明治生まれの祖母は嫁いだ日から死ぬまで
1度も和服を着なかった
洋裁の専門学校に嫁に来て学院長となり鰻屋で倒れて死ぬ迄 旅館の浴衣さえ着なかった
その祖母が私の振袖を誂えた時の審美眼と冴えは私を驚かせた
私の中で おばあちゃまは洋服しか興味なく洋服しかパッとしない人だと思っていた

絹の手 色の押し 構図から配分
それから1番大事な映るかどうか
祖母は見事だった
和服を纏いたい日がどんなにあったろう
和服の悦びをこんなにも知って纏わない祖母を本当に偉いと思った

亜子、きものなんてね ただの衣服だよ
洋服もおんなじ 材料よくてパッとあんたが映るなら
ほかにケチつけるとこなし あとは
身のこなし  
耳の格好に指の形がよけりゃ こっちのもんだ そこいらは医者もごまかせない

なんて

おばあちゃま
あたし あなたのぶんも
どんどん和服きてるよ!