我が家の透湿防水シートの選定で検討したり調べたことを書きます。長くなるので、結論だけ先に書きます。

 

結論:世の中では旭デュポン社のタイベックハウスラップがオススメされているが、廃盤になってしまったので一村産業のスーパーコートEXを採用。一村産業の透湿防水シートも十分な試験をしているので耐久性に問題ないと私は判断した

 

では詳細に入ります。一応、その前に透湿防水シートが何かを簡単におさらいしておきますね。

 

透湿防水シート(とうしつぼうすいしーと)とは、は通さないが、湿気(水蒸気)は通す性質をもつシートである。透湿防水シートは、主に木造建築物の外壁の屋外側に用いられる。

 
  • 壁内の湿気を積極的に屋外に排出し、壁内の結露を防ぐ効果がある。このため、外壁通気工法を採用する場合には、必ず用いる。

サイディング等の外壁材を「一次防水」、その内側の透湿防水シートを「二次防水」と呼んで二重に水から家を守る形です。

 

透湿防水シートの湿気を通す「透湿」という性質がなぜ必要かというと、壁の中に湿気が入ってしまったときに外に出す必要があるからです。湿気が中にあると壁体内結露という現象が起きて、最悪の場合は壁が腐ってしまう恐れがあります。

そこで、外→内は防水として自ら守り、内→外は湿気を積極的に排出することで壁を結露から守るというわけです。基本の話はここまで。

 

さて、透湿防水シートは国内外の様々なメーカーが作っているのですが、ある噂と言いますか定説のような情報があります。

それは透湿防水シートはタイベック一択、というものです。ちょっと長くなりますが、目についたものをだーっと並べてみますね。

 

はい、タイベックと他社の透湿防水シートは、ものがまるで違います。
タイベックの工場行くと、他社と同じ様に施工した展示があり、タイベック以外は皆、ボロボロです。
合皮のソファーとか、ボロボロになるの見たことありますか?
そのレベル以上です。
界面活性剤の影響ではなく、紫外線の影響です

— 神長宏明(Raphael設計)【真冬の朝、無暖房で18℃を目指す設計】夢より素敵な家づくりがテーマ (@raphael_project) January 21, 2021

 

— 神長宏明(Raphael設計)【真冬の朝、無暖房で18℃を目指す設計】夢より素敵な家づくりがテーマ (@raphael_project) June 12, 2021

 

しばしば実務者が警鐘を鳴らしている透湿防水シート。業界誌で何度も取り上げられている。JIS規格があるため、適合品であれば性能が横並びであるように思われるが実はそうではない。国内有名メーカー品でも6地域築8年窯業系サイディング通気層9mmの条件で防水性能が損なわれる劣化があった。

— Taro Murayama (@MurayamaTaro) December 18, 2021

 

私はTyvekをお勧め致します。

— Taro Murayama (@MurayamaTaro) December 19, 2021

 

自分の感覚では透湿防水シートはタイベック以外を使う率は0割なので、価格が下がることはないのかなと😅
あと、建築からノーマルタイベックがなくなる理由は他での需要が上がり、そこで利幅がとれるからと聞いています。

— かねまさ@木造大工 (@kanemasakenshow) December 5, 2021

 

タイベック以外の割安な透湿防水シート、あいつら簡単に穴あきますからね…セーレンもフクビもダメでした…

— 🐯とまこまい (@varistor) June 7, 2021

 

 

私のおすすめは、デュポン社のタイベックです。

デュポンのタイベックは熱劣化安定剤が入っているが、他社のJISの防風透湿防水シートはまだ熱劣化に弱い製品が殆ど。多分10年経過後劣化して破け、20年でぼろぼろになる

 

壮観ですね(笑)。ここまでくるとこれが間違いない真実のような気がしてしまいます。

 

さて、タイベックと言いましたが正確に言うと、タイベック・ハウスラップという製品のことを指しています。おそらく、↑に挙げた文章もすべてタイベック・ハウスラップのことを意味していると思われます。

 

ということで、我が家もタイベック・ハウスラップを採用したいなと思ったのですが、一つ大きな問題がありました。

2022年1月1日より、タイベック®ハウスラップを廃盤※とし、より高性能なタイベック®シルバーへアップグレードいたします。

なんと廃盤!

ちょうど我が家の仕様Fix終盤の2021年12月ごろ、この透湿防水シートの劣化問題の情報を得たので入手不可能でした。

 

じゃあ、同じデュポン社のより耐久性も高いとされているタイベックシルバーを採用しようかとも思ったのですが、2つのデメリットがあります。

  1. 値段が高い
  2. 携帯の電波が弱まる可能性がある
1.はわかりやすいですね(笑)。旭デュポンさん、高い商品に統一しちゃうなんてご無体です(苦笑)。
2.ですが、これも必ずそうなるわけではないようですが、噂としてはちょくちょく聞きますので、そういうケースはあるんだと思います。

 

旭デュポン社の公式見解としては、

https://www.tyvek.co.jp/construction/common/pdf/catalog/catalog_silver.pdf

窓が開口部としてあるので、大丈夫ということなんですが……屋根や外壁がガルバでガラスがLow-eだと電波が通りにくいようです。我が家は窓がLow-eガラスで、屋根もガルバリウムです。これに対し、

 

 

という対策もあるのですが、これもちょっと厳しかったです。

妻がほぼ毎日在宅勤務をしていて、会社から貸与されたポケットWi-Fiを利用しているんですが、それの電波が弱まったら一大事です。ポケットWi-Fiの事業者がアンテナを無料で貸し出してくれるってのはあまり聞いたことないですし、ドコモほどの大企業でもないので想像もしにくいですね。

むしろ携帯の電波は家の無線ルータによるWi-Fiにオフロードして使うのでそっちはあまり問題ないです(電話は困るけど)。ルータまでは有線ですのでタイベックシルバーの影響を受けません。あ、もちろん家のWi-Fiで仕事するというのはなし、という前提です。実際のセキュリティリスクは置いといて、妻の会社的には「そこらへんの素性の怪しいWi-Fi使わないでね」という気持ちがあってポケットWi-Fiを貸与しているわけなので。

 

ということでタイベックシルバーも採用しづらいわけです。

 

そもそも、なぜ透湿防水シートは劣化してしまうかというと、

  1. 防蟻剤の界面活性剤
  2. 紫外線

の3つが原因と言われています。

なんとこの透湿防水シート、白蟻薬剤や太陽熱で化学変化を起こします。

※この記事で3つの要因に触れている箇所は有料記事部分ですが、お金を払って読んでみました。日経ホームビルダーという紙の雑誌にも掲載されてたそうなので図書館に行けば無料で読めるかもしれません。

 

1点目ですが、外壁通気工法では透湿防水シートと外壁材の間に通気層という隙間を設けるために胴縁と呼ばれる部材を設けます。この胴縁が木でできてたりするのですが、胴縁に防蟻剤で処理していると、防蟻剤が悪さをして透湿防水シートを劣化させてしまうらしいですね。

 

この点は我が家がお願いしているK工務店ではクリアしていることがわかりました。胴縁に木を用いず、金物を使った工法だということがわかったためです。

通気金物が使用できる外装材でしたら、この工法がベストです。

 

2点目の紫外線ですが、こちらはあまり気にしませんでした。なぜなら透湿防水シートが紫外線にさらされるのは外壁材が取り付けられるまでのわずかな期間ですので影響は小さいと考えられるからです。上に挙げた日経クロステックの記事でも、主要なメーカーは施工後に一定以上の期間太陽にさらさないことという施工要領を出していて、例として60日以上という日数が挙げられています。さすがに2か月も透湿防水シートだけの状態で放置はされないと思いますので。もちろん全メーカーが60日以内ならOKかはわかりませんが、そこは追求する材料も時間もなかったので許容しました。

 

3点目の熱ですが、これは厄介です。何しろ、外壁というのはかなりの熱にさらされ続ける過酷な環境です。透湿防水シートも相当熱を受けることは想像に難くないですね。これは耐久試験をきちんとやっているか、というのを確認する必要がありそうです。

 

さて、タイベック・ハウスラップが廃盤になったことからK工務店が代替品を探してくれました。

それが、一村産業のスーパーコートEXです。

 https://www.ichimura.co.jp/products/pro_006.html

 

選定した理由をお伺いすると、高耐久を意識した商品であり他の工務店でも代替が多いから、とのことでした。「高耐久を意識」というのはいい感じですね(笑)。

念のため、一村産業にも直接確認してみました。確認したのは「スーパーコートEXはどんな試験を行っていて、特に熱に対して耐久できるのか?」という点です。一村産業さんからいただいたご回答をそのまま記載します。建築関連のメーカーさんはどこも一施主が聞いても丁寧に回答してくれるので、好印象です。

SUPERコートEXは、JISA6111(透湿防水シート)に定められた、
最上級の耐久性試験により性能を確認しております。

その耐久性の試験とは、
2か月間の屋外状況に相当する(紫外線照射と水噴射の繰り返し)の促進暴露試験を実施した後に、
50年間の使用に相当する加熱処理(90℃のオーブンで26週間)を実施したうえで、
防水性と強度について測定するものです。

もちろん、SUPERコートEXは、この試験に対してJIS基準を十分に満たしており、
透湿防水シートとしては業界トップクラスの耐久性能を持った製品とお考えいただけます。

簡単に言うと、熱を想定した耐久試験をやっているとのことでした。ということで、これも問題なさそうですね!

透湿防水シートを劣化させる3つの要因がいずれも問題にはならないということから、我が家ではスーパーコートEXを採用することとしました。

 

さて、実は採用を決めた後、こんな動画が公開されました。

タイベック同等品として一村産業の名前が挙げられてますね。

強度を試すために引っ張ってちぎれるかを見るというのは正しい試験法なのかちょっと疑問ですけど(笑)。熱や水等の外部環境で物性は変わるはずなので。

いずれにしても、タイベック一択という世論?だったのがそうでもないぞ、という気がしてきますね。私としてはうれしい援護射撃をもらった感じです。

 

何でタイベック一択論が出てきたのかなーと想像してみます。

  • タイベック・ハウスラップは品質がよかったし(少なくとも熱劣化対策が取られて以降は)、シェアも高かった
  • それ以外の一部の製品で実際に劣化してしまう事例が発生した
  • 劣化した際の原因が何で、それはどこの製品だったかという情報がわからなかった。あるいは、公表されなかった
こういった状況によるものだと思います。これだけ見ると、タイベック・ハウスラップを採用するのが無難ですよね。我が家も、廃盤にさえなれなければ採用していたと思います。施主もリスクを取りたくないですし、建築会社もコスト削減重視でなければ無難なものを選びます。
一方で、劣化の事例が全体の中でどれくらい起きたのかと考えると実際はそう多くないんだと思います。K工務店の建築士さんもそういった話は聞いたことがないとおっしゃってましたし、ホームインスペクターのさくら事務所さんに聞いても「さんざん壁の中を開けたが一度も見たことがない」とのことでした。
詳細な情報がないことによって、実際は隕石にぶつかるような確率なのに、交通事故くらいの頻度で起きるように感じてしまう、ということなんじゃないかと思いました。
 
ネットのタイベック一択論に一石を投じるとまでは行きませんが、さすがに特定の商品じゃないとアウトというのは不自由ですので、こんな情報もあるよということで記事にしました。参考にしていただければ幸いです。
 
(2/20追記)指摘があり、一般の人のツイートと思われる内容は削除したほうがよいのではないか、というコメントがありましたので削除いたしました。