誕生日考 | 霽月日乗・ホーマーEのブログ

霽月日乗・ホーマーEのブログ

個人の備忘録です。

昨日から今日にかけて、誕生日を祝うということについて少し考えました。なぜそんなことを考えたか、ということについては、このブログを愛読なさってる方はすでにご案内かと存じますので説明は抜きで。

まず日本。誕生日っていつから祝うようになったんだろう。少なくとも明治以降だということは想像できます。よく雑学本などで最初に自身の誕生日を祝ったのは織田信長だ、というような記述を目にしますが、信長以降この習慣が広く行われたかというと、それは考えにくい。西鶴にも近松にも、あるいは一九や馬琴、京伝にもそんな場面は出て来なかったように思います。全部読んだわけじゃありませんけど。

誕生祝い関係の行事としては、一歳になった時に餅を背負わせる行事(一升餅なんとか、正式名は知りません)、七五三、十三まいり、あたりでしょうか。

そもそも日本では数え年で年齢をかぞえるきまりでしたから、誕生日は誰でも一月一日だったわけです。だから個々の誕生日に格別の意識が及ばないのは当然でしょう。七五三や十三まいりは予め日にちが決まっています。

餅の行事だって、今は生後一年のお祝いですが、あれだって本来は正月に行うものではなかったのか。だって、餅は正月のものですよ。これは詳しく調べたわけではないので推測ですが、そんなに外れてはないはず。

他には元服なんていう行事がありますが、あれはこの日から大人ですよという意味合いが強いので、誕生を祝うというのとはちょっと違います。

以上から推察すると、やはり太陽暦の導入、それと共に輸入された西洋流の個人というものに対する思想、この二つによっていま行われている誕生日の概念が徐々に形成されたのではないでしょうか。

では西洋ではどうだったのか。古代ギリシャやローマの著述家、たとえばストラボンとかパウサニアスとかウァロとかプリニウスとかを仔細に読めば、あるいはさらに遡ってエジプトやバビロニアの碑文などを調べればその手の記載に出会いそうですが、何しろ昨日思いついたばかりなのでそんな時間はありません。

だから手近なところから、というわけで困ったときのブルーワー英語故事成語事典(Brewer's Dictionary of Phrase & Fable)、まずBirthdayの項目を見ますと、Birthday honours とBirthday suitという二つの小見出しが立っています。前者はイギリスにおいて王または女王の「公式の」誕生日(本当の誕生日とは違う、と書いてあります。面白い)に叙勲が行われる、というもの。後者は二つ意味があって、一つは生まれたままの裸の状態、いま一つは王が誕生日に用意させる豪奢な衣服、とあります。うーん、あまり参考にならないな。

でも、王さまが自分の誕生日に着飾るという慣習は、日本の宮中の行事なんかと仄かに相通じるものが感じられる。この辺はまた別の機会に考えます。

Birthdayの項の最後の行にHappy birthday! はHappyの項を参照せよとあるのでそのページへ。

ハッピーバースデートゥーユー、の、あの歌の起源が書かれています。もともとは"Good Morning to All"という歌で、1893年に作られたもの。作詞作曲は米国の教育者、Patty Smith HillとMildred J. Hill姉妹。誕生日の歌じゃなさそうです。今の歌詞になったのは1935年、作詞者はClayton F. Summy。

あの歌、こんなに新しいんですね。第二次大戦が始まる少し前です。では他に誕生日を祝う歌はないのか知ら。とりあえずAnnotated Mother Gooseをざっと見ると、「月曜日に生まれた子供は器量よし……」(Monday's child is fair of face……)ではじまる曜日歌が見つかりましたが、他にはなさそう。クリスティーナ・ロセッティあたりの詩にもありそうですが、すぐに見つからないのでまた別の機会に。これは宿題にします。

そもそもBirthdayという言葉はいつから使われ始めたのか、ということでオックスフォード英語辞典(OED)で用例を調べました。

初出は1580年、まだbirth dayという二語表記。次が1599年、birth-dayとハイフン付き。1709年の用例でもまだハイフンがついてます。二語に分かれてたりハイフンが付いてたりするのは、両語の結び付きが堅固でない、表現として熟してないということでしょうから、少なくとも英国ではそれほど誕生日というものが重視されてなかったのでは?と推測できます。1784年の用例でやっとbirthdayと一語に。

念のためBirthの項を調べると、この語は中英語まで遡れて、それよりさらに前の古英語、諸外国語からの影響関係が考察されていますが、詳しいことは割愛します。古英語の綴りとか変換するの面倒ですからね。もっとも古い用例としては1300年のものが引かれています。それ以前は違う形だったということ。

そろそろ退屈なさった頃でしょうから考証はこの辺で打ち切ります。ここまでで何となくわかったのは、洋の東西を問わず、誕生日を祝う習慣はどうやらそんなに古いものではなさそうだということ、かな。今後、読んだ本の中に新しい発見があればまたその時に考えます。

長々と前置きしましたが、みれいちゃん、誕生日おめでとう。東京は朝から快晴、天もあなたの誕生日を寿いでいますよ。

{038ECA1E-3624-4CBD-A696-30CAAA7D43B6:01}