飴色の古びた木造の講堂の横を通り抜け6号館に向かっていると


「琴子ぉ~」


理美がにこやかに駆け寄って横に並んで歩き出した



「お早う」理美はニヤニヤして肩を突いた



「琴子、ねぇ、どうだったの入、江、君との初夜」


「え・・えっ・・・」


琴子は目を反らして笑うと



「何ょ~、照れちゃって、どうだったの・・・濃厚?それとも・・・」


又 肩を軽くぶっつけた


「・・・・・・」記憶もないほど酔っぱらってしまったなどと言えず 黙り混む琴子に


「何よ~誤魔化しちゃって」


何度も肩を寄せるように触れ腕を回しては興味津々に返事をせがんだ


「うん・・・」


「何よ~もったいぶらないで聞かせてよ」


「あのね・・」琴子は言いにくそうに


「・・・なかったの」と、つぶやいた


聞いたとたん理美が大きく目を開いたがすぐさま眉間にシワを寄せ


尋問中の刑事のように幾つもの質問を問いかけたが


相変わらず煮えきらぬ琴子の答えに


「・・・・で、結局、酔いつぶれて寝ちゃったってことなの・・・



最初の日になのに・・・何してんのよ。あれだけ苦労してやっと同棲までこぎつけたのに」


「だって・・・だって・・・そんなつもりなかったもん」


琴子は体をもじもじと動かしながら言うので


「そんな風に体くねらして 入江君を誘えば良かったのに・・・もしかして


女に興味がないんじゃないとか・・・いくら琴子が魅力のない身体だったって



一応女だし・・・ね・・・それとも、前も同居だったんだもんね」



「同居・・・でも酷いよ~入江くんはそんな・・・」



琴子は何を思ったか言葉を止めた


その様子に理美もそれ以上言わず子供を励ますように頭を撫で


「ま、同棲始めたばかりだもの今日頑張るのよ。ね、今日」


と慰めるとたわいない話に移っていった


この時琴子はどんなことが自分の身に起こっていたのかまだ、知るよしもなかった



***************


直樹はまだ大学に復学せず残務整理に忙し働いている


退院したとはいえ破談の件等で迷惑をかけた父の為にも引き際をかっちりしたいと


思っていた。琴子の件もだ。忙しい中にもふっと昨日のことが思い出され、つい、頬が緩む


あんなに弱いくせに飲みやがって・・・


だが・・・


直樹は躰が熱くなるのを感じた