それから俺はその場所にちょくちょく顔を出すようになった。

レギュラーとしてグラウンドには立てない『仲間』が集まる場所に。

ダラダラ練習をして、談笑する。

あの場所は居心地がよかった。

それは練習をサボる楽さとかそんなのではなく、何かもっと違うものがあった気がする。

真剣な野球の話しもたくさんした。

これからの事、明星の事、レギュラーの事・・・

みんな、やっぱり野球が本当に好きなんだとわかった。

みんな、きっとこのままじゃダメだともわかっていた。

まだ季節も、秋から冬に変わろうとする時期だ。

まだ遅くない。

まだ腐っていない。

今からでもあのグラウンドに戻れる。

レギュラーはもう無理かもしれない。

けれど、それ以上にあのグラウンドには大切なものがある。

みんな、心のどこかでそう思っていたと思う。

そして何より俺はチームをまとめようとする今沢に申し訳ない気持ちがあった。

何度も監督のあの言葉が頭をよぎった。

「チームがひとつにならなきゃ甲子園に行けない」

こんな事をしていて、甲子園にいけるわけがない。

それはあの先輩達を見ていて充分承知だった。

『あの三年生や大倉先輩と同じ過ちをまた繰り返すのか』

室内練習場にいればいるほど、そんな気持ちが強くなっていく。

でも・・・

やっぱり俺にはあの場所であいつらと色々話す事も捨て切れなかった。

室内練習場に行って、キリのいいところでグラウンドに行く。

そんな煮え切らない中途半端な日々が続いていった。