選手として甲子園のグラウンドに立てる可能性は完全に無いんだな・・・

甲子園にレギュラーとして行くためにこの高校を選んだのに。

マネージャーの雑用をしていてふとそう思った。

俺は一体、何の為にこうやって野球を続けているんだろう・・・

秋の大会、俺はベンチ入りした。

学校の制服を着て。

選手としてではなく、記録員として俺は登録されたのだ。

「記録員としてベンチに入ってくれんか」

大会前、監督が俺にそう言った。

最初は戸惑った。

みんなと違う服を着て試合に挑む。

なんだか変な気持ちだった。

しかし、そんな気持ちはすぐに消えた。

予選の初戦で点が入った時の事だった。

ホームインした今沢がベンチに帰ってきた時、俺に手を出してきた。

俺もつい手を出した。

パチーン!

ハイタッチのいい音がなった。

「よっしゃー!つづけつづけ!」

今沢が次の打者に声を出した。

「いけーいけーバッター!」

俺も自然と声が出た。

ユニフォームは着てないが俺も選手の一人だと今沢が教えてくれた気がした。

甲子園に行きたい。みんなで。

マネージャーの俺はそう思うようになっていった。