妄想小説♪♪『告白』 | 青い海と空の彼方

青い海と空の彼方

BIGBANG(特にヨンベ)を中心に、WINNERやikon、YGファミリーについて日々感じたことをぼちぼちつぶやいてます。BIGBANG・WlNNER・iKONを主人公に妄想小説に挑戦中♪

あれから何年が経ったのだろう。

スンリがYGを辞めて、渦中のさなか入隊して兵役期間中に裁判も行われた。
あれだけ騒がれて全ての悪の中枢にいるのはスンリだと、誰もが思った。
またマスコミ報道から知らされる情報はスンリをはじめ芸能人に集中し、本来裁かれるべき経済人やVIPへは関心が向かないように仕向けられていた。

情報が錯綜している間に、真に捕まえなければならない人達はうまく証拠を隠滅して逃げお失せた。
スンリは真実だけを誠意を持って語り、優秀な弁護士や家族や友人に支えられながら裁判を戦った。
法に抵触している事案が数件あったのは事実。
でもそれは罰金刑で済む案件で、懲役刑を受けるものでは無かったのである。

でも一度付いてしまった悪評は消えることはない。
たとえ無罪放免になっていても、『あの事件の』と一生付いて回るのだ。
先に兵役を終えた兄達は個人活動をしながらスンリの帰りを待った。
4人でグループ活動も考えたが、やはり5人でないとしっくりこない。
YGを全員で去って、自分達だけの個人事務所を立ち上げることも考えた。

でもそれはスンリから止められた。
「個人事務所でやれないこともないだろうけど、今までバックアップをしていた人達がいないと言うのは大変なことだよ。マネージメントのスペシャリストが必要だし、経理に関してもそう。ヒョンも色んな事業をしてきたからそれは分かるだろう?」
「そうだけど、俺は5人でやりたいんだ。」

「ファンには本当に申し訳ないけど、それは無理だよ。あと10年くらい経って、『あぁ、昔そういえば何かお騒がせしたヤツがいたな』くらいになったら、可能かもしれないけれど。
そうなったとしても一度だけ1回だけの復帰だろうね。世間は思っている以上に冷たいからね。
ヒョン、オレはヒョン達が芸能界から完全に離れるのは無理だと思うんだ。
形は変われど、ヒョン達には才能があるしファンもヒョン達が活動するのを望んでいるのだから。」
スンリはそう言って、一人だけ完全に芸能界から去ってしまった。

転役後、スンリは新規事業を立ち上げた。
今までの表立った事業ではなく、福祉に関するものだった。
これまでも慈善事業や寄付行動もしていたスンリだったが、今回の件でより社会へ貢献していかなければという強い思いを抱いたからだ。
4カ国語を話すスンリは、兵役期間中にドイツ語を習得し更にフランス語も勉強し始めていた。
語学を駆使し、韓国国内だけでなく世界を相手に事業展開をと考えていたようだった。

「スンリ、新しい事業をするなら俺にも何か手伝わさせてくれ。裏方でもなんでもいいから。」
「裏方だなんて、そんな。……ヒョンには今まではあまり事業に関しては相談したことはなかったけど、これからは色々相談したいなと思ってる。……いいかな?」
「俺に出来ることは何でもするよ。遠慮なんかしないでくれ、俺達の仲だろ?」
「ハハッ、そうだね。なんたってニョントリだもんな。」
スンリはそう言って、笑った。
そして俺はスンリの新規事業の開店資金の半分を出資し、筆頭株主になった。


スンリが芸能界から去り、俺達は個人活動の延長をしているようなものだった。
たぷヒョンは俳優業を中心に、低音ボイスを活かしたナレーション業を手掛けるようになった。
また歌手・ラッパーとしての活動は自粛し、作詞作曲した作品を提供する側に回った。
ヨンベはマイペースながら、ソロとしてアルバムを制作。
アメリカを拠点において活動するようになり、頻繁にアメリカと韓国を行き来するようになった。

テソンは日本での活動を中心に、歌にバラエティにと活躍していった。
兵役中に助役を務めたこともあり、あの事故での韓国でのテソンへの厳しい目は緩やかになった。
バラエティセンスに溢れるテソンは、韓国のテレビ業界では引く手あまただった。
ただ、世間体を考えて長くテソンを起用出来ずにいただけだった。

スンリの兵役中俺はソロとしてアルバム制作に取り掛かっていたが、スンリの完全引退を承知したと同時にその意欲が失せてしまった。
もう自分で歌うよりも、他の人に歌を提供したりプロデュースする側にまわることにしたのだった。
BIGBANGの活動とソロ活動を同時進行するのは既に難しくなっていた。
メンバーそれぞれがソロとして十分すぎるほど力を持っていたのは、今となっては有難かった。

メンバーにはスンリの話した『10年後』のカンバックに向けて、それぞれの場所で頑張って行こうと話した。
そしてその時はファンの前で歌っていない『FLOWER ROAD』と『GIRL FREND』、そしてその日の為だけの『新曲』を用意しようと決めたのだった。


『10年後』
約束の10年後の年に入り、D―DAYを何時にするかという話になった。
メンバーは一様にデビュー日の『8.19』がいいだろうと意見が一致していた。
『10年後』と話していた当のスンリは、「え?」と驚いていた。

「ヒョン、そんなオレの戯言を本気にしたんですか?」
「戯言?そんなことはない。俺はあの時、お前の本心だと受けとったから素直にお前の引退を了承したんだぞ。お前が一人残ってファンの前に立ち『必ず5人で帰ってきます』と言ってくれたことを、その約束を果たしたいんだ。たとえそれがたった1回きりのステージだとしても。」
俺はそう言って譲らなかった。

スンリはそう言いながらもこの10年間、体型を維持していたし体力もつけていた。
芸能界にいた過去は消し去ることは出来ない。
その場所を去ったとしても、スンリのことを求めるファンはいるのだ。
そのファンが幻滅することがないようにと、容姿に関しての努力は続けていたのだった。

「『新曲』は用意してる。レコーディングの前に、しっかりボイストレーニングしてもらうからな。」
俺はそう言うと、『新曲』のデモテープをスンリに渡した。
スンリは〔参ったな〕という顔をしていたが、内心では浮き足立っているのがその雰囲気から分かった。
〔ほらね、やっぱりスンリは根っからの歌手だったんだよ〕
俺はスンリのそんな姿が嬉しくて堪らなかった。

テソンの誕生日にメンバー全員で集まり、バ―スデ―パ―ティと『D―DAY』の打ち合わせをした。
そしてヨンベの誕生日から、レコーディングを始めたのだった。
そして音源のみ配信だった『FLOWER ROAD』と『新曲』を収録したEPを完成させた。
ジヨンは『D―DAY』の会場はソウルオリンピック競技場を押さえた。
勿論5人でのカンバックは秘密で。

BIGBANGのバックを務めてくれていた当時のバンドメンバーも、『D―DAY』だけ集結してくれることになった。
それぞれが大成し全世界に散らばっていたが、『D―DAY』の話をすると皆無償で出演したいと言ってくれた。
BIGBANGとの経験がその後の人生で大いに役に立ったから、これで恩に報いることが出来ると言ってくれたのだった。
『D―DAY』まであと数日に迫っていた。


「こちら、クォンジヨンさんの携帯ですか?」
その電話は突然だった。
「こちら警察ですが、イ.スンヒョンをご存知でしょうか?」
「はい、知っていますが。スンリがどうかしましたか?」

「携帯の履歴リダイヤルを押したら、クォンさんに繋がりまして……。
実はイさんが事故に遭いまして、救急病院に搬送されました。
意識不明の重体で、かなり危険な状態です。」
ジヨンは手が震えて、持っていたスマホを落としそうになった。

「ジヨン、どうした?」
その時、たまたまヨンベがジヨンのところに来ていたため、真っ青になったジヨンの異変に気付いた。
「スンリが、スンリが………。」
ヨンベはジヨンのスマホを取り上げると、警察からスンリの搬送された病院を聞き出した。
「連絡、ありがとうございました。」
ヨンベは電話を切ると、ジヨンを抱えながら病院へと向かった。

病院へ向かう車中でヨンベはテソンとたぷへ連絡をし、たぷへスンリの家族への連絡を頼んだ。
ジヨンは助手席でガタガタと震えながら、スマホを握りしめていた。
病院に到着しスンリのもとに駆け寄った二人だったが、二人が到着するのを待っていたかのようにスンリは静かに息を引き取った。

「イさんは、信号無視をしてきた飲酒運転の車に追突されました。お二人が到着する寸前、一度心臓も停止しました。蘇生措置を施して、微弱ながら心臓が動き始め呼吸も落ち着いたところでした。
多数の内蔵破裂と下肢の複雑骨折、脊髄損傷もみられてかなりの重体でした。
生きているのが不思議なくらいだったんです。……お顔は傷ひとつなく、綺麗でした。」
主治医はそう話してくれたが、俺の耳には入っていなかった。

ただ動かなくなったスンリの姿だけが、重く俺にのしかかっていた。


スンリの家族の意思を尊重し、スンリの葬儀は家族とごく僅かな近親者のみで執り行われた。
「スンヒョンは今回のことをとても楽しみにしていたんですよ。あの子はファンに『5人で戻ってくる』という約束をようやく果たせると喜んでいたんです。」
すっかり白髪頭になったスンリの父はそう話してくれた。

「あの子は生き急いでいた感じがします。普通の人の人生の何倍も生きたと思います。」
そう言って涙を流す母親の姿は痛々しかった。
妹のハンナは幼子を両手に、気丈に涙を堪えていた。
ヨンベには家族の中心だったスンリを失って、スンリの家族はより小さく見えた。

俺はあの日以来、時間が止まったかのように生きているのか死んでいるのか分からない精神状態になっていた。
スンリが荼毘に付され白い煙となって天に昇り始めた時、ようやく俺の時が動き始めた。
「スンリ、スンリ、スンリ…………。」

スンリの骨はスンリの家族とともに、BIGBANGメンバーで骨壺に拾い集めた。
スンリのそれは真っ白で太く、薬物に一切手を出していない完全なる証拠だった。
「……あの不躾なお願いなんですが、スンリの骨をひとつだけ譲っていただけないでしょうか。」
俺は声を震わせながら、スンリの両親に懇願していた。

「……わかりました。」
スンリの父はそう答えると、スンリの喉仏の骨をハンカチに包み俺に渡してくれた。
「あの子はあなたに一番歌手として認めて貰いたがっていました。だから、これはあなたの傍にあることがあの子の本命でしょう。」
そう言うスンリの父は力なく笑った。


『D―DAY』はファンと一緒にデビュー記念をお祝いするファンミ―ティングとだけ、告知されていた。
そこには『新曲』もスンリのサプライズ登場も秘密になっていた。
ファンは10数年ぶりに全世界から集い、4人の登場を待っていた。
誰もが『ここにスンリが居たらいいのに』と思いながら。

ステージが暗転し、スクリーンにスンリの姿が映し出された。

「皆さん、今日はこんなに沢山お集まりいただきありがとうございます。
あの一件で皆さんに、メンバーに、社会に多大な迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
私は芸能界を引退し、芸能界とは全く関係ない仕事につき約10年の月日が過ぎました。」
スクリーンに映し出されたスンリは20代後半の青年から30代後半のより成熟した大人になっていた。

「今回、一度きりのカンバックをとヒョン達が言ってくれて、準備してきました。」
スンリの言葉に、今まで水を打ったかのように静かだった会場は大きな歓声で揺れた。
「実は『新曲』もあるんですよ。」
そう言って笑うスンリは悪戯っ子のように愛嬌をみせるマンネの姿だった。

そしてこの日のためだけに用意された新曲のMVがスクリーンに映し出された。

MVが終わり、5人のBIGBANGを見れるとファンの誰もが思った。
しかしそこにはスンリの姿は無かった。
そしてBIGBANGリ―ダ―である俺の口から、スンリの訃報をファンに知らせることになった。
「アイツは本当にこのステージに立つのを楽しみにしていました。
……5人で立つ約束を守ることが出来なくて申し訳ありません。」
そう言って、俺をはじめメンバー全員でファンに頭を下げた。

俺達の新曲はロングヒットとなり、たくさんの人に聴いてもらえたようだった。
〔スンリ、ステージでのパフォーマンスを見せることは出来なかったけど、5人で戻る約束は一応果たせたよ。〕
俺はそう天に向かってそう呟いていた。



スンリがいなくなって気づいたことがある。
俺はある時期から女性に興味がなくなっていたが、それは付き合った恋人遍歴のせいだと思っていた。
自己主張をしたがる女、嫉妬深い女、個性の強い女……。
俺にとって女は煩わしい存在に変わっていた。

譲ってもらったスンリの喉仏の骨を握りしめながら、俺はこう思うんだ。
俺は本当はスンリに恋をしていたんじゃないだろうかと。
今無性にスンリに会いたくて堪らない。
でもアイツはきっとこう言うんだ。
「ヒョン、まだこっちに来るのは早いですよ?ヨボヨボのジジィになってから来て下さいね。」って。

「そんなだと俺のこと、お前は分からないんじゃないのか?」
「何言ってるんですか、ちゃんと分かりますよ。だって俺達ニョントリじゃないですか。」
そう言ってきっとハートの口をしてアイツは笑うんだろうな。
〔………分かりますよ、だってオレの愛しい人『クォンジヨン』なんですから。〕