の監視強まる>

 河井事件は安倍事件である、それ故に1・5億円の秘事が二階サイドから露見した理由である。これに公明党創価学会も、地元の学会員を河井投票に一本化、そのために菅も広島入りしている。

 

 安倍の権力が、総力を挙げて、岸田・宏池会の牙城を攻撃していた。知らぬは岸田文雄のみだった、ということになろう。宏池会の創設者の池田勇人は広島の人だ。前尾繁三郎―大平正芳―鈴木善幸の跡を継いだ宮澤喜一も広島だ。岸田は宮澤の縁者である広島で、護憲リベラルがを真骨頂としてきた自民党きっての保守本流派閥である。元祖は吉田茂。

 

 かくして宏池会の怒り・世論の叫びを、稲田検察が受け止めることが出来るのかどうか、ここが最大の河井事件の核心なのだ。世論の広島地検に対する激励と監視は強まってきている。

 

 

<菅・二階・山口トリオの10万円揺さぶりに安倍はふらつ毎日>

 すでに永田町・平河町・信濃町の雲行きは、昨今の異常気象のように変わってしまっている。

 筆者は、一律10万円支給は、あまりにもさもしい手段だとして評価しない。友人は「創価学会の会員は、老いて貧しい。それゆえの公明党に対する突き上げとなった。そこで山口が、安倍に政権離脱をにおわせて10万円を獲得した。おそらく暮れには、信濃町が吸い上げる資金にするだろうが」とにらんでいる。

 

 この一律10万円闘争で菅・二階・山口トリオの共闘で、安倍がふらついてしまっている。

 

 そのことよりも、4か月も経つのに「マスクがない」「医師の防護服がない」「人工呼吸器が不足している」という現状をどう乗り越えるのか。国民の命を救済できるのか。これこそが日本政治・安倍自公・日本会議体制に突きつけられている。国民の命を守ろうとしない政府、守れない政府が生き残ることはできない。

 

<国家存亡の危機に廃止論浮上>

 話題を河井事件に引き戻すと、困窮者を救おうとしない口先魔が、政党助成金317億円のうちの大半である179億円を懐に入れた安倍・自民党だとしても、その金が主権者を買収するための資金となったことに、日本人はこれまでのように、いい加減にやり過ごすことはできない。

 

 真正面から向き合って、ゆるぎない対応をする責任を課せられている。すなわち、政党助成金制度を廃止すればいい。不正と腐敗を助長する悪しき制度は、即座に廃止するほかない。そして、二度と河井事件を引き起こしてはならない。

 

 まともな国会であれば、率先して廃止すべきだろう。衆参議長の責任でもあろう。悪しき制度はいらない。いまは国家存亡の時である。

2020年4月22日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)