ラヴェルのピアノ曲集。「ソナチネ」「高雅で感傷的なワルツ」「クープランの墓」所収。1973年録音(技師はケネス・ウィルキンスン)の英デッカ盤。デッカの英国プレスの最後期にあたり、ジャケットのダサさも相俟って(この写真、20代前半の、ほとんどデビュー時ですからね。本人にしてみれば黒歴史だろうなあ)、中古レコード市場ではあまり人気のない録音です。
これに入っている「クープランの墓」のピアノ版(Tombeau de〜という表現は単に〜の墓ってわけじゃなく、詩とか曲とかの題名の場合、故人の何某に捧ぐ〜、という意味なんですね。だから本当は「亡きクープランに捧げる(曲)」と訳すのが正しいんですが、ここは慣例に従います)、僕はこの曲が好きで、名のある演奏(録音)はほぼ聴いてきました。マルセル・メイエルのDF盤、イヴォンヌ・ルフェビュールのFY盤及びクーダルシェ盤、サンソン・フランソワの仏EMI盤、他にもヴラド・ペルルミュテール、アンヌ・ケフェレク、モニク・アース、チャールズ・ローゼン……挙げればキリがありませんが、でもどれも何か決定打に欠ける気がする。このロジェ盤もタッチの柔らかさといい、流れる水のようなダイナミズムといい、人気のない割には演奏も録音も及第点以上なんですけどね。
ご存知の通り、この曲は各楽章を第一次大戦における戦死者に捧げられております。初演はマルグリット・ロン。第6曲の「トッカータ」は彼女の亡夫ジョゼフ・ド・マルリアーヴに献呈されました。僕の知る限りではロンの演奏の録音は残ってません。ロンがこの曲をどのように弾いたのか、結局それを聴くまでは誰の演奏を聴いても決して満足できないのは、ラヴェルとこの曲を愛する人なら同じような感想を持たれるのではないかと思います。うんと昔の人ならともかく、ロンはフォーレとかドビュッシーとかの曲はそこそこ録音が残ってますからね。ラヴェルもピアノ協奏曲は録音しています。だから彼女の演奏によるこの曲、フランスの人、誰かテープとか秘蔵してないのかしらね。英テスタメント社あたりが奇跡の発掘をするんじゃないかと長年待ち続けております。
ロンは自分と親交のあった作曲家の評伝も書いています。
えーと、パスカル・ロジェの話でしたね。この人の録音ではレジス・パスキエと共演したプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ集(ADDAレーベル、だったかな?CDのみです)が素晴らしかった。特に2番。
彼は今年で65歳になるはずですが、割と最近、日本人の若い奥さんを貰ったそうです(彼女もピアニスト)。こういう話を聞くと励みになります。僕も負けないように頑張ろう(何を?)。


