11月9日更新分・眠れない【石頭FBノート】 | 手上のコイン Blog

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五月天の石頭がFBのノートに書いている日記を、ちょこちょこ翻訳しております。おかしいところがあれば、ご指摘くだされば幸いです。

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眠れない

今夜は静かだ。
静かすぎてペンが紙の上をはしる音でさえ聞こえる。
シャッシャッシャッという音が、筆を止めてもまだ部屋の中に反響している。
その音は永遠に止みそうもなく、ヘッドホンをして試しに他の音でかき消してみる他はなさそうである。
でも、ヘッドホンで遮断できるのは音だけで、頭の中から生み出される幻想までは遮りようもない。
こんな夜には、ヘッドホンから流れてくる音楽は心地よいものだが、僕の世界に眠りを呼び込むことは出来ない。
まるで、迷い込んでしまった世界にいるかのようだ。昼と夜がふざけてその立場を逆転させたそのトリックの中か、気にかけている世界と現実の世界の狭間に。

窓の外の街道はひっそりとして深遠で、昼間の盛況さとは全く様相が違う。
こんな風に静かだと遠くのエンジン音がまるで野獣のようで恐ろしく、まだこの都市に残る微かな光を飲み込んでしまおうとしているかのようだ。
最後に残った終わりのない暗闇は、まだ起きている旅人に肌を刺す風の中で、懐かしく反省し数え上げさせる。孤独を感じるこんな夜がどれだけあったのか、そして自分の未来を決めたこんな夜がどれだけあったのかを。

鋭い寒風がこの都市の建物を切り裂き、ガラス窓を通して中にある一切を押しつぶそうとしているかのようだ。透明な窓はちょっと撫でるだけで一歩後退する。
暖かさが全て冷たい空気に取って代わってしまわぬうちに、消極的に快適な片隅を探しこの夜を記録することしか出来ないのだ。
夜という夜を失ってしまったのは、僕が今までこんなに明瞭で、こんなに静かで、寒さを耳にし、孤独に触れ、鼓動の聞こえる夜を過ごしたことがあまりないからだ。

地球を半周すると、その時世界は逆転してしまったように慣れないことばかりで、いろんな方法でそれを反転させようと試みたけれど、最後にはちょっとしたことで、必死でひっくり返した世界はまたもとへと翻り、いつも徒労に終わってしまう。
日が昇るまで僕の属していない夜に寄り添うしかないのだろう。そしてこの都市の昼の喧噪とにぎわいでさえも、僕とは無関係で、僕と緊密に繋がる世界はまどろむ夢の中にしかないのだ。

午前四時四十三分、僕の世界の親しい人との、海洋を越えた接続が途切れた。僕と僕の世界は毎日繋がりそして一瞬にしてそれを失う。あるいは、そのような便利さと真実が、僕とあの世界との一切をあんなにも不安定にしているのかもしれない。

不安で眠られずに、僕はこの夜の寂しさと孤独を存分にあじわわされることになった。もし君がまだ起きていて、まさに一人でいるというのなら、ちょうどここにも、君の孤独に寄り添える者が一人いる。