稲田検察の正念場<本澤二郎の「日本の風景」(3648)

<1・5億円河井金権選挙を支援した安倍秘書4人への数百万円疑惑>

 あと3か月と後がない検事総長・稲田が、広島高検・同地検を指揮する、河井夫妻1・5億円金権選挙捜査の本丸というとそれは、地元の中国新聞社も報道していないが、元自民党本部のベテラン職員によると、安倍の意向を受けて、河井選対を支援した4人の安倍秘書に流れた数百万円、いうところの還流金疑惑捜査である。

 稲田検察に熱い視線が集まる理由である。河井夫妻の逮捕は言うまでもないことだが、その先に血税である政党助成金1・5億円による買収資金の一部が、安倍秘書から安倍自身へ還流されているかもしれない、という極め付きの公選法・政治資金規正法違反疑惑だ。

 

 安倍が法相の森雅子を操り、500万円わいろ疑惑のある元法務事務次官で現在、東京高検検事長の黒川弘務を、定年延長させ、次期検事総長に起用する本当の理由であろう。多くの国民は、そう見ているようだ。

 

<公明党創価学会工作資金疑惑も>

 もう一つの疑惑も浮上してきている。事情通は「河井の参院選挙に地元入りした官房長官の菅工作も、疑惑に浮上してきている。菅の、公明党創価学会工作もあったろう」と指摘している。

 

 「現職の溝手を落選させた原動力は、広島県内の公明党創価学会票を、河井支持に一本化させたことだ。集票マシーンの創価学会票によって、河井は勝つことが出来た。菅と公明党創価学会の連携に、当然、金が動いている。これは官房機密費とみたい」という。

 頷ける分析であろう。

 

<判明した首長・県議への前法相手渡した買収資金>

 今回の河井夫妻の大掛かりな選挙違反事件に対して、広島を地元とするブロック紙・中国新聞の大活躍が、買収工作を次々と明らかにしている。

 ジャーナリズムを垣間見ているような新聞である。余談だが、東京新聞を買収した中日新聞、そして東京タイムズを中国新聞が子会社化すれば、たとえNHKが暴れまくっても、国政を自公の言いなりにさせることはなかったろう。

 

 東京タイムズは、徳間書店の徳間康快が平和相互事件に巻き込まれてしまい、そこに手を出してきた住友銀行の野望に吸い込まれて、無念にも廃刊を余儀なくさせられてしまった。権力に屈しない東京新聞・東京タイムズ・日刊ゲンダイの3社共闘が実現していれば、国粋主義を擁立する自公維体制を叩き潰すことが出来たろうから、何とも悔やまれる。財閥と国家主義の連携は、戦前からである。

 

 話を元に戻すと、中国新聞のお陰で、河井夫妻による県議や首長への買収が発覚した。一部の首長や県議は、買収金額を明らかにしている。町長を辞任する者も現れている。2020年の日本記者クラブ賞間違いなしだ。

 

 菅工作の行くへにもメスを入れてほしい。中国新聞の健在ぶりに、多少安堵することが出来る。新聞がまともであれば、悪党をのさばらせることはできないのだから。

 

<岸田・宏池会撃滅作戦の恐怖>

 それにしても、安倍の宏池会撲滅作戦はすさまじかった。側近の麻生太郎などの口車に乗せられて、安倍後継をさんざん匂わされた岸田。安倍自らも、後追いして、安倍外交を演じしてしまった。

 岸田は、人がいいだけの二世議員だから、その気にさせて、走らせてきたのだが、昨年の参院選で、安倍は大きな罠を仕掛けた。主役は河井夫妻である。岸田は地元で、現職の溝手を落選させてしまった。宏池会のボス失格で、派内は言うに及ばず、党内でも相手にされなくなってしまった。

 

 国粋主義者の天下は続くことになる。もっとも、溝手は怒り狂った。河井夫妻憎しの行動を開始した。1・5億円の、党本部からの政党助成金の事実をつかんだのだろう。彼の怒りは、いま安倍へと向かっている。

 

<コロナ禍口実の大掛かりな選挙運動と桜事件の共通点>

 昨日の安倍は、史上初のコロナ禍対策の緊急事態宣言会見となったが、そこで身内の富士フィルムのアビガン支援や笹川競艇賭博の日本財団を売り込む一方で、永遠に返却できそうもない天文学的な借金での大風呂敷披露は、さしずめ一大選挙運動そのものとなった。

 桜事件も公費を使っての選挙運動だった。今回はコロナを利用して、空前の借金で、500兆円保有の財閥から、一部貧者に金をばらまくという選挙運動である。

 この1か月の行方を注視しなければならないが、合わせて稲田検察の鋭い切れ味を見せてもらいたい。

2020年4月8日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)