琴子はどう聞いていいのか


それとも、お互い知らない顔をしていいのか



(どう聞けばいいの、父さんたらもう~何考えて・・・)


もぞもぞと身体を動かした


「どうした、寒いのか」そう聞かれても首を横にふった


迷ってついつい身の置き場がなく、ついつい傍にあった本に手を伸ばした


【包丁大全】どう考えても琴子が読みそうな本ではない


そんな時だ


「そうだ琴子、机の上にあったろ・・・見たか?」


琴子の瞳孔が大きく開き本から、余計顔を出せなくなった


「・・・」言葉を飲み込んでしまうように喉が動いた





ピンポーン


(あ、誰か来たみたい)



まるで助け船のように誰かやってきた


その場を逃げたい気持ちの琴子は、本を放り出すように置くと


バタバタと部屋を出たが 玄関先でスリッパをひっかけ、飛ばした


(もう~~やだぁ~)


焦るようにドアに向かって声を掛けると


「入江です」


(い、入江くん・・・どうしたの今頃)


琴子は玄関先に飛んだスリッパを取り上げ胸先に持っと



手を目一杯伸ばしてドアを開けた 。


「ど、どうしたの?」


片足だけスリッパを履いた琴子が仁王立ちのように立っている


「いやに愛想ないな。婚約者の俺が来たのに 来たらいけないのか」



目一杯首を振る琴子に直樹は嫌味ぽっく笑った



「で、大事に持ってるそのスリッパ、ずっと持っているのか」



直樹の問いに慌ててスリッパを背中に隠したが、直樹が一層口角をあげるので


慌てながらも 何もなかったように澄まして履いた



「おー、直樹君、来たのか・・・琴子、何ボーッと立っているんだ。


さ、直樹君入って入って、入って」顔を出した重雄に言われ直樹は頭を下げ


「お邪魔します。お袋が渡し忘れたって、これを」琴子に差し出した



(おばさんが?)


「なんだろう」


きちんと包装された袋を受けとると


「そういえば、琴子、紀子さんからの預かった袋置いてあったろ。直樹君、紀子さんに


いつも色々していただいて、申し訳けねえ。しっかりお礼言ってくださいね」



頭のを深々下げた。


(あれ・・・おばさま・・・父さんじゃなかったんだ 聞かなくて良かった)



ぼんやりとしている琴子に




「琴子、何してる。さっと部屋に案内しなさい」


「あ、うん」


狭い年季のは言った階段を上がると 琴子の部屋が正面にある


直樹は横に置かれた段ボールを見ながら


「荷物・・・準備はもうできたのか」


「あ、うん、後少し」


机に置かれたDVD


(や、袋から出したまま・・・)


不意にケースに手を伸ばした直樹に


「わ~~駄目~~~」琴子の焦りの言葉も


一瞬に消された


取り上げた直樹は取り返そうとする琴子に余計渡さない


手を目いっぱいあげる琴子には直樹の手先は届かない


おもむろに表を返すと


直樹は最初は軽く段々激しく笑い出した


苦しそうに


「こ、琴子、お前こんなの見て・・・あっはっは~、笑いが止まら・・・」



「ち、違うったら・・・も、もう・・・馬鹿ぁ~」